表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
修羅の空  作者: 怒万坊
1/1

 この小さな町に、行方不明の事件が起こったのは、めっぽう暑い夏の盛りの時だった。

 「神隠しでないかい?…」

 と、町の人たちは、のべつ言いあっったが、まさに、この事件の特異性を一言で言い表しているかのようだった。

 というのも、行方不明になったのは、年端もゆかない、高校生の女の子であった。学校帰りの彼女は、友達と別れて間もなく、その後、家に帰ることはなかった。

 ここまでは、確かに、普通の行方不明の事件かもしれない。しかし、この事件の特異な所は、目撃者がいながら、行方不明になったというところである。

 目撃者というのは、そう、彼女の行方が、目の前で、消えてなくなるのを、『目にした』目撃者のことである。

 「智子が前を走って、先に曲がり角を曲がったと思ったら、急に、辺りがまぶしくなって…」

 そして、いなくなってしまったということだ。

 まぶしくて、目を閉じていたのは、5秒ぐらい。青白い、頭がくらっとする、強烈な光だったいう。

 曲がってみれば、智子はいない。影も形も無い。

 目撃者の女の子は、なんだか、ぞっとして、その日は、家に帰り、夜中に、智子の両親から、いまだ帰らない智子の話を聞いたということだ。

 ここで思うのは、この目撃者たる女の子が、少し頭のおかしい子ではないかとうことかもしれない。実際、事件を担当する田辺刑事も、そう考えた人の一人である。

 ところが、この現代にあって、人々が、一様に、「神隠し」という古めかしく、神話的な言葉をもってきたのも、「まぶしくなって、そして友達が消えた…」という不幸な目撃者が、この女の子一人ではなかったからである。

 先月から今月にかけて、あわせて12人…智子は、13人目の犠牲者だ。

 平穏で静かな港町の駅は、連日、ワイドショーだの捜査だのが入り乱れ、不穏で慌しい様子にかき乱されていた。

 「ちょっとよろしいですか…?」

 ねずみを追い詰める猫のように駆け寄ってくる美人アナウンサーを、冷ややかな目で見て歩き去る、倉木進も、この町の住人であった。

 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