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いいじゃないか、三流で。熱い三流なら上等だ

「それにしても、傑作だよな。ろくでもないヘタレを素体に選んじまったせいで、あっさり見捨てられるなんてよ。ルークはほんと間抜けだぜ」

「てめえら……、よくも」


 ルークの声だ。明らかに苦しんでいるのがよくわかる。


「訂正しやがれ!」

「ああ? 事実だろうが、お前が間抜け野郎だってことはな」

「そうじゃねえ。そうじゃねえんだ」


 僕はようやく中庭に到着する。そこでは、ルークが五匹の怪人に囲まれてズタボロになっていた。

 ルークは憎悪に燃えた目で五体の怪人を睨み付け叫ぶ。


「お前らが俺をどれだけ馬鹿にしようと勝手だ。だけどな、優のことを悪く言うんじゃねえ! あいつは優しくて、勇気のあるすげえ奴なんだ! 俺がまきこんじまったせいで、あいつの心に傷を負わせちまったが、それは俺の責任だ。お前らに優の何がわかる! 二度と優の悪口を言うんじゃねえ!」


 その直後、馬面の怪人によってルークは顔面を蹴り飛ばされる。ルークは口から血を噴き出して後ろに倒れた。再び怪人たちが下種びた笑い声をあげる

 僕はそれを見て、考えるよりも先に体が動き出していた。


「じゃあ、そろそろとどめを刺すとするか。クイーン様も間もなく動くようだしな」


 アマゾンの蔦がルークに向かって猛スピードで伸びる。僕はルークをかばうようにして、アマゾンの蔦の前に身を投げ出した。

 ぐさりと何かが僕の体に刺さる。

 痛みよりも違和感が勝った。僕のお腹が蔦で貫かれている。じわじわと血が僕のパジャマにしみ出している。


「お前は……、確かルークの」

「優! 馬鹿野郎! なんで出てきたんだ!」


 ルークが僕に向かって叫ぶ。


「当たり前じゃないか。友達だもん……。さすがに刺されるのは予想してなかったけどね」


 そうだ。僕にとってルークは友達なんだ。

 ろくに友達がいない僕にとっての、唯一の同性の友達。

 友達がひどい目に遭っていたら、助けに行って当然じゃないか。

 ルークは慌てふためいた様子で


「優、変身しろ。変身すれば、俺の魔力でお前の体の治療ができる。だから、もう一度だけ魔法少女になってくれ」

「何言ってんのさルーク。もう一度だけなんて、そんな寂しいこと言わないでよ」


 僕は失血と今更じわじわと訪れ始めた強烈な痛みで朦朧とする意識の中、ジュエルフォンを取り出す。そして僕は宝石のスイッチを押して、腹の底から力いっぱい声を絞り出した。



「変身! 魔法少女・まじかる☆ルーク!」


 僕の体を眩い光が包む。僕の着ていた衣服が消滅し、魔法少女の衣装が現れる。

 周囲の怪人たちは、変身中の僕を躊躇なく攻撃してきた。


 だけど無駄だ。今の僕に、そんなせこい攻撃は通用しない。

 以前にアマゾンから変身中に攻撃されたときの僕と比べて、今の僕は魔法少女としての力がはるかに強くなってる。変身中に、お前たちの攻撃を防ぐ程度のバリアを張ることなんて造作もない。



 体を包む光が、端から次々と弾けていく。光が弾けたあとの僕の体には、魔法少女の衣装がまとわれていく。


 髪がすらりと伸びて、水色のリボンがあしらわれる。


 肘まで覆う白い手袋と、王杓のような形状をしたステッキ。


 水色のブーツにフリルのついたハイソックス。水色を基調としたエプロンドレスからは燕尾服のように裾が伸びている。


 そして僕を包んでいた光がすべて弾けて消える。僕はステッキを構えて怪人たちに向かって突き出した。変身完了だ。


「こ、こいつ、前よりずっと強くなってやがる! 魔力のケタが違う」


 狼狽する怪人たち。皆が慌てて逃避体制をとる。




「よくも……! よくも僕の友達を傷つけてくれたね!」



 僕はステッキを構えて魔力を込めていく。



「や、やめてくれ! そんな攻撃を食らったら、今度こそ消えてしまう」



 逃がさない! ルークを傷つけた君たちを、僕は絶対に許さない!



「ルークフラッシュビーム!」



 必殺ビームを怪人に向けて放つ。放たれたビームは、以前とは太さもその輝きの強さも比べ物にならないほどのものだった。

 ビームは五体の怪人を飲み込み、そして一瞬にして消滅させる。

 喧噪に包まれていた裏庭に、再び静寂が訪れた。



「やったな、優!」

「うん!」


 僕はルークとハイタッチをする。ルークの小さな手が僕の手のひらの真ん中あたりにちょんと触れた。


「その、優、済まなかったな。俺、お前の気持ちをろくに慮ってやれなかった」

「僕のほうこそ、ごめんなさい。そもそもルークは人間のことを想って、クイーンを裏切ったんだよね」

「まあな。なんつーか。俺たちは互いに不器用すぎた。これからは気を付けようぜ。相棒」


 そうして顔を見合わせて、僕らは大きな声をあげて笑う。

 やっとだ。


 やっとルークと、大事な大事な友達と、仲直りすることができた。


 ルークに『相棒』なんて呼ばれたら、かつての僕なら寒気がしていただろうけど、今の僕はそう呼んでもらえることがすっごく嬉しかった。

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