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第6話~岩と重力

 

 僕とナギは山にいた。

 山の大きさは、ちょっとした都市一つ分とかなり大きい。

 そのため、方位磁石などの登山道具を持たずに入山すると、道に迷い挙句の果てに死んでしまう者もいるとのこと。

 

 さらに、この山には熊や鹿、さらに怪物も住んでいるため、生物の死骸は何一つ残っていないそうだ。



「……それで、どうすればいいのでしょうか?」

「うん、僕もそれを考えているけど、やはり、水の流れを探して遡るしかないと思うんだよね。だから、まずは川を探そう」

「そうですか、でも、この山は広すぎて、どこに川があるのかを探すだけで、かなりの時間がかかりそうですね……」

「そうだね、まあ、だから報奨金がFランク依頼なのに割高な理由みたいだけど……でも、川ならもう見つかったよ」

「えっ! 本当?」


 僕はナギに対して、嘘をついたことなど一回もないのに、事あるごとに疑われているような気がする。

 これは、僕の行動や言動を怪しく思っているのか、それとも、ただ単にナギが用心深いだけなのか。

 まあ、でもこれだけ、疑い深いなら、何かの宗教勧誘や、詐欺などには引っかからないかな。


「それで、どこに川があるの?」

「川なら、足元にあるよ」

「え? これって、ただ単に水が少し流れているだけじゃないの?」

「うん、確かにそうだけど、でもこれを遡れば、見つかるはずだよ」

「え、どうして?」

「……実はさ、ここってもともと川があった場所なのさ。大きな白い木が三角形のように三本立っている近くに川が流れていたそうだからさ、ここが、元々川があった場所で間違いないはずだよ」

「ということは、この水を遡れば、原点にたどり着けるってことね」

「そういうこと」


 まあ、たどり着けたところで、なんで水が来なくなったのかを発見できなければ、報奨金は一円たりとももらえないが。

 ……まあ、そんなことを今、ナギに言っても仕方ないか。

 それに、どうせ、水が流れてこない理由なんて、水源が枯れたか、何かで水流が塞がり、別の方向に流れているだけだと思うし。

 

 何も心配する必要はないはずだ。





 ――と、僕は思っていた。

 だが、それはどうやら、間違いだったようで。

 頂上付近の、川へと流れる水脈。

 その入り口には、岩が置かれていて、水がほんの少ししか流れてこなくなっていた。

 それも、とてつもない巨大な岩によって。


「これは……どうやって」

「こんなの、普通に考えれば無理ですよ。それこそ、なんらかの力が働いたとしか思えない」

「不思議な力って、能力のことか?」

「それはわからない。でも、これほどの巨大な岩を、山の頂上に持ってくるなんて、不通に考えて不可能に近いと思うの」


 確かにナギの言う通りか。

 僕は、この世界に来てから、幾多も驚いてきたが、これは常識を遥かに超えている。

 人間でこの岩……十tはありそうな岩を持ってくるのは流石に不可能だと僕も思う。

 それこそ、何か、別の原因があったと考えたほうがいいかもしれない。

 でもだとするなら、何が起きたんだ。


「まずは、この岩を壊せないか、色々と試してみるか」


 と、僕は武器屋で購入した、ダイナマイト型爆弾を岩の側に置き、そして導火線に火を付けた。

 

 直後、僕たちから数m離れた岩の付近で爆発する。

 その威力はとてつもなく、強大な爆音と爆風が僕らの側を駆け抜ける。


「うわぁああああああああああああ」

「いやぁあああああああああああ」


 と、僕とナギはあまりの破壊力に驚き、そして叫んだ。

 だが、その叫び声も爆音に遮られ、何も聞こえない。


 そして、爆発してから数秒後、爆発は終わった。


「な、ナギ? 大丈夫か?」

「うん、なんとか」


 未だに爆音により、耳が聞こえづらいが、なんとかセーフみたいで、辛うじて、鼓膜は破れなかったみたいだ。

 とはいえ、ずいぶんと危険なことをしてしまった。

 今度からは至近距離で爆発させるのは止めておこう。


「あれ?」

「どうかした?」

「あ、あれ?」


 と、僕はナギが驚く先――巨大岩を見てみると、そこには、傷一つ負っていない姿がそこにあった。

 

