朱雀さんの愛情表現⑫
「何今の人?」俺は後頭部を押さえながら言った。
「何でもない、復讐したい奴がいたらしいけど視力をなくしちゃってそんでレンタルしただけだよ」
「復讐って目になにかされたのか?」
「いや、レーシック失敗したらしい、それより商談だね」朱雀にむかって言った。
「ええと」朱雀はいつになく真剣な表情で話し出したが、
予想どおり自分でも何が何だか分からなくなり、
意味不明の酔っ払いのおやじのボヤキのようなことをさんざん並べた挙句、自己完結したらしくすっ
きりとした顔になり
「でも舌がなくなると宝塚に入れなくなるから困る」と言うなんの脈略もない言葉で
締めくくった。
だが婆様は「なるほどね、なるほどね、なるほどね」呪文のように3回言うと考え込んだ
俺は思わず「わかったのか?」と「こういうのを年の功という」と言った。
わかんのか、まあいいけど
「とにかく俺は関係ないから、こいつの問題だから」と言うと
「青龍 代金はお前が払いな」と言ってにたりと笑った。
俺は、思わず立ち上がって
「今俺の言ったこと聞いてたのかー」と叫んだ
それから、足元に特攻してきた猫につまづいて思いっきり後ろにひっくりかえって後頭部を打った。