朱雀さんの愛情表現 102 注文のできない料理店
葛の葉が晴明を見て言った。
「ここのレストランはルールがあるのはご存知ですか?」
「えっと、なんかあったな、忘れてしまった」
「じゃあ、聞いてください、まず心を読むのは禁止です
それから自分から注文はできません
けれども御心配には及びません、姫様の腕は最高ですから
それから代金も決まってません」
「ああそうだった。
誰かの苦しみを肩代わりするんだったな、でもなんで心を読むのは禁止なんだ」
「当たり前じゃないですか、何が出てくるかわからないから面白いんです
それに代金も正しく言えば無力な者の苦しみです
小さな動物とか、それをほんの少しだけ肩代わりする
そう思えば腹も立たないでしょ」
葛の葉はにっこり笑った。
「つまり、注文のできない料理店ですが、はずれはありません
ねえ、すごくウキウキしませんか?
と楽しそうに笑って清明の袖をぐいぐい引いて行列の横をまわって横道に入った。
「予約しといたから、こっちから入れますのよ」
うれしそうな笑顔に海からの霞がかかる。
「お前は、なんでそんなはしゃいでるんじゃ」清明は言った。
「当たり前じゃないでいですか、清明様となんてほんとに久しぶりの外出なんですから、
雨もしぐれも霧も嬉しいです」
そういってまた、楽しそうに笑った。