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某インキュベーターさんが登場して以来、魔法少女といえば鬱ストーリーみたいな風潮になっちゃった気がする

 スーパーから逃げ出した僕は、近くのマンションの陰に身を隠し、「ルーク。変身ってどうやって解くの」と尋ねる。


「解除って叫べ。そしたらすぐに解ける」


 僕は即座に「解除!」と叫ぶ。ぱちんと眩い光が僕の周りではじけ、気が付くと服と髪型が元に戻っていた。ステッキも消えている。


「ふう……。もう。わけわかんないよ。いったい何なの。説明してよ」


 僕は近くの石段に腰を下ろしてルークにそう言った。時計を見ると僕がスーパーから出てほんの数十分しかたってないんだけど。もうまるで何時間も前の出来事のようだよ。


「なにって……。魔法少女だよ。そしてさっきの男は怪人」


 うん。それはさっき何度も聞いた。僕が聞きたいのはそういうことじゃない。


「わかった。もうちょっと具体的に聞くよ。君は何者なの」


 僕はこの目の前にふわふわ浮かんでいる水色の二頭身の謎生物に尋ねる。


「おっと。自己紹介がまだだったな。俺の名前はさっきも言ったがルーク。妖精界から来た妖精だ」


 のっけから意味が分からない。


「妖精界って、よくある魔法少女アニメに出てくるマスコットの出身地的な?」

「その通り。これまでにもけっこうな数の妖精が人間界に来て、魔法少女の力を人間に与えている。あのアニメたちは実話をもとに作られたものも少なくないぞ」


 そうなんだ。プリキュアが実在するならぜひ会いたいものだ。


「今回、Dr.キングと名乗る悪の科学者が、複数の妖精を謎の技術で呼び出した。この世界をむちゃくちゃにするためにな。俺たちのリーダーであるクイーンという妖精が、Dr.キングの活動に加担することを決めやがった。そこで俺たちのうち何人かは、Dr.キングとクイーンを裏切って人間に力を貸してやることにしたってわけだ」


 ん? ちょっと待って? ということは。


「もしかして、僕にそのDr.キングやクイーンとやらと戦えっていうんじゃないだろうね」

「いや、それしかねえだろ。お前には、奴らの組織、『フェアリー・ルージング』と戦ってもらう」


 何言ってるの!? なんで僕がそんな正義の魔法少女みたいなことをしなくちゃいけないの!?


「いや、他の人を当たってよ。僕にはそんなの無理だ。あんな恥ずかしいコスチュームで戦うなんて。いや、コスチュームがまっとうでも無理だけど」

「そんなこと言ってもな。あのぶつかった時点でお前と俺の契約はもう結ばれちまった。今更コスチュームも含めて変更はできねえよ」


 なんなのその架空請求エロサイトの「ご契約ありがとうございます」みたいな言い分。しかもあのコスチュームが変更できないって、冗談じゃない。


「いや、さっきも言ったけど、僕男なんだけど。なにあの魔法少女そのものって感じの服装」

「似合ってたぞ。お前が男だってわかるやつなんていないから大丈夫だ」


 全然大丈夫じゃない。


 大体、ルークは本当に日朝の魔法少女のマスコット的世界から来たのだろうか。


 まあ声がやたら低いイケボなのが気になるけど。見た目はたしかにそんな感じのかわいらしい小動物的なマスコットだ。

 だけど、もしエロ漫画的魔法少女のマスコットと同じ世界から来たのなら、僕の未来に待ち受けるのはきっと触手の苗床か悪の組織の性奴隷だ。それだけはご勘弁願いたい。

 宇宙の熱的死を防ぐために、変な結界を生み出す化け物になるのも嫌だ。


「おい、どうしたんだ考え込んだりして」

「触手の苗床は嫌だ……。性奴隷にも魔女にもなりたくない……。魔法少女同士の殺し合いに参加されるのもやだ……」

「いったいお前は何を言ってるんだ」


 ルークが呆れた様子で言う。ちょっと黙ってて。今大事な考え事してるんだ。


「あのさ。ルーク。そのフェアリールージングっていうのは、僕が戦わないとだめなの? 他にもそのクイーンを裏切った妖精はいるんでしょ? そっちに任せとけばいいんじゃないの?」

「お前……。それでも魔法少女の自覚あんのか」


 ない。


「結論から言うと、それはだめだ。俺は戦わずにビショップやローズだけに戦わせたら、俺の立場がなくなる」


 よくわかんないけど、要するにルークの都合ってことね。


「フェアリー・ルージングを壊滅させたら、俺は妖精の国に帰る。だからそれまではお前に戦ってもらわないといけないんだ」

「じゃ、じゃあ聞きたいんだけど、魔法少女として戦うリスクって、何もないの? 戦ってケガするようなこと以外に」


 後々えらい目に遭わされてなんで教えてくれなかったのか聞かれたとき、「聞かれなかったから答えなかっただけだよ」などと言い放たれるようなことがないように、僕は今ここでルークにそれを聞いておくことにした。


「ないな。強いて言えば、いい年してあんな恰好で戦うことの恥ずかしさくらいか」


 やっぱり恥ずかしい恰好ってルークもわかってるんじゃないか!


「まあ、なんにせよお前はやるしかないんだ。俺とお前は今日から運命共同体だ。よろしくな」


 短い手を差し出してくるルーク。



 こうして、僕のあまりにも理不尽すぎる魔法少女としての生活が、幕を開けたのでした。





 そもそも僕男なのに、女装で魔法少女やらされるっておかしくないですか?

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