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第18話 曖昧な関係



「……で、アリーシャ。セインさまと、どこまでいってるの?」


「え?」


意味深な笑みとともに唐突に投げられた問いにアリーシャは驚き、メリーベルとターニャを交互に見返した。


今朝の狩りは予想以上に首尾よく進み、正午には村に帰り着いた。

そしてアリーシャの家の前で待ち構えていたメリーベルの祖父に、セルフィエルはそのまま連行されてしまった。祭りが近付くにつれてドーラムに外からの観光客が増え、町の宿屋が満室になりとうとうニース村にも客が流れてきたらしい。

メリーベルの祖父母の経営する酒場も昼間から大繁盛で、給仕の人出が足りなくなったらしかった。

セルフィエルが村に溶け込み始めているのを見て、アリーシャも嬉しかった。だから微笑んで見送ると、彼らと入れ違うようにメリーベルが訪ねてきた。


「アリーシャ!お祖父ちゃんがセインさまを引っ張って酒場に行くのが見えたから、もう帰っていると思って来ちゃった。今日は早かったのね」


「こんにちは、メリーベル。うん、今朝は順調に終わったんだ。セインさまのおかげだよ」


メリーベルの家はニース村にあるが、他のほとんどの村人と同じく彼女も普段はドーラムの町の一画にあるブティックで働いていた。今日は祭り前最後の定休日らしい。

伝統をより大切にした王都の流行とは違い、様々な文化のを取り入れ、斬新な造りの服飾が今のドーラムの流行りだ。

彼女の店は常にその最先端をいき、そのせいかメリーベルも常に自分の外見に気を配っていた


(今日も可愛い格好だなぁ……)


にこにこと微笑みを浮かべるメリーベルを見ながらアリーシャは思った。

今日のメリーベルは、春らしい鮮やかな若草色のドレスに身を包んでいる。襟元からは華奢な鎖骨が覗き、その周りを白いレースが縁取っていた。

毎日同じ格好、しかもズボンの自分には、一生縁のない服装だろう。


「アリーシャ、今日はもう予定ないでしょう?お互いお祭り終わるまで忙しくて時間が合う時がないかもしれないから、今から町までお出かけしない?」


確かに、最後の息抜きの機会かもしれなかった。アリーシャはその言葉に笑顔で頷くと、メリーベルと共にドーラムへ向かう道を歩き始めた。


町に着き、まずターニャのいる武器屋に寄った。店主の少女は大喜びで外出の誘いを承諾し、店の外に準備中の札を出した。いくら観光客が増えようと、武器屋にはたいして影響はないらしい。

それから3人は連れだって小さな喫茶店に入った。

昼時を少し過ぎていたので待たずに席に着くことができ、飲み物を注文した直後、ターニャとメリーベルが口をそろえて尋ねた。


「で……アリーシャ。セインさまと、どこまでいってるの?」


「……どこまでって……」


アリーシャはここ半月の記憶を辿る。そして大真面目に答えた。


「……一番遠くまで行ったのは、たぶん初日かな。川の源流の滝壺まで行ったから。でも明後日は野生のブタやウサギを探して山の向こうまで行くから、もしかしたら最長記録に」


「違うわよ!!」


メリーベルが大声で遮った。怒りに満ちた表情に、アリーシャは思わず口をつぐんだ。


「なんなのアリーシャ、マジなの、マジで言ってるの?それともウケ狙い?」


「ご、ごめんメリー、落ち着いて」


わけもわからず謝るアリーシャを横目に、ターニャが「いや、メリー、私たちが悪いわ。こんな聞き方でアリーシャに通じるわけなかったのよ」とメリーベルの肩を叩いて宥める。


「そ、そうね。今のは私たちの落ち度よね。ごめんなさい、アリーシャ」


「う、ううん……気にしないで」


今度はいきなり謝られ、再び理解できないままアリーシャは答えた。

ターニャが咳払いをする。


「じゃ、改めて。アリーシャ、セインさまと、もう2人でデートには出かけた?口付けは済ませたの?それとも、もう床を共にしたのかしら?」


あまりに直接的な表現に、今度はメリーベルが目を剥いた。


「タ、ターニャ……」


さすがのアリーシャも何を問われたのかを理解する。数瞬絶句したのち、戸惑いながら口を開く。


「な、何もないよ。みんなが誤解してるのは知ってるけど……わたしとセインさまは恋人とか、そういう関係じゃないよ。ターニャもメリーも、わたしがそう言われる度に否定してるの知ってるでしょう?」


「うん、知ってる。でも、セインさまは違うでしょ?」


メリーベルに即答され、アリーシャは何も言えなくなった。




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