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朱雀さんの愛情表現108 最終回

はい最終回ございます

 帰りは珍しくいい気持ちになって猫たちに見送られて外に出た。


「姫様をよろしくね」というと


 「はい、私たち姫様に守ってもらったですにゃあ、今度は私たちが姫様を守るですなあん」


挿絵(By みてみん)



みんな笑顔のままだが真剣に言った。


 帰り道は雨が上がっていて荒廃した船着き場を抜けた夜道はとても美しかった。


 木々の芽は吹きかけ、こげ茶色で下塗りしたような土の上で生き生きと光っていて


世界中がしっとりとうるおっている。


葛の葉はなぜだか急にそんな感覚に打たれて立ちつくした。

 

 空は満月の月が浮かんでいるのにひっそりとして浮かんでいる雲は動かず


彫刻めいて見えた。


 こんな風景を見られるのも清明様に助けられたから


 生きていられたからなのだわ


 後ろで清明が「おっと」という小さな声が聞こえた


  足を滑らせたらしい、清明は自分と違って夜目が聞かない


 振り返って


 「清明様、お袖を引いてもいいですか?」


  というと「ああ」と答えたので


 袖のはしをつまんでついでに周りの草を発光させた。


  「ああこれは便利だな」と言って歩幅を合わせてゆっくり歩いた。


  珍しく葛の葉が無口なので


 「どうした」と聞くと


  「胸がいっぱいになってしまって、ほんとうにおいしゅうございました


   それにこんな風に歩くのも楽しいものですわね」


 「ああ、確かにおいしかったな、お前にはうちの中のことばかりさせてしまって


  申し訳なかった」


  「そんなことはありませんけど、また連れてきていただけますの」


    初めていつものように、ではなくいつもより、無邪気で華やかに笑った。


  「その時はまた手を引きますね、ここは人界とのお関所ですから足元は私がお守りいたします


   清明様あの店が気に入りましたか?」


  「ああ」答えるとしばらくたってから


   「好きですか?」とぽつりと言った。


  「ああ」答えると


   一瞬、ほんの一瞬だけ泣きそうな顔をしてから


   透き通った肌をほんのりと赤らめて幸福そうな顔でにっこりと笑った。


     

 


  

お疲れさまでした

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