朱雀さんの愛情表現⑧
婆の店は夜しかやっていないし、その正体は誰も知らない
すごく年を取った女郎蜘蛛だとか色々なうわさがあるが、大物なことは確かだ。
心も空気もすぐに読むし幻術も戦闘力も高い。
だからこっちも鋭利な鎌の様に神経を研ぎ澄ませていなければならない。
わからないのはそのシステムで婆様はまず相談者の悩みを聞く
それからその料金を要求されるがそれはたいてい金ではなくて、
自分の体の一部とか、とんでもないものだ
それでもいいと言いうと、婆様が料理を作り出す。
客からの注文は出来ない、それから料理が出てくる。
どうやってチョイスするのかは、わからないがどれもこれもものすごく美味しい
それで終わりかと言うとそうではない
ものすごく時間がかかるときもあるし、たいていなにかのおまけがついてくる。
要するに婆様の気分しだいなのだ、ぼーっと考えていると
「青龍スーツで行ってよ」朱雀が言う「ああ」と俺は答えた。
そして俺はなぜか好かれている。
稲荷様もそうだがなぜかみんなが怖がって近づかないようなものに好かれる。
それは足枷の様にいつもついてきた。
それでも、まあ一応異性なので、白虎よりはましだと思うし今は孤独じゃない
「レグに電話しなきゃ」と言うと朱雀が真面目な顔で
「ほんとに恋人じゃないの?」
とまた聞いた。
俺は真面目な顔になって
「何度も言ったろう、初対面のお前にだって手にキスしただろう
国も習慣も違うんだ、あれいやらしかったか?お前だって宝塚を馬鹿にしたら怒るだろう」
と言うと
「そうだね ごめんね あんまり素敵だったから、マダモアゼルだって私のこと」
顔を赤らめた。
レグのあいさつが相当効いたらしい、俺もしてやったりと思った。
電話を取って説明するとレグが色々心配してくれる。
優しいな、優しくされると嬉しいので俺も優しくなれる
「大丈夫、大丈夫、そんな心配しないで、うんうん愛してるって、嘘じゃないよ」
レグをなだめて電話を切った。
「仲いいね」朱雀が少し当惑した顔で言った。
俺は真面目な顔になって
「いいか幽霊を信じない物に幽霊は見えない、愛も同じだ」
朱雀が呆けた顔でうなづいた。
窓を開けて迫りくる宵闇を眺めた。
妖怪同士の間には法律はない、だが約束事は守らなければ報復される
そして約束には駆け引きがあり罠が仕掛けられていることがほとんどだ。
張りつめてきた神経で思った。