朱雀さんの愛情表現㉛
そのころ青龍は失意のどん底を全力疾走していた。
事の起こりは、機嫌よく「ただいま」とドアを開けた瞬間からおきた。
返事がないので「レグ?」と呼びかけた瞬間、どーんという衝撃をまともにうけて、ドアにたたきつけ
られ、ふりかえると怖い顔のレグがいた。
「ど、どうしたの」青龍は唖然として言った
「悪魔め、もうだまされないぞ」
毅然とした顔のレグが言った
(レグには俺が悪魔に見えてるんだ あの、婆のせいか)
よろよろと立ち上がりながら青龍は理解した。
「レグちょっと聞いて」
言ったとたんにまた衝撃を受け青龍はひっくり返った。
レグがまた怖い顔で言った。
「僕が外国人だからってバカにするな、君は確かになにわのモーツァルトかもしれない、
あほの坂田の曲は名曲かもしれない
だが君とMr、パンチョがヅラだってことはみんな知ってる、分け目が時々対角線になって
るってことも知ってるんだ」
(レグには俺が悪魔の化身だけじゃなくて、キダタローに見えてるんだ、それに何でそんな
情報をレグが知ってるんだ)
レグは相変わらず冷たい眼で自分を見ている。
「僕は行かないぞ、僕には友達がいる。
そして失礼かもしれないがその動物の死骸のような
ズラはやめたほうがいい、動物だって自分の死体を頭に乗せられたらいやだろう
動物にだって敬意を払え」
(だから、俺がその友達なんだって、それに俺はいつから動物の死体を乗せてるんだ
何、何の動物が見えてるの?)
それだけでも聞きたかったが、レグを見たらまだ毅然とした顔で自分をじっと見ている
どうあがいても変えられないような強い意志をもって、普段なら感心と賛辞をもって
たたえたくなるような表情だが、とても自分の言葉は届きそうにない
数秒の脱力感の後、脳内を熱風で焼かれたような感覚を覚えて青龍は部屋を飛び出した