巨大ロボットを動かす電力はどこから来ているのか
「それで。どうだったんでしゅか? 優くんとやらと一緒に出掛けた感想は。満足できまちたか?」
とある一軒家の二階の部屋。二頭身のやたらと目が大きなピンク色の小動物然した謎の生き物は、ベットに寝転がる少女に向かって話しかける。
「あんまり……。優くんすぐに喫茶店から出て行っちゃったんだもん」
「あれは仕方ないでしゅ。ナイトライダーが近くの公園に出現したみたいなので」
「ビショップ。やっぱり間違いないのかな。まじかる☆ルークの正体が優くんだって」
「間違いありません。心春ちゃんだって見たでしょう。優くんに話かけるルークさんの姿を」
「うん……。あの水色の男の子がルークだよね」
「その通りでしゅ! あああの凛々しいお姿に乙女心をわし掴みにするあの声! 間違いなくルークさんで間違いありません!」
ピンク色の二頭身マスコットは脳内までピンクに染めながらごろごろと転げまわる。少女はそれを見てはあと息をついた。
ひとしきり悶絶したのち、ピンクの生き物は少女のほうに向きなおり、こほんと息を吐いた。
「とはいえ、今日アマゾンに変身を邪魔されて、大ピンチだった優くんをあなたは助けたじゃありませんか。あれは優くんだったからこそではありませんか」
「そんなこと……。ないもん。だれが相手でも助けてたもん」
「とはいえ、優くんだったから急いで迷いなく助けたという面もあるでしょう?」
「…………まあ、ね」
「優くんに正体を明かさないのですか?」
「まだ考えてないよ。そんなの」
「早くしてください。あたくしは一刻も早くルークさんといちゃいちゃしたいので」
「知らないよ……。勝手に行って来たらどうなの」
「そうもいきません。契約が結ばれてしまった以上、あたくしは心春ちゃんからあまり離れることができないのです」
「それはそうと、例の……、フェアリールージングのアジトを突き止めるっていう作戦は成功したの?」
「もちろんでしゅ! あとでジュエルフォンに住所を送りましゅ。優くんと結託して、アジトを攻め落とすのです!」
「そこをつぶしたら、終わるんだよね。魔法少女としての役目も終えて、ビショップは願いを叶えてくれるんだよね」
「当然でしゅ。そういう契約でしたから。心春ちゃんの『優くんと付き合いたい』という願いは、きっちり叶えてあげましゅ!」
♦ ♦ ♦
「Dr.キング。大変申し上げにくいのですが……。ナイトライダーとアマゾンが、ルークにあっさりとやられました。またしも、キング様から頂いたにも関わらず、です。大変申し訳ございません」
場所はフェアリー・ルージングアジト。巨大な倉庫のようなコンクリートに囲まれた広い空間で、全身タイツを着た男が、髭を生やした爺に恐る恐るといった様子で報告をする。
「くっくっく。役立たずの妖精どもなど、どうでもいいわ。それよりも、見るがよい!」
老爺は何やら黒い垂れ幕を掴み、思い切り引きずりおろす。するとそこには、巨大な二足歩行と思わしきの人型ロボットが現れた。
高さはおよそ五十メートル。黒光りし圧倒的な質感を放つそれは、ただただ静かに倉庫の田舎に鎮座していた。
「これがわしの究極の発明! その名は『バスター』と『ガン』を合わせ、『ガンバスター』じゃ!」
「あの。Dr.キング。大変申し上げにくいのですが……。それはかなりまずいのでは」
「なぜじゃ! わしの発明した超合金αを使った究極のロボットに、なにか文句があるというのか!」
「いや、そうじゃなくて……。ネーミングが非常に問題あるというか。その合金の名前もかなりまずいと思うのですが」
「文句の多い奴じゃの。ちゃんとほかの名前も考えておるわい。我らフェアリールージングは必ずやこの地球の支配者になる。このロボの力によってな。それにふさわしい名を考えたわい。聞いて驚け。その名も『ジ・アース』じゃ!」
「だめです。それも同じ理由でだめです」
「わけのわからないことを言うでない。……まあいいじゃろう。今、試運転をするところじゃ。見ておれ。そして感服するがいい。このロボットのあまりの完成度の高さに、そしてわしの研究者としての力にな!」
キングと呼ばれた老人が何やら端末を操作すると、ロボットの全身いたるところにつけられたランプに光が灯り、大きなモーター音が鳴り響き始めた。
その瞬間、倉庫の電気が消え、空調が止まる。ロボットの灯りも消え、動きが止まった。
「な、なにが起こっている! 敵襲か!?」
うろたえるキング。アジトの中は、みなパニックを起こし始める。
「ルークやビショップが攻めてきたんだ!」
「急げ! 今クイーン様はいない! 急いで守りを固めろ」
アジト中が大きな喧噪に包まれる。
電気が消えたのは、巨大ロボットを動かすのに電気を使いすぎてブレーカーが落ちたためだと彼らが気づくのは、数時間先の話。