朱雀さんの愛情表現100
「清明様、雨ですね」
突然葛の葉がぽつりと言う
「ああ」声明は答えた。
「朱雀と白虎殿は出かけてしまいました」
「ああ」
「小雨ですね」葛の葉はウロウロと歩き回りながら言う
「お前は、何をうろうろしとる」
「いえ、かたずけものを」
机の上はきれいに片付いている。
「少し落ち着いたらどうだ」
「お茶を入れましょうか?」
「いい、さっき飲んだだろう」
「はい、外は、雨ですね」
清明は、呼んでいた新聞を下ろして葛の葉を見た。
「お前は一体何が言いたい?」
「あの、姫のお店の建て替えが、終わりましてあの船着き場ががらりと変わったのはご存知ですか?」
「あんな、陰気な場所がか?」
「はい、月も大きく、光もたよりが強くなって、夜でもスズメが飛ぶのが見えるんです
本当に飴のように小さくてかわいい鳥ですわよね
草のわきには道ができて、海は明るく光って怖くないし、遠くの山は煙って、
特にこういう雨の日のほうが、私には安心できますし
木や草も喜んでいるようで、私には奇麗に見えます」
一気にそこまで言うとうつむいてしまった。
「つまりお前は、そこに行きたいのか?」
「たまには、外食もよろしいかと・・・」言う声がいつもと違って妙に、小さくしおらしい
そういえば、外に連れて行ってやったことなど、はるかに昔でどこに行ったかも忘れてしまった
「そうか、たまにはでかけるか?」
新聞をたたみながらいうと
ぱっと目を輝かせて
「したくを予約もとってまいります」
と言ってパタパタと走っていった。
それから、何度か声をかけたが2時間近く待たされた。