朱雀さんの愛情表現101
「すいません、お待たせして」着飾った葛の葉が言った。
「なんで雨の日にそんなに高価な着物を着る必要がある?」清明は無表情で言った。
「この着物なかなか、着る機会がなくて、あら?」
「なんで、清明様は、そのまんまですの」
「おかしいか」
「当たり前じゃないですの、正体丸出しでちょっと来てください」
葛の葉が袖をぐいぐい引いてひかれるままについていった。
「そうだわ、たまには洋装なんてどうです」
「洋服なんて、持っていたか?」
「確か30年くらい前に買ったコートが・・・・」
葛の葉が、いそがしくタンスを開けたり、閉めたりしながら言う
すると何かに気づいたらしく
「あれ?」
と言って考え込み始めた。
「そうすると、私も洋風に着替えたほうがいいですわね」
「いや、それはいい、その着物はすごくいいからお茶でも飲んで待っていなさい
一番いいやつを着るから」
「そうですか、お手伝いはよろしいのですの?この着物好きですか?」
「ああ、すごく似合っている」というと、にっこりして
「じゃあ、下がっていますね」と言ってにこにこ去っていった
(危なかった)思いながら、急いで着替えた。
台所に戻ると、お茶を飲んでいた葛の葉が
「おぼちゃんまで出かけてしまいましたの、だから朧車タクシーを
呼びました」と言った。
レストランまではすぐ着いた。
廃墟のような場所で、ひときわ明るい場所があり行列ができている。
「ほう、ほんとに変わったな」言うと
「中はもっとすごいですわよ」と言って葛の葉が、羽織の袖の端をつかんで引いた。