求め合う二人
「どうしましょうか」
屋上から出られなくなり困り果てる彼女と僕。
「携帯は?」
「捨ててしまいました」
彼女の意思の固さがその言葉で伝わった。
本気に彼女は「死」を選ぼうとしていた。
そう僕は感じた。
対して僕は流石に捨てるまではしていなかったが携帯を持って来てなかった。
つまり、彼女も僕も携帯を持っていないため連絡手段がない。それにお互い何も持っていなかった。
さらに自殺をするところを見られたくなくて遅い時間を選んだのが仇となる。
思っ切り扉を開けようと、助走をつけ思っ切り体当たりをする。
鈍い痛みが肩を襲う。扉は激しい打撃音がしただけで全く開く気配がない。
死ぬために来たのに生きようとしてる自分に気づき可笑しくなる。
その後、何度も何度も体当たりをするがダメだった。
死ぬかも
頭にそんな考えがよぎる。
「あの、もう良いです」
寒さで震える声で彼女は僕の行動を止める。
僕は震える彼女に自分の制服を羽織らせる。
彼女はそんな僕の手を引き、自分の横に座るよう促す。
僕は促されるままその横に腰掛ける。
肩と肩を合わせ、二人で制服を羽織る。
暖かい気分に心が満たされる。
このまま二人で死んでも良いなと自分勝手なことを僕は考えていた。
「あの、あなたはどうして屋上に来たのですか?」
心地よい気分に浸っていると彼女が尋ねてきた。
「死ぬために来たんです」
回りくどい言い方はせずそのままの言葉で告げる。
「そっか、私たち、仲間ですね」
口調が和らぎ、僕の方を向き微笑む。
「そうだね」
僕も微笑む。
そして目を閉じてキスをした。
「初めて」
「ぼくも」
照れ臭そうに言う彼女にもう一度キスをした。
二人は寂しさを紛らわすかのように何度も何度も繰り返した。