朱雀さんの愛情表現⑯
車を走らせている間も満足だった。
俺は別にグルメでも美食家でもないがこんなに食べるということで幸福になったことはない。
朱雀もまた満足そうにだらりとだらしなく座っている。
あれ、その時にふと思った。なんかこいつ可愛くなってないか?
昔、清明様が使っていたペーパーウエイトを思い出した。
球体かなり大きくで黒い台座に雪だるまがついていてひっくり返すとキラキラした雪が舞った。
葛の葉がプレゼントしたものだが、あの粉を振りかけたみたいだ、もう効果が出始めたのか?
「朱雀朱雀」と呼ぶと「わき見運転すな」と言ってこっちを見た
明らかにいつもと違う
「お前効果出てるぞ、レベル上がってるぞ」
朱雀が 「ええ、もう」と言ってバックミラーを動かしたので「何やってるんだ、この馬鹿」
と言うと窓を開けてサイドミラーを覗き込んだ
「鏡も持ってないのか」返事がないので横を見るとミラーを見ながら唖然として固まっている
「そんな乗り出すな、危ない」その時対向車のトラックが来た。
「危ない」叫んで渾身の力で引っ張った、着物が破ける音がして車もふらついて急いでハンドルを
切った。
対向車の運転手が何か怒鳴ったのがわかったがよかった、霊堂は狭いので正面衝突するところだった
俺は噴き出た変な汗ぬぐっていると朱雀が振り返った。
「せーりゅーううううううううう」
それを見て全身が冷たくなった。
朱雀の頭頂部の髪が刈り取られ落ち武者スタイルになっていた。
トラックの側面に刈り取られた頭皮と髪がひらひら遠ざかって行った