朱雀さんの愛情表現⑭ホワイトシチュー パイつつみ
婆様はそれから冷蔵庫からパイを出して綿棒で伸ばしシチューの上に乗せオーブンに入れた
ますますいい匂いがしてきた。
パンが焼けるふんわりと優しい匂い
婆様が「ちょっとだけ待っておくれ」と言ってテーブルにすわった。
「何ができるんだ」青龍が言うと
「シチュウのパイ皮つつみ」と言って二人を平坦に二人を見た。
「代金は俺の皮でいいのか?」俺はナフキンで涙をぬぐいながら言った
キッチンで、誰もいないのにスプーンがカシャカシャ音を立てた。
「ああ」婆様はうなづいた。
それから、ごろんと大きな水晶玉を出した。
「あのな、今日はこいつのバレンタインで来たんだ、それはどうなる?」
婆様は強靭な目で水晶玉を見ていた。
「あんたは料理じゃなくてほかのところで勝負したほうがいいよ」
(これは、勝負なのか、ますます話がややこしくなってきた)
「旦那の好きな物は・・・」婆様は水晶玉を見ながら言った
「カニみそとかこのわたとかウニとかかな」
朱雀が全然バレンタインと全然関係ない、というか関係できないものをあげた。
「それは、そのまま出せばいいだろう、あんたの得意なものは?」
「ダンス」朱雀が答えた。
「じゃあ、それで勝負するといい」婆様は言ってオーブンのほうによたよた歩いて言った。
(また変な話になってるな)青龍は思ったが
オーブンを開けるとますますいい匂いが濃密になって何も考えられなくなった。
婆様はふっくらと膨らんだパイにバーナーで焼き目をつけながら
「不死なんてさ人間はあこがれるけど、人間と同じでさいろんなことが起る
なにかが終わって、ああ何もかも気づいた時には間に合わないなんて言ってるうちに新しいことが起った
りね」