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勝利を掴めと轟き叫ぶ

 なんでも、これがキングロボの核となっていた物質らしい。これと電気エネルギーを組み合わせることで、常識外れに強力なロボを生み出すことができたのだとか。


「2台のキングロボを合体させたところで、今のクイーンに勝つことはできん。じゃから、おぬしらに使ってほしい。このわしの発明品を」

「ルーク。大丈夫かな。これ」

「問題ねえだろ。ただの魔力の塊だから、これまでお前が戦った怪人のようになる心配はない。妖精への負担が大きそうだから、小さいほうをビショップに使わせよう。これでも心春のケガ程度なら治して莫大な釣りがくる」


 僕はそれを聞いて小さいほうのクリスタルを受け取り、心春のもとへと持っていく。


「心春。もう大丈夫だよ。これで助かるから」


 クリスタルを心春に渡そうとすると、心春はやんわりと僕の手をはらった。


「心春……?」

「話は聞いてたよ。二つとも優くんが使って」

「そんな。それじゃあ心春は助からないよ」


 心春は目を閉じて微笑む。


「それでもいい。どうせ私はさっき死ぬはずだったんだもん。この優くんのやさしさを見られただけでも、幸せ」

「駄目だよ心春。君は僕に君を見捨てろというの!」

「そうはいかねえぜ。まだ俺はお前らにストーキングの罪を詫びてもらってねえ。死なれたら困る」


 ルークは僕の手からクリスタルを奪い取り、ビショップの体に押し当てる。クリスタルはビショップの体に沈み込み光を放つ。


 ビショップは苦しそうにもがいたのち、その体の傷が一瞬で消滅した。

 心春も同じだ。全身ズタボロだった心春の体は、ケガをする前の元気な姿に戻る。

 心春はむくりと起き上がり、自分の手を見つめた。


「どうして……。優くん。なんで私のために」

「何言ってるの。心春を見捨てるなんて、できるわけないじゃないか」


 そして僕は立ち上がり、キングからもう一つのクリスタルを受け取った。


「こっちはキングロボ2号の核になっていたほうのクリスタルだな。優、覚悟しとけよ。とんでもない量の魔力がくるぜ」


 ルークは僕からクリスタルを受け取って、自分の体に押し当てる。クリスタルはどんどんルークの体のなかにめり込んでいった。



「がああああああああ!」



 ルークの体は先ほどのビショップよりもずっと強く輝き始める。そしてルークは大声をあげて苦しそうにのたうち回った。


 それと同時に、僕の体の中にとてつもない量の魔力がなだれ込んでくる。

 僕はあまりの苦しさに、その場でうずくまってしまった。


 ルークの光が収まるとともに、僕の苦しみも徐々に減衰し、僕らは息も絶え絶えになりながら立ち上がる。


「はぁ……。はぁ……。これでオッケーかな」

「そうだな……。正直予想以上の苦痛だったが、これで俺たちにクリスタルの魔力が入った」


 確今の僕の体の底にはとんでもない量のパワーがあるのを感じる。これなら、クイーンを倒すことだってできるかもしれない。


「よし、行こうか」

「待ってくだちゃい。こっちはまだ心春ちゃんの治癒にだいぶ時間がかかりそうでちゅ」

「大丈夫だよ。私も戦えるから」

「だめでちゅ! 心春ちゃんの体の中の傷は全く治ってまちぇん。こんな状態で戦ったら、すぐに死んでしまいまちゅ!」

「だけど! そうじゃなかったら小さいほうのクリスタルが無駄になっちゃう。今はこれだけ魔力が有り余ってるんだから、少しくらい体がダメでも戦えるよ!」


 言い争っている心春とビショップの隣を素通りし、僕とルークは倉庫のシャッターの前に立った。


「いいよ。僕ひとりで行ってくる。心春の治癒を待っていたら、町がどんどんひどいことになる」

「優くん! ダメだよ! クイーンは一人で立ち向かえる相手じゃない!」




「それでも、僕は魔法少女だから。それでも、僕はヒーローだから。戦わなくちゃいけないんだ。勝たなくちゃいけないんだ」


 これは、僕の心の底からの言葉だった。


「勝って、町を守らなきゃいけないんだ! ……安心して、心春。大きいほうのクリスタルの魔力は常軌を逸したのものだ。その力を得た今の僕なら、勝てる! 心春は安全な場所から応援して、僕の戦いを!」


 そして僕は箒を呼び出して、またその上に立ち発進させる。これだけの魔力があれば箒なしでも飛べそうだけど、それはクイーンの前で必要になったときだけやればいい。今はできるだけ魔力を温存しておくのが得策だ。

 真っ暗な地下通路を箒で移動していると、ルークが僕に話しかけてきた。


「よかったのか?」

「何が?」

「確かに今の俺たちが持つ魔力は膨大だ。だが一人でクイーンに勝てるかと言ったら、そこはかなり怪しいぜ」

「…………」


 ああ、わかってるよ。そんなこと。

 けど、ああいっておかないと心春が納得しない。


「最悪の場合は刺し違えてでもクイーンを止めようと僕は思ってる。それが僕の務めだ。……それでもいいかな、ルーク」


 そうなった場合、僕だけじゃなくてルークも死んでしまうことは必至だ。あらかじめ許可を取っておかないと。

 ルークは僕の言葉を聞いて、「はぁ」とあきれた様子でため息を吐く。


「あのな。優。そんなくだらない質問すんじゃねえよ」


 僕の行く先に光が見えてきた。あそこを抜ければ出口だ。


「それがお前の決断なら、それでいいに決まってんだろ! お前は俺の相棒なんだからな!」


 直後、僕とルークは快晴の空の下に身を晒す。吹き込む風は僕の体をかすめ、とても心地が良かった。

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