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心春の性癖ってさあ……

「ルーク。君知ってたの?」


 帰り道、夜の町で自転車を漕ぎながら僕はルークに問い詰める。


「なんの話だ?」

「心春が魔法少女やってるってことだよ」

「知らなかったに決まってんだろ。まあ魔力の片鱗みたいなものは感じてたが、それは霊感のかなり強い人間とかわらないからな。お前があの女と会ったときはビショップの奴、常にあの女から離れたところにいたみたいだ。だから俺たちは気づけなかったんだ。逆にあの女には俺が見えるから、とっくに気づかれてただろう」


 あれ。そうなると夕方喫茶店で僕が長く席を外したことに怒ったのはおかしくない?


「ごまかしだろ。これまでの自分の言動からして、ここで怒らないのは不自然だと思ったんだ」


 確かに。あそこで心春がなにも言わずにニコニコ僕を迎えてくれたら、そっちの方が不気味だ。なにかあったのかと勘ぐってしまう。


「でもよかったな。あの女とちゃんと協定結べば、お前の仕事も少しは楽になるかもしれねえぞ」

「けどそのためには話し合わなくちゃいけないよね……」


 衣装に関する話がほんとなら、僕はあんなふりっふりの衣装を着たがってて、心春は露出願望があるってことになる。そんなえげつない性癖晒し合ってしまった今、普通に話をするのはあまりにも気まずい。


「気にすんなって。あの女だって、明日になったらけろっと話しかけてくるかもしれねえだろ」

「そ、そうかな……」

「そうだよ。だからお前も明日普通に話しかけてみろ。な?」


 もちろんそんなことあるはずもなく。


「……っ!」


 教室に入って、目が合うや否や、心春は目を伏せて教室から出て行ってしまった。




 授業中、ルークが「おい! 出動だ!」と当然のように話しかけてくる。


「そろそろ僕給料ほしいんだけど」

「んなもんあるわけないだろ。いっとくがみかじめ料徴収なんて考えるんじゃねえぞ!」


 男子トイレではなく人の来ない階段の踊り場で変身し、保健室に向かう。

 その途中でなにやらサイレンが廊下に鳴り響き、放送が入った。


『保健室で不審者が発見されました。生徒のみなさんは教室から出ることなく待機してください。教師のみなさんは、生徒の安全を最優先し、まず教室の鍵を閉めーー』


 さすがに今度は校舎内に怪人が出現したことと、学校に怪人が現れるのは二回目ということもあって、学校側も迅速に対応してくれているらしい。

 ありがたい。さすがにふらふらと近寄ってきた生徒を守りながら戦うのは、僕も骨が折れる。

 保健室に突入すると、なかは大層荒れていて、養護教諭のおばさんと樋口さん、そして心春がなにやら包帯でグルグル巻きに縛られていた。


 そして三人の前に立っているのは、全身に包帯をまとったミイラ男。


「リーパーだな!? お前何してやがる!」


 ルークにリーパーと呼ばれた男は、「待っていたぜルーク」と下衆びた笑い声を漏らしながら言う。


「さ、三人を離せ!」


 僕は無駄と知りながらとりあえず説得を試みる。


「そいつは無理な相談だな。解放してほしければ、オレを倒すがいい」

「二人が苦しそうでちゅ。早く助けてあげてください」


 ビショップが言う。え? 二人?

 よく見ると、樋口さんと養護教諭はぐるぐる巻かれた包帯に体をに締め付けられて苦しそうな顔をしている。しかし心春だけは服がはだけまくってる上、やたらと胸や腰つきを強調するような縛り方……亀甲縛りっていうのかな? それとも菱縄縛り?をされていて、なにやら少しばかり気持ち良さそうな表情で、顔を赤らめ他の二人とは違う意味で息を荒くしていた。



「リーパー、なぜその子だけそんなに卑猥な縛り方なんだ!」

「この子がそのほうが嬉しそうだったからな。サービス精神だ」

「うれしくなんか……っ! あっ……!」



 なにやらやたらとエロい喘ぎ声をあげる心春。

 彼女だけは放っておいてもいいかもしれない。


「ルーク、まずは今ここでお前を倒す! そしてその次はビショップだ!」


 リーパーの周りに浮遊する包帯の先端が突然鎌のような形になり、包帯部分が伸びる形で僕に向けて飛んできた。


「う、うわあ!」


 飛来する鎌は3つ。僕は慌てて廊下に出て避ける。鎌は保健室出口の扉にあたって地面に落ち、そのままリーパーのもとに戻った。


「あっぶねえ。ギリギリだったな」

「僕もこんなに体動くと思わなかったし、正直ダメな気がしてた」

「魔法少女になると体の能力だけじゃなくて動体視力や反射神経も上がるからな。次はもっと余裕をもって避けろよ」


「う、うん」


 それ言うの遅くない? 僕これまで全く気付かなかったんだけど。


「それはただ単にこれまでの敵が弱かったからだろ」


 まあ勝手に自滅してただけだしね。あいつら。


 今回の敵はなかなか厄介だ。先端に釜のついた触手であるかのように包帯を運用している。これじゃあ近づくこともままならない。遠距離からビームでなんとかしようにも、生身の心春たちを巻き込んでしまったら大変だ。


 そうこうしているうちに、今度はリーパーが五本の包帯を飛ばしてくる。もちろんご丁寧に先端が鎌に変化している。

 僕は到底撃ち落とすことなどできずに、廊下に出たまま保健室から距離を取ってリーパーの死角に入る。

 さあ、これで追尾できないはず……、というのは僕の甘い考えだった。

 保健室の前でうねうねしていた鎌たちは、そのうちひとつがこちらを向いたのを皮切りに、一気に僕のほうへと明確な殺意を持って動き始めた。

 なにあれ!? 包帯の先に目でもついてるの?


「いったん距離をとれ。話はそれからだ!」

「う、うん」


 僕はすぐ後ろにある階段を駆け上って二階へ。ここには職員室があるけど、どうか先生たちが出てこないことを祈るばかりだ。


「ルーク、さん……?」


 二階に上がった僕の目の前にふらりと現れる人影。それは僕に告白されてフったけど、のちになぜか魔法少女としての僕を好きになったクラスメイトの女の子、梶原玲子さんだった。


「か……っ!?」


 僕は「梶原さん!?」と言いそうになるのを咄嗟にこらえる。危ない。まじかる☆ルークが梶原さんの名前を知ってるはずがないんだから、絶対にここでそれをいうわけにはいかない。


「どうして一般の生徒がここに!? 危ないよ!」

「ご、ごめんなさい。けど、どうしても、あなたに会いたくて、教室を抜け出しちゃった」


 おろおろした様子で梶原さんがいう。その頬は、少しばかり赤かった。いつもクールな梶原さんが僕には決して見せてくれない態度だ。


 梶原さんってそんな情熱的な人だったの!? 僕に対して冷めた態度なのは僕が男で恋愛対象外だから!?


 今はそんな再び開いた失恋の傷に苦しんでる場合じゃない。ただリーパーを倒すだけじゃだめだ。梶原さんを守らなきゃ!

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