朱雀さんの愛情表現52
この屋敷に来てからというものいつも何かが起こるかわからない
予測不可能な事態にももうなれたと思ったがこれはあまりにひどい
「ちょっと、何やってんですか、あんたは」
白虎は声を限りに叫んだ。
鋭い目の老人がこっちをにらんだ
「誰だ、あんた」
「カラヤンです」葛の葉が言った。
「は?」
「知らないんですか、オーストリアの音楽の帝王ですよ、一度聞きたいと思ってたんです
最後に・・・・」葛の葉が涙を拭きながら言った。
「最後にってなんですか?」
「ですから最後ですよ、ちょっと大声を出さないでください、マナー違反でしょう」
このタイミングでオーケストラの演奏ってそのうちに何かのまつりか、カーニバルとでも勘違いしたのだ
ろうか
油すましがあつまってきてあろうことか、リズムに乗り始めた。
演奏はこれでもかというくらい大きく速くなる。
チャララチャラチャチャチャチャチャチャチャ
パーオ マーオ
勢いのある演奏にすましたちもノリノリで勢いがついて踊りだした。
清明様のルンバも回転が速くなっているような気がする。
白虎も、歯をくいしばり力の限り、ふんどしを引っ張りながらそれについて高速回転する。
それにしても、なんでこの布は破れないのであろうか
自分は力と体力が自慢で、それに加えて毎日剣道の練習や体を鍛えることを怠らない
それが、清明様ルンバにはまるで歯が立たない
そして一番の問題はふんどしの先に自分の本体がある、あれをもっていかれたら・・・
「靴なら買ってあげます、18万は出せませんが」白虎はできる限り優しく猫なで声ならぬ
狐撫で声で言った。
「ええ、そんなつもりじゃあ」葛の葉が振り返った。
この後に及んでとぼけている。
「ぺラダはいりません、プラダがほしいんです」
涙のいっぱいたまった大きな眼で自分を見て葛葉が言う。
「いくらするんですか?」
「5、6万あれば・・・・」
「そんなに?朱雀に怒られます」
ますますぎゅんぎゅん回転しながら言った。
苦しい、目が回るが止まれない
最後とか言っていたがもっと違う選曲はなかったのだろうか?
「白虎殿、いつももってる手帳に、へそくりはさんでいませんでしたっけ・・・・」
「何で知ってるんです」
「だっていつなくすか心配で・・・」葛の葉はハンカチで目頭を押さえながら言った。
「葛葉さん、あなたちょっとお」言おうと思うと、ますます下を向いてハンカチをあてがって言っ
た。
「ああ、海に帰るのね、二丁目では海から来た
黒い宝石とかサラブレットと言われた、 テキサスの財宝が削られていく、そしてなま粉となり
皮脂の砂になって、形もなくなるの、うっうっうっ、みんな悲しむでしょうから分け合わないと
朱雀もかわいそうに・・・・」
なぜ、自分はいっしゅんでもこの人を弱い、などと思ったのだろう
自分の分身であるテキサス野郎はいくら稼いだのか知らないが
粉になるまで売りさばかれるのだろう。
いよいよ、事の重大さを考えなければいけない
脈が速くなり巻き込まれた布のせいで、カニのような形で全力で回っている
がもう限界だ。
「わかりました、5万ありますそれで勘弁してください」
「五万五千円あったでしょう、インリン・オブ・ジョイトイ」
「誰がインリンですか、出します出しますから止めてください」
清明様ルンバがういいんんんと止まった。




