清明様の憂鬱 朱雀さん愛情表現69
「お前婆様の店の仕組みしらんのか?」葛の葉が言った。
「しらない」朱雀が言った。
葛の葉は昔の婆様を思い出した。
健康でいつも楽しそうに笑い、身持ちがよく美貌だったが周りに集まってくる青年達には気にもせず相
手にもしなかった。
そのそっけない態度にもかかわらず集まってくるものもいたが、決して人を頼らぬ態度が
自然と周りをよせ付けなくなった。
だが孤立してもそんなことは大した問題ではなかった。
動物の守り神である婆様はひたすら弱いもの守るという本能に集中しそれしか見ていなかった。
そして、ある時から急に容色が衰え始め老け込んであの場所に店を立てて引きこもってしまった。
不老不死の者にはありえないことだったが、不幸や災難を薬にし自分の体で実験していれば
話は別で、あの場所を選んだのも、不満やなっとくできないものと取引がしやすいほかに
昔の自分を知らないものが多いからだ。
自己犠牲そんな言葉が浮かんだ時
「あのさ、演目は何にすればいいと思う?」
朱雀がわりこんだので、思考が止まった。
「わしはバレエのことなんかわからん」
「パソコンいじっていいか?」言いながら朱雀はyoutubeでいろんなものを見せた。
「あこれいいんじゃない 景気良くって、高揚感あるし」
葛の葉が指さしたのは黒鳥だった、明るい音楽に合わせてバレリーナがぐるぐる回っている。
「これは白鳥っとセットじゃないと」
「白鳥?お前はくろどりでじゅぶんじゃろう、大体天使さん以外誰もわからんバレエなんて
清明様なんかいまだに能しかみないし・・・」
「 ええ、せめて歌舞伎にしてもらいたい」
話しているとブーンと言ってテレビがついた。
白い着物の青龍が出てきた。
「なんじゃ、おまえかさあちゃんは・・・・」
「眠いって先に帰ってしまった」そして朱雀に気づくと
「お前の旦那は鬼か?」と言って怒り出した。
朱雀は「大丈夫、復讐しといたから」と言って洗面器にたまった真っ赤な水を見せた。
「うわ」思わず言った青龍に
「それより、皮は」といって
「袋を持ってこい」というのでその中に皮を入れた
一安心すると脱皮した青龍の皮膚が尋常でないことに気づいた。
まるで青磁でできた陶器のように白く光り輝いている。
「おまえすごいな」朱雀が言って
「青龍に白鳥やってもらえばいいんじゃ!」
葛の葉が素晴らしい名案のように言った。




