朱雀さんの愛情表現 ⑪
俺はしたたかに後頭部を打った。
一瞬間の前が白くなり、慌てて起き上がった
「あ、起きた」朱雀が言った。
「ああ大丈夫かい」
婆様も言ったが目には包帯を巻いて髪もあげられていた。
「どしたの?それ」と聞くと、朱雀の手を握って
「この子が手当てしてくれたんだよ、黴菌が入ったら困るってね」
「ていうかその目はどしたの」
「ああちょっと人に貸してね、レンタルってやつかい」
「レンタルって・・・」
そう言ってる間に、外が異様に騒がしくなってきた。
「船が着いたようだね」怒号、悲鳴、叫び声思わず耳をふさいだ
いつの間にか俺の胸の上に乗っていた猫も耳を押さえている。
しばらくして急に静かになったと思ったら、極度に緊張している男の声がした
「婆様 わしだ」
「手を引いておくれ」
婆様は朱雀に言って入り口に向かいながら素早く包帯を取った。
男は影になっていて見えない
血の付いた刀が見える
「助かった」男が言って婆様は「気が済んだかね」と言いながら何かしている。
「ああ、もう思い残すことはない」
扉が閉まって振り向いた婆様はこちらに向かって歩いて来た。
目は元通りになっている。
目を取り戻した婆様はずっと冷静そうで凄みがある。
そして
「まあ、お座りよ、話をしよう」といって笑った。