朱雀さんの愛情表現⑲
「ちょっと、なんでこんなことに何のじゃ」
ドアを閉めながら葛の葉が言った。
俺は部屋の墨に落ち武者を座らせてから経緯を説明した。
「まったく」葛の葉はお茶をおいてから、チェスのセットを置いた。
「あそこには行っちゃいけませんって言ったわよね、言ったね、確かに言ったね」
「そういえば・・・」
「そういえばじゃないの、おまけに取引までしてなぜお前はすぐ忘れるんじゃ」
チェスの駒が勝手にすすっと動く
「取引ってそんなおおげさな」
また駒がすーと動いた。
「大げさじゃないぞ、これ、あの婆様 腕上げたな、黒魔術使ってきた
結構まずいぞ お前脱皮まで隠れたほうがいい」葛の葉があまりに真剣な表情になったので怖くなってき
た。
「そんなに大変なのか?」
「大変も大変じゃ、唯一助かる道は石榴をぶつけるぐらいじゃ」
「ざくろおおお」俺は大声を出した。
「それは助かるとは言わないだろう、日本刀でもがき苦しむか、毒薬でのたうちまわるか選べと言って
るのと同じだ」
葛の葉は笑わなかった。
代わりに奥に行って分厚い本をもって来た
なんだか生臭い
「それはネクロのみかんとかいうやつか?」
「ネクロノミコンは死者召喚の本じゃ、みかん召喚してどうする」
その時、白虎が帰っ来てこの部屋にまっすぐ歩いてくる気配がした。
俺と葛の葉は顔を見合わせて真っ青になった。
「大変じゃ」葛の葉が眠っている落ち武者の前に行って何か唱えだした
「幻術はやめろ」おれは言ったが一足遅かった。
葛の葉が「ぎゃっ」と言ってひっくり返って座り込んだ
「どうした」走って行った俺も愕然として動けなくなった。
抜けた髪の部分に、シイタケが ぽん ぽん すぽぽぽん と音を立てながらリズムよく
生えだしていた。
「葛の葉殿、朱雀はいますか?」部屋の外で白虎の声がした。