「うわあ、これはずいぶんと丈夫な岩だね」

「いや、そうじゃなくてね」

「うん?」


 確かに爆発で傷一つ負っていないのには驚いたが、でも、そこまで驚くほどではないと思うけどな。


「確かに、岩の頑丈さは凄いけど、でも」

「あ、あれ……目があるの……」

「目がある?」


 目があると言われても、何がなんだかという感じで訳が分からない。

 だが、ナギが指さす方をじっくりと見てみると、岩の窪みに、確かにそこには、でかい眼球があった。

 そして眼球はグルグルと動き、僕らを凝視していた。


「あー、うん。確かに目だな。ということは、こいつは岩で無くて、生物だったのか?」

「そうかもしれない……というよりも絶対そうだよ!」

「でも、さっきまで無かったよな……ということは、爆発で目が覚めたってことなのか? それとも、気づかなかっただけ?」

 

 どちらにせよ、僕たちがとんでもないことをしたということだけは確かだ。

 ダイナマイト型爆弾により、攻撃されたと勘違いをしていなければ、いいのだが、残念なことにそう思っているようで。

 

 巨大岩――いや、大きな怪物は、少しずつだが大きくなっていく。

 

 どうやら、怪物は体を丸めて寝ていたようで、動くたびに足が出て、羽が出て、そして最後に大きな顔が僕らを睨み付けながら出してきた。

 その姿は、とても恐ろしい。

 足のつめや牙は鋭く尖り、全身を硬そうな鱗で覆っている。


「ナギ! こいつが何かわかるか!」

「うん、おそらく、竜だよ!」

「竜? それって、どれくらいの危険ランクなの?」

「種類によって、実力は大きく異なるけど。最低でも、Sランク以上の化け物だよ!」

「……S……以上……」


 Sランク以上? 

 確か、この世界最強の人間ですら、Sだったな。

 ということは、その人たちに匹敵する強さということか。

 ……いや、今、ナギは最低でもS以上と言った。だとするなら、こいつは、この世界最強の怪物だということなのか。


「なんで、こんなところに、竜なんているんだよ!」

「わからない! でも早く逃げないと! 殺されちゃう!」


 ほんと、不幸だ。

 ただの巨大な岩だと思っていたのが、実は、S以上の竜でしたって。

 最悪な展開だ。

 それにしても、なんで、こんな何てことない山の頂上に寝ているんだよ!


「くそっ、時空停止」


 ひとまずは、逃げるしかない。

 隣で時間が止まったナギを担いで、急ぎ竜と反対方向へと、突っ走る。

 途中、木々が体中にぶつかり、ひっかき傷を出来て、とても痛いがそんなの竜に殺されることに比べれば、たいしたことが無い。


 そして、竜から離れることに成功して、ため息をつく。


「なんとか、逃げられたね!」

「いや、あれ!」

「え? うわぁああああああああああっ!」


 直後、僕たちのすぐ側を高温の炎が凄い勢いで通り過ぎていく。

 そして、後には、燃え尽きた灰だけが残された。


「い、今の何!」

「竜の息吹だと思う。竜しか使えない攻撃のはずだし」

「ということは、今の炎は僕らを殺すために、山の頂上から放ってきたということなのか。なんだか、とんでもないモノを敵に回してしまったね……」


 世界最強の怪物種だというのも、頷ける。

 おそらく、羽があるということは、空を自由に飛べるのだろう。それに加え、鋭いカギ爪、尖った歯。

 さらに、一瞬で灰にさせるほどの、強力な息吹。

 これは、勝てるわけがない。

 喰鰐とは比べものにならないほどの強さだ。

 流石にBとSの差はとてつもなく離れているということだろう。

 さらに、このまま村に戻れたとしても、最悪の場合、村が竜によって壊滅させられるかもしれない。

 

