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そりゃ魔法少女になったといったって顔は全く変わらないし隠してもいないんだから、クラスメイトに会ったら正体ばれてもおかしくないよね

 小ぶりな胸を包む白いブラが僕の視界に入る。


「な、なにしてんの!?」

「あ、ごめんなさい。食事しようとしてる人の前で着替えるなんて非常識でしたね」


 そういう問題じゃない。だけど梶原さんは僕が男だって知らないわけだから、あんまり詳しいことを話す訳にはいかない。

 梶原さんはシャツのボタンを留めなおして、僕の向かいに座って紅茶に砂糖と牛乳を入れ始める。僕は梶原さんの顔を直視できずにうつむいた。


 恋した相手のとんでもない一面に、僕は何もできずに固まってしまった。


「あの……」


 梶原さんが心配そうに声をかけてくる。


「どうか、しましたか?」


 なんだかやたらと艶っぽい声だった。しかもなんだか顔が赤い。


「い、いや、なんでも……」

「隠さなくっていいんですよ。私も、同じですから」


 梶原さんは立ち上がって服を脱ぎ始めた。僕は慌てて目を自分の手で覆おうとしたけど、梶原さんの手でとめられる。


「いいんです。私にはわかります。あなたは女の子が好きだって。今この状況で欲情してるって、私の勘がそう告げてます」


 うん。目の前の相手の恋愛対象が女の子であることには気づけるのにもっと肝心なところはわからないのかな。変なベクトルに特化した勘だ。

 梶原さんは半脱ぎの状態で僕をゆっくりと押し倒して馬乗りになろうとする。まずい。乗られると女の子にあるはずのない硬いものが当たってすべてがばれてしまう。

 そのときだった。



「こらぁあああああ! そこの二人!」



 心春の声が部屋に鳴り響く。直後、窓を開けて魔法少女姿の心春が部屋に入ってきた。


「こ……っ、ビショップ! どうしてここに!」



 僕はこの混乱に乗じて梶原さんの下から抜け出して、脱がされかけた服を整える。

 心春は梶原さんをびしっと指さして。


「そこの女の子! ゆ……、ルークにふしだらなことをするのはやめなさい!」


 梶原さんは半脱ぎの衣服を再び整えてから立ち上がった。


「いきなりなんですか。人の家に勝手に入ってきたりして。他人の情事に首を突っ込むなんて下品な方ですね」


 うわあ梶原さんがこんな刺々しい言い方するの初めて見たよ。



「私は魔法少女ビショップ! そっちのルークと初代プリキュア的ペアを組んで戦ってるの!」



 あれ。おかしいな。一回だけほんの少し助けてもらったことはあるとはいえ、僕はこれまで一度たりとも心春と共闘したことがないんだけど。初めて魔法少女姿の心春に会った時はなんかスカート捲られてパンツ脱げと迫られただけだし、さっきのリーパー戦の時は君縄で縛られてよがってただけじゃん。



「その子は同性愛者じゃないから! 今すぐ開放して!」

「いいえ。この子は女の子が好きなんです。私の長年の勘がそう告げてます」


 二人とも間違ったことは言ってないけどね。ただ梶原さんが僕の性別を勘違いしているからおかしなことになってる。


 心春は大層苛立った様子で「そうじゃなくって……!」と言いながら地団太を踏む。


「あれ……?」



 直後、梶原さんは突然きょとんとした表情になり、不思議そうな顔で心春の顔をまじまじと眺める。



「もしかして……、天野さん?」




「「……っ!?」」


 僕と心春の顔が一瞬でひきつる。


「え、えっと。何言ってるのかな。私は……」

「天野さんよね? だって、顔も声も」

「こ、これは」


 狼狽する心春。これじゃあ正解を教えているようなものじゃないか。


「とにかく! ルークは連れて帰ります! さようなら!」


 言うが早いが心春は僕の手を引いてベランダにある箒にまたがる。


「腕引っ張られたまま飛ばれたくなかったら乗って!」


 血気迫った表情で言われ、僕は仕方なく箒の後ろの柔らかい部分に腰掛ける。


「しっかりつかまって!」


心春がそういうと、僕らの乗った箒は猛スピードで梶原さんの家から飛び去った。






 人気のない公園に降り立ち、僕はようやく心春の箒から解放された。あんな猛スピードで何十メートルもの高度を飛行する箒から飛び降りる勇気はさすがになかったの。

 周りに誰もいないことを確認してから僕らは変身を解いた。


「もう。なんなの心春」

「なんなのはこっちのセリフ。玲子の家に行く約束なんかしたと思ったら、あんなふしだらなことするなんて……っ!」


 あれ僕まったく悪くなくない? 僕だってだいぶ抵抗してたんだけど。

 なんか心春の魔法だとサーモグラフィー的に中の様子がわかるらしく、梶原さんの家の上で僕らが変なことしないか監視していたらしい。


「心春が入ってくる前に声が聞こえたのは? あれまるで心春が部屋にいるかのように聞こえたんだけど」

「あれは私の一番得意な魔法。声を狙った場所に届けるの。燃費はかなり落ちるけど物にも応用できるよ」


 遠くから炎の弓で援護してきたのもその魔法らしい。

 まあそんなことは大した問題じゃない。今はもっと重大なことがある。


「梶原さんに心春の正体ばれちゃったじゃん! どうすんのこれ!?」

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