表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
蜂蜜姫  作者: 竜胆
2/4

2 招待状です。 


 「表に出ろ。決闘だ。」

静かな声は、目の前に座る男からもたらされた。

クリスはにやりと笑ってそれに返す。

「こんなでも一応“王子殿下”なんだが? 決闘の意味は解って言っているのか?」

カップを置いて足を組み直すクリスに、目の前の学友は冷めた青い瞳をきらめかせる。

「リーリィに触れた。」

・・・ぐはっ。

妹に触れたから、と友人に決闘を申し込む兄などいるものか。

いや、まぁ目の前に居るが。

それがまた自分の学友で、“氷の貴公子”と呼ばれるアルベルトからもたらされているという事実が、クリスには愉快で仕方なかった。しかしここで盛大に笑ってしまっては、最悪友情にひびが入る事は必至だ。

それは避けなければならない。

何より、あの少女に会えなくなるではないか。

「挨拶だろう?お前だってしてたじゃないか。」

「私は兄だ。お前は他人。」

・・・それってどうよ?

一歩間違うと、それこそおかしいだろうが、とは言えない。・・・言いたいが。

クリスは沢山の言葉を飲みこんで、とりあえず謝罪をした。

「悪かった。うちには妹なんぞいないからな。」


獅子王の子は三人。全てが男児。


歴代の王は後取り問題で複数の側室を持つことは当たり前だったが、今代の王はそれを拒否した。

『ランカ故に結婚したのだ。ランカ以外はいらぬ。今後側室などと俺に言ってくる奴は、二度と陽の目を見れぬようにしてやる。』

そう言って全ての話を退け、実際に“自分の娘を側室に”と言ってきた貴族は出入り禁止になったし、ランカを中傷した娘は牢へ入れられた。

獅子王の本気が解り、またすぐにランカが懐妊したこともあって、そんな話も消えてなくなったのだ。

『心配せずとも、此処に居るは男子だ。』

大きくなりつつあったお腹をさすりながら、臣下へと言葉を掛けたのはランカ妃その人だった。

その言葉通り、元気いっぱいの男の子を出産したランカは、生まれたばかりの男の子に剣を授けた。

ナースルーの伝統行事である、“誕生の儀”。

生まれた子に贈る剣は、その子を守る護法と剣の上達を願う祈願が込められた、親からの一番最初の贈り物である。それは庶民であろうと貴族や王族であろうと、何ら変わりない行事である。

“武の国”と呼ばれたナースルーならでは、である。

「・・・いや、悪い。ちょっと・・・。」

その剣はいつも傍らにある。

今もクリスの腰にある。

よく地位ある人間たちが持っているような飾り立てた剣ではなく実用的な無骨な剣だが、よく馴染むし、使い勝手の良い剣だった。

ナースルーでも1,2を争う鍛冶職人に作らせた剣である。

「まぁ、解らんでもないぞ?今であれではな。心配にもなろう。」

そうクリスが言うと、クリスがぎょっとするくらいの勢いで瞳を輝かせ、身を乗り出してくるアルベルト。

「解ってくれるか?! そうなんだよ・・・そうなんだ! リーリィは可愛いだろう?あの・・・・・・・。」


・・・しまった。


後悔先に立たず、とはよく言ったものだ、とクリスは今まさにそれを噛み締めていた。

それから軽ーく2時間近く、アルベルトの“愚痴”という名の“惚気”と”兄バカ”ぶりをたっぷり聞かされたのであった。



***


 城に戻ったクリスは、父にそのことを報告した。

「そうか。いいなぁクリス。私も会いたかった。」

そう最初に言ったのは母親であるランカだった。

国的には跡取りとなるクリスをはじめ男児三人を出産したランカは出来た“国母”ではあったが、本人は可愛らしい女児が一人くらい欲しかった。

剣を握ればそこいらの兵など蹴散らすほどの腕前を今も保っているランカではあるが、実は可愛いもの好きで有名で、意外と少女趣味である。

交流のある貴族の家に女児が生まれたと聞いては、連れて来させて猫可愛がりをするのは今では皆が知っていることであるし、クリスたち息子三人も、小さい頃はフリフリレースで着飾られていた。