 村の人たちは人当たりのいい人ばかりだった。

 それに、あの人たちは何も悪くない。

 悪いのは、爆弾で竜を怒らしてしまった僕たちだ。


「どうしよう! 勝てる気もしないし、何も良いアイデアが思いつかない!」

「わ、私も! 何も考えられない!」

「「ど、どうしよう――」」


 と、どうすればいいのか、もう判断も出来ず。

 途方にくれる僕らの前に竜は降り立った。


 竜は、大きく口を開けている。

 そして、ゴボゴボと何か液体が沸騰するような音が聞こえてくる。

 そして、竜は大きく開いた口を閉じ、


「グラァアアアアアア」


 竜が吠えるだけで、僕らの周りにはとんでもない、爆風が吹き、同時に竜の音により、僕らの頭にとてつもなく痛い激痛が走る。


「ぐはっ!」


 あまりの痛みに、僕らはどうしようもなく、その場に倒れた。

 さらに、竜の叫び声により、体中が痺れてしまい、指一本すら動かすことが出来なくなった。まさに金縛り状態だ。


「っ……」


 声も出せないため、時空停止が使えない。

 それに、指も動かないから曲弦師で竜に攻撃することも出来ない。

 

 それだけ、僕らと竜の間には戦力差が広がっていた。

 ……竜はそんな、僕らを笑うように鼻から炎を吹き出した。

 そして、ゆっくりと口を開けていく。

 竜の口内を見てみると、そこは赤い光で輝いていた。


 ああ、これがさっきの息吹か。

 僕らは、これから焼かれて骨一つ残らずに死んでしまうのだろうか。

 そう、考えると、今までの人生は走馬灯のように浮かんでくる。


「―――」


 とはいえ、浮かんでくるのは、ここ数日の出来事ばかりだ。

 そこでは、ナギが笑っていたり、泣いていたりしていた。

 たかが、少しの期間。

 それでも、僕の中にナギが居た。


「っ……ぁ……」


 なんとか、ナギだけでも助けようとはするが、声もこれ以上でない。

 なす術なしだ。


「グラッァガアアッ」


 だが、いつまで経っても竜は僕らを殺そうとはしてこない。

 むしろ、僕たちとは反対方向を向いていた。

 そして、先ほど僕たちに見せた威嚇など比較にならないほど、どでかく吠え、そして息吹を放った。


 それにより、山の木々は燃えて、灰となる。


 だが、奇妙なことに一か所だけ、灰とならずに無事だった場所があった。

 そこには、全身に金属でできた防具を身にまとい、そして、一太刀の大きな刀を背負う女性の姿があった。

 その、女性は、背から刀を取ると。


「ハアァアアアアアア」


 と、叫びながら、物凄い勢いで竜に突っ込んでいく。

 だが、竜はそんなの意に介さず。


 両羽を地面に叩きつけ、その反動で宙へと浮き。

 そして、一気に数十m上空まで、駆け上った。


「はあっ、これだから、空を飛ぶ生き物は嫌だ。剣をいくら振っても届かないし、それに、あいつは高いところから自由自在に攻撃できるしさあ」

 

 と、女性は持っていた剣を地面に向かって放り投げた。

 そして、右腕を竜に向かって伸ばしていく。


 でも、空を悠々と飛ぶ竜には届くはずもなく、そしてある程度まで伸ばすと今度は、拳を握りしめて、腕を思い切り地面に向けて振り下げた。


 いったい、なんのつもりだ?

 と、思ったのもつかの間。


「グラァアアハアアッ」


 竜は、突如、地面へと落ちていく。

 ……だが、どこかおかしい。

 羽は、今まで通り動いているのにも関わらず、なぜか、竜の体は少しずつだが地面へと落ちていく。

 そして、とうとう地面へと降り立つ――だけでは無く、さらに竜の体が少しずつ小さくなっていく。

 頭は首を垂れるようにし、羽も折りたたむようにしていく。


「ハハッ! これでは天下の竜でも動けないでしょ! 竜というのにこんな惨めに負けるとはだらしない。お前はこれを恥じながら死んでいけ!」


 女性が叫ぶとさらに、竜の体が小さく――いや、丸めて最初の岩みたいに戻っていく。

 だが、さらに竜は縮んでいく。

 竜の体からは、ギシギシといった何かが折れるような音が聞こえ、さらに突然竜の体中から赤い液体が飛び出してくる。


 そして、とうとう竜は断末魔をあげて死に絶えた。

 

