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敵の目の前で変身したら変身中に攻撃を受けた話

 その後、僕は特にこれと言ってクラスメイトにウザがらみされることなく午前の授業をやり過ごした。


 なんか、クラスメイトの会話を聞いていて、近所の銀行とスーパーで強盗を撃退した魔法少女、とやらの噂を耳にはさんだ。


 へえ。それは確かにセンセーショナルな事件だね。話題になるのもわかる。


 それにしても、いくら強盗を撃退したとはいえ、そんな格好で人前に出るって恥ずかしくないのかな。


「お前やっぱすげえな。半分くらいの生徒がお前のこと話してるぞ」


 昼休み。授業中は窓際で昼寝していたルークが、ふわふわと僕のもとに近寄ってきて言う。


「いや、僕としては話題にされると困るんだけど」

「それはしょうがねえだろ。あんな痛々しい格好で暴れたらさ」


 君がやらせたんじゃないか! ていうか痛々しいってわかってるならコスチューム変えてよ!


 大声で叫びたかったけど、ルークの姿は皆には見えないから、僕は端から見れば一人で会話してる頭のおかしい人にしか見えない。さすがに教室で一人虚空に向かって叫ぶのは、いくらクラスメイトになんの情も持っていない僕でもさすがに憚られる。


「それは無理だって言ったろ。そういえば、あの女いねえな」

「あの女って?」

「ほら、あの委員長とか言う」


 ああ、心春か。別にいいじゃんいなくたって。トイレ行ってるだけかもしれないし。


「それはそうなんだが……。俺、あいつのことが少し気になるんだ」

「なに。妖精でも人間に恋するの?」

「そういう意味じゃねえよ。ただ、あいつからなんだか普通の人間とは違う匂いがする」


 ルークはなにを言ってるんだ。心春は僕の幼馴染み。なんら怪しい点なんてないよ。


「いや、あいつ自身は普通の人間だと思うんだが、あいつのオーラというかなんというか……」


 まあ確かに変人ではあるけどさ。だからって人外生物に普通じゃないとまで言われる謂れはないと思うんだ。


「ん……?」


 その時、突然ルークが真剣な表情を見せる。

 あ、嫌な予感がする。ルークがこれまで唐突に真面目な顔をするときってたしか……。


「優。怪人だ。怪人が現れた。ここからかなり近い。おそらく学校の中だ」

「やっぱりか……」

「よし、いくぞ。優!」

「やだよ。さすがに学校のみんなに顔見られたら一発で正体ばれるし」

「そこはお前が気を付けてればいいだろ! あんまりゴタゴタ言ってると、今この場でお前を無理矢理変身させるぞ」

「お願いそれだけはやめて」


 さすがに今この場で変身させられるのはたまらない。僕は渋々立ち上がり、ルークの「こっちだ!」という声に従って教室を後にしたのでした。

 

  その後、僕はルークによって校舎の裏手駐車場に連れていかれる。


「いやがった……っ!」


 ルークの目線の先。そこには頭が草木で覆われ、なにやら蔦のようなものを振り回している大男が立って何やら先生たちの車を攻撃していた。。


「アマゾン! お前こんなところで何してやがる!」


 ルークの声で、大男はこちらに気づき向き直る。


「おうルーク。久しぶりだな。裏切者が今度は人間を連れてお出ましか?」


 アマゾンとやらはそう言いながら下種びた笑みをこぼす。


「ああ、その通りだ。それより質問に答えやがれ。お前何やってるんだ」

「さあな。俺は上からこうしろと命じられてるだけで、何の目的かは知らねえ。最も。知っていたところでお前には教えないがな」

「まあいい、優。変身だ!」

「う、うん」



 僕はジュエルフォンを取り出して「変身!」と叫ぶ。僕の体はいつものように光に包まれた。





「どうした! 隙まみれだぞ! ルーク!」






 その瞬間、僕の鳩尾に強烈な衝撃。光は消え、僕はジュエルフォンと共に後ろに弾き飛ばされる。そのまま僕の体は繁みにぶちまけられた。


「な、なにが起こったの……?」


 僕は何がなんだかわからず狼狽してしまう。


「アマゾンのやつ、お前が変身してる隙を狙って攻撃してきやがったんだ!」


 え。普通魔法少女の変身中って相手は空気読んで攻撃してこないものなんじゃないの!?


 変身してポーズを取って戦闘態勢になるまで一分以上かかる番組も多い。それまで敵はなにをしているか疑問に思っていたけれど。現実では普通にその間で攻撃してくるのね。


「まあテレビと現実じゃ違うってこった。中には変身中は無敵バリアーを出せるやつもいるみたいだが。お前にはまだそれは無理だしな。それにしても、なんて卑怯なやつだ。変身前で丸腰のこちらを狙ってくるなんて」



「おいおい。ルークさんよお。お前らだって決め台詞途中のナイトを攻撃したんだから、卑怯だといわれる筋合いはねえぜ」




「…………」

「………………」


 どうしよう。正論過ぎて声も出ない。




「自分は平気で卑怯なことをやってのけるくせに、人のことは責めるのか? ちゃんちゃらおかしいぜ。人のふり見て我がふり直せ! 他人にされたくないことは自分もするな!」




「…………」

「…………」


 まずい。悪の組織の怪人によって、僕もルークも完全論破されそうになってる。魔法少女としてあってはならない失態だ。いや僕には別に魔法少女としてのプライドがあるわけじゃないけどね。


「大体お前らはなんだ。そんな格好しやがって。不効率だろ。媚びている自分が恥ずかしいと思わんのか。第一……」


 何やら説教を始めたアマゾン。そのとき、僕の背後から熱い何かが飛来して、僕の腕を掠めたのちにアマゾンの足元に刺さった。


「うおっ!?」


 アマゾンは慌てて飛びずさった。


「矢……?」


 飛来したそれは、燃え盛る弓矢に見えた。矢はその炎によってアマゾンの足を少しばかり焦がしたようだ。


「貴様、多対一とは卑怯だぞ!」


 そう言うアマゾンのもとに、再び弓が飛んでくる。どうやら回避するので精一杯になっているらしい。


「なんかよくわかんねえがチャンスだ。今度こそ変身するぞ!」

「う、うん! 変身!」

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