いや進んでしていた訳ではない。あくまで乳幼児だった頃の話だが、祝いに来た貴族たちが呆気にとられたという話は今では笑い話の一つだ。物心の着く前であったなら、いいじゃないか、とランカが趣味を押し通した故なのだが、それを物が解る頃になって聞いた三人は憤死しそうだったのは記憶に刻まれている。

スカートを履かせられなかっただけでも良かった、とそれには断固として反対してくれた侍女にとても感謝した。


「「そんなにカワイんだ?」」

クリスの横でケーキをパクついている2人は声をそろえて聞いて来る。

「あぁ。・・まぁあまり見ないな、あそこまでは。」

クリスの正直な感想に、2人は驚いた顔をした。クリスが余り女性を褒めるという事をしない性質だからだ。

「「へぇ。見たいなぁ。ねぇ父上。」」

クリスの弟たちである。

2つ下になる2人は、今でも側近である人間たちにも間違われる位そっくりで、またそれを楽しんでいる風でもあり態とそっくりにしている腹黒い二人である。

フェイラン・デ・シュルツ

オウラン・デ・シュルツ

腹は真っ黒だが父譲りの金髪に空色の瞳で“天使”と称される双子は、にっこりと笑って人畜無害そうで一見御しやすく人を欺き、その実全く他人を信用していないという曲がった性根の持ち主でもある。 

その二人が絶対の信頼を寄せているのが家族とアルベルトであった。

そのアルベルトが眼の中に入れても痛くないほどに可愛がっている妹、に興味を持たないはずがない。いや興味というより“嫉妬”半分だろう。

“父上”と天使たちが強請った相手は、にやりと笑って宰相を呼びつけた。

・・・済まん、アル。


*** 


 数日ののち、王宮からあるものが届いた。

「招待状・・・ですか?」

父親の書斎に呼び出されたのは、アルベルトとリリアナ。

二人は大きなソファに座ると、無表情な父親から白い封筒を手渡された。

「これ、ユキモヨウ・・・王妃さまから、ですか?」

中身を取り出したアルベルトから封筒だけを渡されたリリアナは、その封筒の蠟封印がユキモヨウと呼ばれる花だと気がついた。

ユキモヨウ、とは高山に咲く原生の真っ白な大輪の花で、大きな花弁は凛として開き、その一つ一つがキラキラと光るという、稀な花である。しかし、根には猛毒を持ち、それがランカにはぴったりだと、嫁入りして後、ランカ妃殿下の花と認定された。

高山に咲くには厳しい自然条件に耐えうる花であるが、何故か栽培するとなると途端に難しい花であり、なかなか気難しいと評判である。

「建前は、な。おそらくあいつの入れ知恵だろう。」

・・・獅子王、ですか。

王の呼び出しともなれば、普通の貴族であれば無視することは敵わない。が、筆頭公爵の上幼馴染であるデレクには通用しない。

いや公式ではなくとも緊急の用件であれば、デレクとて馳せ参じるが、今は周辺諸国にもさしたる案件はなく、どちらかと言えば平穏である。

「自分では敵わなくとも、王妃の名であれば従うだろう、とな。本当にあいつは・・・まぁランカ様のことだ、リリアナに会いたいのも本心だろうが・・・。あの方には逆らえんのでな。」

母親と父親の出会いに、ランカが関わっていることをアルベルトは聞いていた。それ故、父親がランカに弱いことも。

いわるゆキューピッド役をランカがやったという事らしいのだが、そんな器用な王妃には失礼ながら見えない女性なのだが。

「父上も行かれるのですか?」

「いや、私は仕事だ。このついでにあいつに死ぬほど仕事をやらせてやる。アルベルトは付いていて欲しいところだが、こちらを手伝って欲しい。で、リリアナ。」

アルベルトの横にちょこんと座っている溺愛する娘に視線を送る。

「はい。」

「お前は独りで大丈夫か?非公式とはいえ、王妃に会うのは初めてになるが・・・。勿論、赤ん坊だった頃は良く顔を見に来られていたが、お前は勿論覚えていないだろうから。」

