朱雀さんの愛情表現 67
一つ上の階でそんな大惨事が行われている時
葛の葉は部屋で本当の幸福が味わえる唯一の時間を満喫していた。
地下には夜行性妖怪のすまし牧場とショッピングモール、小さくてあやしい店も多いが大型のスーパー
のようなものがありそれを抜けると、真っ暗な長い廊下が続いている。
そこに屑の葉の寝室もある。
もちろん、ここで長い時を過ごした葛葉たちはこの迷路のような作りを熟知している。
食卓のにぎやかな物音や、騒音、おしゃべりはそれはそれで楽しいし、自分の一部になってしまって
いるが、蔵で一人で育ったせいかやっぱりしんとした時間が好きだった。
何も考えず、髪を洗いお気に入りのキャミソールや薄手のガウンでうつらうつら眠ったり
ぼんやり何も考えずに横たわっていると心の底から安らぎを感じた。
今までは・・・
今は苦しい、過去の亡霊がわさわさと壁から壁を抜けて通っていく
これは幻覚、結界を張っているのだから自分の心が生み出す幻でしかない
(そろそろ、薬をやめなければ・・・)
その時、こんこんと窓がなった、窓と言っても明り取りの曇ったガラスでいざという時の退路
にもなる。
これは幻聴ではない
(くずのはーあけてくれー)朱雀の声だ
まったく思いながら、葛の葉は薄いガウンを羽織って窓を開けた
血まみれのレオタードの朱雀がいた。
「なにそれ、お前」
朱雀は、まだおさまらない、情熱だか怒りなのか分からない悪魔的な眼をしてぎゅっと口元を
引き結んでいる。
「またやったのか?」葛の葉が尋ねると黙ってうなずいた
素早くガウンを羽織って、タオルと大きなプラスチックのかごにパイル時の着替えやシャンプーリン
スを入れて渡した。
「早くしないと、血のシミがとれんぞ、それから髪も洗ってこい、気分が落ち着く」
「入れてくれないのか?」
「ダメ、血が取れるまで早く洗ってこい、シューズやレオタードは水につけて持っておいで
血のシミだらけになるぞ」
「ええええ、でもどこで」葛の葉は中庭の水道を指さした。
「あんなとこで」
「みんな寝てるし、白虎殿ならともかくお前の裸なんか誰も興味はない」
朱雀はトボトボ歩いて行った。