「君たちは怪我していないかい?」


 と、女性は地面に放り投げた刀を持つと、僕らの方に来てそう言った。


「は、はい。おかげさまでなんとか……」

「ありがとうございました、ジュウゼン様」

「いやいや、これも我の任務だからな。君たちにお礼を言われるようなことではないさ」


 なんだか、さっきと口調が変わりすぎて、変な感じだ。

 さっきは、戦闘モードにでも入りすぎて、集中していたからなのかな。


「それにしても、君とはどこかで会ったような気がするのだが?」

「迷宮模擬攻略施設で、無限増殖が大量発生したときだと思います」

「無限増殖……ああ、思いだした。君は、A級騎士、ハルリアの妹か?」

「はい、そうです」

「なるほど、道理で会ったような気がしたわけだな。それで、そちらの君は?」

「時宮颯太です。ナギとはコンビを組んでいて、迷宮に挑戦しようと思っています」

「ふーむ。なるほど、ナギは、また迷宮に挑戦をし始めたというわけか……そいつは、ナギの能力を知っているのか?」

「はい。でも、颯太は、見かけほど悪い人ではないですよ?」


 と、僕を何気なく褒めてくれつつ、毒舌にも言ってくる。

 ナギが悪気なく言っているのはわかるけど、それでも、若干傷つくなあ。


「へえー。俄かには信じられないな。錬金術師の力目当てではないというのは本当なのか、少年?」

「はい、そうですよ」


 またもや、錬金術師としてのナギを手に入れるために近づいたと勘違いしているようだ。

 なんだかな、どうして皆がみんな、ナギに近づいた理由が金目当てだと思うのだろうか?


「じゃあ、君の本心を聞かせてもらおうか……心理操作」

「はい?」



 ――――……。





 気が付くと、僕は地面に倒れていた。

 確か、ナギの力目当てで近づいたのか聞かれた後、ジュウゼン様が心理……操作? みたいなことを言った後……その後のことを思いだせない。

 周りを見てみると、そこにはナギが居るだけであり、ジュウゼン様は既に居なくなっていた。


「あれ? 僕はどうして、倒れていたの?」

「うん、ジュウゼン様が、颯太が私に近づいた本当の理由を調べてやるとか言ってね、颯太の頭の中を調べたせいで、頭がパンクして倒れちゃったの……」

「なるほど、そういうことか……それで、結果は?」

 

 勝手に頭の中を覗かれたというのは、とても恥ずかしく、嫌なことだが、これで、疑いが無くなるというのなら、それはそれでいいか。


「うん、ジュウゼン様によると、颯太は、私の能力目当てでは無くて、本当に自分と同じ境遇の能力者を助けたかっただけだって、言っていた」

「ふーん、まあ、本当のことだしな、それで他には何か言っていた?」

「うん。そして、颯太は私のことを、す……」

「す?」

「えーとね、やっぱり、なんでもない」

「えー、なんだか、気になるよ?」

「ごめんなさい。これ以上は私の口からは……」


 そう言うと、ナギの顔は真っ赤になっていく。

 そして、目は泳ぎ、とても困り果てている。


「……ナギが嫌なら無理して言わなくてもいいよ!」

「……ごめんね!」

「ああ、もう、気にしてないから! それよりも、依頼はどうなるのだ? 竜が原因だとは調べたけど、解決したのはジュウゼン様だから、もらえないのかな……」


 ほんと、微妙な所だな。

 確か、依頼内容は、川の水が流れてこなくなった理由を探すこと。

 そして、解決できれば、さらに報奨金は上乗せするとかのはずだ。


 ということは、原因を発見したのは僕たちだから、その分は貰えるのかな。


「えーとね、そのことについてなら、ジュウゼン様はあなたたちに全てあげるって言っていたよ」

「本当?」

「うん、私が颯太に嘘をついたことなんて無いでしょ!」

「あ、確かにその通りだ。ごめん、ナギ」

「いいよ!」


 なんだか、良い人だな。

 それにしても、ジュウゼン様とナギは知り合いみたいだったな。

 確か、無限増殖のときに会って以来とか。


「あれ? ジュウゼン様ってなんだか、強すぎるとは思っていたけど、もしかして破壊神=ジュウゼン様なのか?」

「あれ? 気づいていなかったの? てっきり気づいているのかと思っていたのに……」

「ああ、道理で、竜が不自然に落ちてきたと思ったら、潰されたわけだ。あれは破壊神の能力、重力操作だったのか……でも、そういうことは、破壊神はその他にも、精神操作もできるということか……」