此処で“覚えている”と言ったら、父親は驚くだろうか・・・。リリアナはそう思ったが、勿論口に出すことはない。

「しつれいがないといいのですが・・・。」

「大丈夫だ。小さな事を気になさる方ではない。仕事が終わればすぐにでも迎えに行く。大丈夫か?」

「はい。がんばります。」

 

 別に頑張らなくてもいい、と言いながらデレクはリリアナの頭を撫で、2人はそのまま父親の書斎を後にした。

「・・・リーリィ・・お前、覚えてるんだろう?」

横を歩きながらアルベルトがそう聞いた。

リリアナはどう言おうかと考えた後、しっかり頷く。家族に隠し事はしたくなかった。バレてしまった後から今まで隠し事をしたことはない。

「まぁいい。 あの方は可愛いもの好きだから、きっと弄繰り回されるだろうが、それは覚悟しておけよ。城に行くまでは一緒だ。」

・・・げっ。

そう心の中で叫んだのは勿論秘密だ。

 

***


 4頭仕立ての馬車に揺られて、目の前に座る父親と兄に注意を促されながらリリアナは初めて王宮の門を潜った。

門を通る際、門番に馬車の中を改められるのだが、門番にとって馴染みの顔である公爵とアルベルトはいつも通りであったが、彼はリリアナを見て固まった。

「末の娘だ。今日はランカ王妃に茶に呼ばれてな。」

公爵の言葉に、門番は固まってしまった視線を必死で剥がすと、頭をぎくしゃくと下げ馬車を通した。

 

 「おい、どうした?」

門番をしているのは騎士である。

王宮内の近衛とは違うが、彼らも軍に籍を置いている。

「・・・すっげぇーのを見た。」

呟く同僚に仲間ははぁ~?と首を捻る。馬車が伯爵家のものだという事は皆も承知している。いつも通り伯爵とその息子が乗っていることも。

「おい?」

「は・・ちみつひめ。」

「は?」

「公爵家の・・・蜂蜜姫がいた。」

「「「え~!」」

どんな?、どうだった?と聞き募る同僚たちに、彼はその姿を瞼に浮かべて答える。

「生きて呼吸をしているとは思えないほどに綺麗な姫だった。・・・まるで精巧に作られた人形だ。」

彼の発言から、まだ見ぬ彼女の噂が王宮内を駆け巡ったのは、また別の話。


***


 父親の執務室に入ったのは、勿論初めてだ。

物珍しさからあちこちを覗きこむリリアナにアルベルトは注意をしつつも止めることはせず、父親に至っては、ただただ鼻の下を伸ばすのみ。

普段から厳しい上司のそんな姿を見て固まっているのは、部下のカルロだった。

・・・本当、だったんだ。

改めて噂を信じた。

いや、上司が大の愛妻家で、家族を何より大切にしているのは知っていた。が、デロデロに溺愛しているという噂は少しばかり誇張だろうと思っていたのだ。だって2年ほど前から仕事を手伝いにきているアルベルトにはそれなりに厳しい面もあったからだ。

だから噂に聞く娘に対しても、そうはないだろうと・・・。

・・・でも・・、これはまぁ仕方ないの、かな?

綺麗どころが多い王宮に勤務しているカルロでさえ、幼さゆえの可愛らしさを除いたとしても、リリアナの美しさ、というか可愛らしさは目にしたことのない類のレベルだったから。

