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第5話 さすがの俺も怒るよ!

 俺はボッコボコにされていた。


「やめ――やめるのだ村人よっ!」

「うるせぇっ!!」

「痛っ、ぶ、ぶったね!? 父上にもぶたれたことないのにっ」

「黙れ!! このっ」


 自警団の皆さまがたはハーフエルフの少女ヒルデにいいところを見せようと張りきっちゃってるのか、それはそれはもうボッコボコに殴る蹴るの暴行を加えてきていた。


 全身がちょー痛い。

 父上にも殴られたことないのに。

 ひとしきり痛めつけられた俺は、自警団のリーダーっぽいオットーにズルズルと引きずられてどこかへと運ばれる。


 まさか本気で獣のエサにしないよね?

 手足バラしたりなんてしないよね?

 そんなことしたら、いくら温厚な父上だって村ごと滅ぼしちゃうよ?


「オラ! ここで大人しくしてなっ」


 そう言って俺は小汚い小屋へ閉じ込められてしまった。

 なんかちょー臭い。

 ブヒブヒいってる変な生き物もいるし。


「逃げようとしたら、こんどこそ本当に殺してやるからな」

「…………」

「へっ、言葉もねぇか。これからてめぇをどうするか話し合って決める。腕一本ぐらいで済むように祈ってるんだな」

「腕……いっぽん?」

「ぁん? んなの決まってんだろ。こうだよ、こう(・・)


 オットーが左手で手刀チョップをつくって、右手をとんとんと叩く。

 まさかとは思うけど、右腕を切り落とすって意味じゃないよね?


 そんなことしたらさすがに怒るよ。

 処すよ。


「言葉もねぇか。けっ、ガキだろうと悪人にゃ容赦しねぇからな。覚悟しとけよ!」


 そう言い残して、オットーは出ていった。

 閉じられた扉の向こうには、ひとの気配が残っている。

 見張りがいるってことなんだろうな。


「まいったなー。どうしたものか……。でも、まずは――ヒール(回復)


 眩い光が俺の全身を包み込み、傷があとかたもなく消えていく。


「ふぅ、やっと痛みがとれた」


 俺は回復魔法で傷を癒し、これからどうするべきか考えた。

 ブヒブヒいってる生き物に匂いをかがれながら考えた。


 ここから逃げるのは簡単だろう。

 ちょいと本気を出して見張りをどうにかして、屋敷へ戻ればいいだけだ。

 でも、その場合双方に遺恨が残ってしまう。


 特に俺なんか父上にもぶたれたことないのに、村人にボッコボッコにされちゃったからね。

 それに一軒家には師匠からもらった異世界のいろんな物もあるし、なんとしても失うわけにはいかない。


 うん。ここは身分を明かして円満解決を図るしかないな。

 俺を執拗なまでに痛めつけてくれたオットーは軽く処すことになるかも知れないけど、それが一番よさそうだ。

 そもそも、俺に濡れ衣を着せた野盗たちも連行しなきゃだしな。


 俺がそう決意した時、ちょうどブヒブヒ小屋の扉が開いた。

 オットーが戻ってきたのか?


「あのー……大丈夫、ですか?」

「君は……」


 振り返ったさきにいたのは、ハーフエルフの少女ヒルデだった。

 ヒルデは扉をちょっとだけ開けて、窺うような目でこちらを見ている。

 その後ろでは、見張りらしき男が殺意のこもった視線で俺を見据えていた。


「その、オットーさんも自警団のみんなもやりすぎたような気がしたから、生きてるかな、って思って……」


 ヒルデは俺の生存確認をしにきたってことか。

 誤解とはいえ、自分にひどいことをしようとした相手を心配するなんて、優しい女の子じゃないの。

 できればその優しさをもっと早くだしてほしかった。


「ああ。俺は無事だ。ちょうど傷を癒したとこだしな」

「傷を……?」

「魔法でな。それよりヒルデ、君に話しておきたいことがある」

「話……?」

「そうだ。話だ。なにやら誤解しているようだが、俺は君が野盗に攫われそうだったのを助けただけだぞ」

「野盗? え? うそ……」

「ウソではない。疑うというのであれば、森にいってみるといい。君を攫おうとした野盗連中を拘束しておいた」


 俺の言葉を聞き、ヒルデの顔色がみるみる変わっていく。


「そこの見張りの男。聞いていただろう。誰か森にいかせて確認してくるといい」

「――っ」


 見張りのひとりが、隣にいたもうひとりと頷き合い駆けだして行く。

 俺の言葉が真実か確認しにいったのだろう。


 しばし時がたち、確認しにいった男が戻ってきた。

 オットーを筆頭に、自警団の皆さま方も一緒だ。


「……どうだった?」


 オットーが問い、


「首だけだして埋められてた男たちがいた。全員見たこともない顔だった」


 確認しにいった男が答える。

 そして俺に集まる皆さま方の視線。


 俺はこの場にいる全員の視線を浴びながら、貴族らしく背筋を伸ばし、胸を張ってこう言うのだった。


「さあ、村長を呼べ」

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