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ヒーローはいつも自分自身と戦うんだ

 僕はもう魔法少女にはならないと決めてるのに。そもそも、もうルークは僕の元にいないから変身することはできない。そんなことを言われても困る。


「無理だよ。だってもう僕とルークの契約は破棄されちゃったんだし」

「なん……じゃと……? ルークが姿を現さないのはそういう理由か」

「だからもう僕は魔法少女として戦ったりはしない。他をあたってよ。あんたの無事を確認できてよかった。それじゃあ」

「待つのじゃ! お主ら二人の力がないと、到底クイーンを止めることなどできんのじゃぞ!」

「うるさいな! どうしてどいつもこいつも僕にそんな期待をかけるの!? 僕はみんなが思うような、正義のヒーローなんかじゃない。みんなのために戦ったり、誰かを助けられなくて後悔したり、そんなことはもうたくさんなんだよ!」



 僕はつい頭にきて叫んでしまった。どうかこれで隣の部屋に迷惑がかかったりしないことを祈りたい。


 直後、消えていたはずの病室のテレビの画面に砂状のノイズが入る。

 いや、テレビだけじゃない。僕らの持ってるスマホも、勝手に画面が切り替わりテレビと同じ音声と映像が流れていた。



『人類諸君。初めまして』



 ノイズが収まるとともに、クイーンの声がスピーカーから流れる。そして何やら二頭身の謎の小動物が画面に映し出された。



「「クイーン!」」



 ビショップとキングがそう口にした。

 体形はルークやビショップと同じ。何やら黒髪ツインテールのようにも見える毛の色をして、赤いリボンを付けた見た目だけはかわいらしい生き物だ。どうやらこれがクイーンの真の姿らしい。



『この映像は、ネットワークに接続された、世界中のテレビと情報端末に送信されている。これは、人類への戦線布告だ』



 クイーンはその小さな手をばっとこちらに向けた。



『全人類よ。わたしに降伏せよ。……と言って通じる相手でないことはよくわかっている。だから、お前たちにはまずわたしの力を見せてやろう。まず手始めに、わたしは明日、ある都市を破壊する。その破壊が終わったのち、改めてわたしはお前たち人類に同じ質問をしよう。それでは、人類諸君が賢い選択をすることを祈っている』



 こうしてクイーンの放送は終わり、再びテレビやスマホはクイーンの放送が入る前の状態に戻る。


「た、大変じゃ……」


 キングがテレビ画面を見つめながらわなわなと震える。


「こんな大規模な電波ジャックができるということは、クイーンが本当に素体を手に入れたとしか考えられん。暴れ出すぞ、キングロボを遥かに上回る化け物が……。高屋優! 頼む、戦ってくれ。そうでないと、この世界が終わってしまう!」

「早くルーク様を見つけまちょう。こんなこともあろうかと、あたちが開発したルーク様探知アプリを優くんのマジカルフォンに送りまちゅ」

「ビショップ。それ絶対ストーキングのために作ったよね」

「な、なに言ってるのでちゅか心春ちゃん。あたちはこういう事態を想定できる有能な子なんちゅ! 断じてルーク様をストーキングするために作ったわけじゃありまちぇん!」

「いらないよそんなの! もらったって僕はルークを探したりしないし、戦いもしないからね!」



 僕はそう言い残して、逃げるようにキングの病室を後にした。





 行く先々で先ほどのクイーンの戦線布告を見たたくさんの人たちがあたふたしていた。まだ何かのいたずらだとしか思ってないらしいけど、どうやら全世界の情報端末をジャックしていたというのは本当のようで、それに伴う大混乱が起きていた。わずか一分程度の間であっても、世界中の情報端末が使えなくなったことで、かなりのトラブルが起きてしまっているらしい。


 けど僕はそんなものはお構いなしに家路についた。

 途中でそういえば晩御飯の材料を買っていないことを思い出し、スーパーへと向かう。


 行先はルークと出会い、初めて魔法少女として戦ったスーパーマーケット。僕のビームで壊れてしまった精肉コーナーはまだ修繕されておらず、他のコーナーを間借りして肉を販売していた。 



『俺はルークだ。優。今すぐ俺と変身しろ!』

『ええっ!?』

『「ええっ!?」じゃねえよ。お前がヒーローになるんだよ!』



 あの日のルークとの駐輪場での会話を思い出す。あれがすべての始まりだった。

 思えば、ルークと過ごす毎日は、もちろんいろいろと面倒なこともあったけど、なんだかんだ楽しかった。

 僕は心春くらいしかまともに友達がいなかったから、あんなふうに憎まれ口を叩きあえる同性の(別種族だけど)相手は初めてだった。


 端的に言ってしまうと、いま、僕は、とても寂しかった。

 直後、僕はぶんぶんと首を振る。まったく。なに僕らしくないことを考えてるんだよ。


 それと同時に、店内に女性の悲鳴が響き渡る。


 悲鳴の聞こえるほうを見ると、野菜売り場にて真っ黒な服装に目出し帽を被った男が、店員らしき服装の女のひとの首筋に、後ろから刃物を突き付けていた。

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