ストレートのサラサラに揺れる金糸。

真っ白い肌に華が咲くような唇。

大きな稀色の瞳は、今は父親の執務室奥にある本棚に向かっている。

「お父さま。・・・たくさんおべんきょうなさるのね。」

鈴が転がるような声。

「リリアナ。こちらへ。」

娘の言葉に、今以て宮廷の女性たちが骨抜きになると言われる微笑みを惜し気もなく振り撒きながら、デレクは小さなリリアナを自分の元へと呼びよせる。

「部下のカルロ・デクスターだ。私の予定の管理や雑務まで、彼が一人でやっているんだよ。」

デレクの言葉に、リリアナはカルロを真っ直ぐに見上げる。

邪気のない稀色の瞳が何もかもを見通すように感じられて、カルロは姿勢を正した。

「はじめまして。リリアナです。いつも父と兄がおせわになっております。カルロさま。」

丁寧にされたお辞儀。ドレスの布を軽く持ち上げる小さな指先。その裾から覗いた小さな細い足くび。

奥方がそりゃもう美しい方と知ってはいても、こうもいいとこ取りで生まれてくるものだろうか、と思ってしまう。

「はじめまして、デクスター男爵家3男のカルロ・デクスターで御座います。こちらこそデレク様にはお世話になっております。お会いできて光栄です。リリアナ様。」

カルロの言葉に、にっこりと笑いながらリリアナは、

「私のことはどうぞリリアナ、と。カルロさまの方がお歳が上ですもの。」

と返した。

「いえ、そうは参りません。公爵家の御姫様でいらっしゃるのですから。」

そんなような言葉を返したのは2度目だった。そうカルロは思い返していた。彼女はどう答えるだろう。

「私はただのこどもです。ただちちおやがりっぱなだけの。・・・カルロさまはキチンとおしごとをなさっています。りっぱです。私が様づけで呼ばれるのは・・・フソウオウです。」

その言葉を聞いてカルロは笑ってしまった。とはいえ微笑んだだけだが、リリアナは不思議そうな顔をして見上げてくる。

「リリアナ様を笑ったのではありませんよ。似たような言葉を以前にも言われた事を思い出しまして・・・。解りました。では別の呼び方を致しましょう。」

「“リーリィ”と。兄はそうよびます。」

ほっとしたようにリリアナは言った。

「ではそうお呼びしますね、“リーリィ姫”。」

“姫”といったことでまた怪訝な顔をしたリリアナだったが、カルロはそれは譲れないと言ったのでしぶしぶ納得した。そして迎えにきた騎士と侍女に連れられて出ていく姿を見送った後、カルロは上司であるデレクに言った。