「あの人も、颯太と同じく多数能力を持っているからね……それこそ、七個くらいは持っているはずだよ?」

「七個! それってすごいな。いや、もしかして、S級になるにはそれくらい、能力が無いと無理なのかな?」

「A級なら、能力は関係ないですが、S級ともなると、そうかもしれないです」

「それだけ、S級とA級の差が凄いということか――」


 確か、前聞いた話では、もう一人のS級能力者のコクトは最多の十の能力を使うとか言っていたな。

 ということは、やはり、この世界では無能力者では限界があるということか。

 それこそ、能力者有利の世界という訳だ。


 だけど、能力と単に言っても、ナギみたいな、回復能力や僕の時間停止みたいに、能力にも、色々な種類があるから、能力を持っているからと言っても、攻撃は苦手な人も居るという訳か。


「そういえば、この世界で最強の能力って決まっているのか?」

「最強の能力ですか? ……やっぱり、ジュウゼン様の重力操作ですかね。あれほどの、攻撃力を越える能力は今まで聞いたことが無いですし」

「ふーん。ということは、十の能力を扱うコクトよりも強いってことなのか?」

「うーん……それは違うかな……」

「え? どういうこと?」

「確かに、ジュウゼン様が、使う重力操作はとんでもないけど、でも、はっきり言えば、それ以外には、強力な攻撃能力は持っていないはずなの。だから、総合力では、コクトのほうが上かな」


 能力では、ジュウゼン様が上だが、総合力では、コクト様が上なのか。

 ということは、一つの能力だけでは、強さは判断できないということか。

 コクト様が持つ他の能力を含めれば、総攻撃力に関してはジュウゼン様よりも、コクト様のほうが、強大ってことか。


「おっと、そろそろ日が暮れそうだし、早く村に戻った方がいいかな?」

「あ、そうですね。話している間に、ずいぶんと時間が立ってしまいましたね……」

「それで、竜の死体はどうすればいいんだ? 焼けばいいのかな、それとも、地面にでも埋めたほうがいいのか?」

「うーん、そうだなあ」


 と、ナギは言いながら竜に近づいていく。

 そして、右手を竜の眼へと伸ばしていく。


 グチャグチャ。


 ……なんだか、とてもグロテスクなことが目の前で起きている。

 ナギは平気なのだろうか?



「……」

「――よし! とれた!」


 と、しばらく、待っているとようやく、作業が終わったのか、ナギは僕の方へと戻ってくる。

 そして、右手には、竜の眼を持っていた。

 だけど、なんだかおかしいな。


「ナギ? それって眼……だよね?」

「そうだよ?」

「でもさ、なんだか、それ、宝石に見えるけど……」

「えーと、言ってなかったからわからないと思うけど、竜の眼は宝石で出来ているの」

「なるほど、だから、ナギは眼を……取っていたのか……」

「うん! これで、旅の資金源に出来るでしょ?」


 笑いながらナギは言う。

 だけど、手は血で汚れているし、先ほどまで機能していた眼――宝石を持っていて、なんだか、ナギが怖く見えてきた。


「……手を洗ったほうがいいよ」

「うん、そうだね。でも、どこで洗えばいいのかな?」

「そういえば、水がないのか……って、そういえば、山の頂上の水源はどうなったんだ?」

「そういえば、そうだね。確か、水源を竜が寝ていて塞いでいたはずだから、今ここに竜が居るということは……」


 僕たちは急いで、山の頂上へと向かった。



―――――――。



 そこに、着くと、いつの間にかに、大きな池が出来ていた。

 そして、池の一部が、渇いた地面の上を滑る様に流れていく。


「どうやら、依頼成功みたいだね!」

「うん! やっぱり、竜が水脈を防いでいたね」


 そして、僕らは山を下り、依頼所へと向かった。


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