「よい教育をされていらっしゃるのですね。お二人して同じような事をおっしゃる。」

「そうか?ありがとう。 しかし嫁にはやらんぞ?」

何を言い出すんだか、この人は・・・と呆れ顔を浮かべながらカルロは答えた。

「一応婚約者がいるんですがね、僕は。それにどれだけ年が離れていると思っているんですか。全く。」

カルロは18.とんだ幼女趣味になってしまうではないか、と言えば、

「独身の男は皆敵だ。」

真面目な顔をして答える上司にカルロは、苦笑いを浮かべた。


***


 今日は公式ではないから、と王妃の私室に通されたリリアナは、案内してくれた騎士に丁寧なお辞儀をした。

「ありがとうございました、ナッツ様。」

その姿を見て侍女は微笑み、騎士もまた微笑んでいる。


 『お迎えに上がりました。』

デレクの執務室の扉をノックして開かれた扉に向かって頭を下げた騎士ナッツと侍女マーシャは、デレクの答えに顔を上げた時固まった。

王妃から、『デレク公爵の娘を迎えに行ってくれ。』と言われ、執務室に居るはずだから、とやって来たのだったが。

二人の見知らぬ人間に、父親の膝の上に居たリリアナは真っ直ぐに瞳を向けた。

・・・何だ・・・これは。

ナッツの最初の印象はそれだった。心の中で叫んだのは幸いだった。公爵令嬢を“これ”呼ばわりなどしたら首が飛ぶ。

しかし、そこに居たのは高価な人形といってもいいほどに整った顔立ちをした少女だったのだ。

横でマーシャが息を飲むのが聞こえた。

彼女も同じ気持ちだったことは解った。それほどに人間離れしていたのだ。公爵が人形遊びをしているかと思う位に。

『おとうさま?』

耳触りのいい声がその口から発せられるのを聞いて金縛りが解けた気がした。

『もう来たのか。仕方がない。おいでリリアナ。』

その声が思わずマーシャが頬を染めるほどに蕩けていたのだが誰も気がつくことはなく、2人の前に生きた人形が招かれた。

『娘のリリアナだ。よろしく頼む。執務が終わったら迎えに行くからと王妃さまに伝えてくれ。』

手を取られ歩いて来た人形はにっこりと2人に笑いかけた。

『リリアナです。今日はおせわになります。』

貴婦人の礼を取るリリアナに二人は我に返って礼を取った。

『近衛のナッツ・デラ・タンドールで御座います。』

『王妃付き侍女のマーシャ・オ・リンクスで御座います。』

『ナッツ殿。リリアナを頼みます。少し好奇心旺盛なところがありますので、一番心配なのは迷子かと。』

後ろから声を掛けるアルベルトに、リリアナが“もう!”と振り返った。

『アルにいさま、ばらさないで。』

その時、首を振った勢いで広がった髪がさらさらと音を立てているのではないかと思うほどに煌めいた。

『それはあれか? 探険で倉庫に閉じ込められたことか?それとも抜け出して厩舎にいったことか?・・・あぁ木に登って降りられなくなったあれか?』

笑いながら言うアルベルトに、真っ赤になって駆け出してアルベルトの足を小さな拳で叩くリリアナは、まるでじゃれついている猫のようだった。

『マーシャ殿。この様に逃げ足が速いので、手を繋いでいかれることを推奨いたしますよ。』

ポカポカと痛くもなさそうな小さな拳を振りかざす小さな妹を抱き上げたアルベルトがそう言いながら二人の元へ少女を連れてくる。

それにマーシャは微笑みながら、下ろされたリリアナの白い小さな手を握る。

『ではそう致しましょう。・・・失礼したします。』

小さな手は温かく、柔らかだった。

 小さなリリアナでは、景色は見られない。それを残念に思いながらも2人に連れられて長い廊下を歩いていると、ふとマーシャが止まった。

『マーシャ様?』

『ナッツ様。申し訳ございませんが、リリアナ様を抱き上げてはいただけませんでしょうか?』

きょろきょろと周囲を見ながら歩いていたリリアナのことに気がついていたのだろう、マーシャはそう言ってナッツを見上げた。

ナッツは近衛の中でも大きい方だ。

近衛になるにはある一定の規定がありその中には身長も含まれているのだが、ナッツは近衛の中でも1,2を争うほどに長身な男であった。

いいのか、とリリアナを見るナッツにマーシャは頷いて、リリアナの視線に合せてしゃがみ込んだ。

『高い処の方が多くのものを見られますものね? リリアナ様。』

その言葉にきらきらと瞳を煌めかせながらリリアナは横に立つナッツを見上げて来た。

・・・っう。

純粋に期待の籠った輝きにナッツは公爵の娘だから、粗相があっては、とか恐れ多い、とかいう言い訳が出来なくなった。

屈みこんで右手をリリアナのお尻の下へと回すと

『失礼致します。首か肩にお掴まり下さい。』

そう言って細い腕が回されたのを確認して立ち上がった。

『・・っわぁ・・お父さまよりアルにいさまよりたかいです。』

きゅっと首に回された手に少しの力が入る。

『怖くはないですか?』

きょと、とした大きな瞳が真近にあるナッツに向けられた。

その輝き。

・・・蜂蜜姫、か。噂に違わず、まさに。

『だいじょうぶです。ありがとうございます。』

そうして廊下を歩き出しながら、目の入るもののほとんどを二人の解説で見学しつつ王妃の私室前までやってきたのだ。

 そしてさっきのセリフである。

礼を言われたナッツは微笑みながら騎士の礼を取ると、踵を返して扉の前の定位置に付く。

そしてマーシャは扉をノックして、リリアナの到着を告げるのであった。















 




























忙しくて・・・っていい訳ですが、余裕がなかったです。やっと書けました。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