『やはり戸塚彩加との食べ歩きイベントは少し距離が近すぎる。』
どうもです。
今回は、休日の食べ歩きをテーマにしたお話を書いてみました。
普段の奉仕部とは少し違って、
「学校の外で過ごす時間」
を意識して書いています。
特に今回は、戸塚彩加というキャラクターの、
自然体なのに距離感が近いところや、
一緒にいると空気が柔らかくなる感じを出せたらいいなと思いました。
比企谷もなんだかんだ面倒見がいいので、
こういう“誰かに付き合わされる休日”は案外嫌いじゃないのかもしれません。
ゆるく、少し騒がしく、
でもどこか青春っぽい空気を楽しんでもらえたら嬉しいです。
それでは。
昼休み。
五月の教室は妙に眠い。
窓際の席ではリア充グループが騒ぎ、廊下では運動部がパンを咥えながら走っている。平和だ。爆発しろ。
そんな中、俺はいつものようにぼっち飯の準備をしていた。
購買パン。
紙パックコーヒー。
そして孤独。
完璧な布陣である。
すると。
戸塚「ヒッキー、今いい?」
顔を上げる。
そこには戸塚彩加がいた。
終わった。
俺の心臓が。
八幡「戸塚!? あ、ああ、もちろん」
戸塚「よかった」
戸塚が安心したように笑う。
かわいい。
なんでこの生物は笑うだけで周囲の空気を浄化できるんだ。
教室の男子どもがチラチラこっち見てるじゃねえか。やめろ。殺意が混じってる。
戸塚「あのね、駅前に新しいお店いっぱいできたの知ってる?」
八幡「いや知らん」
戸塚「食べ歩きマップみたいなの見つけて、ちょっと気になってたんだ」
そう言ってスマホを見せてくる。
ハンバーガー。
パンケーキ。
ラーメン。
商店街グルメ。
完全にデート雑誌だった。
待て。
これ、今俺、
“戸塚とデートプラン見てる”
構図になってないか?
やばい。
意識すると急に緊張してきた。
戸塚「でも、こういうの一人だと入りづらくて……」
八幡「あー……」
まあわかる。
特にオシャレ系の店はぼっちに厳しい。
席が全部“誰かと来る前提”なんだよな。
戸塚「だからその……もしよかったら、一緒に回ってくれないかな?」
「…………」
数秒止まった。
脳が。
待て待て待て。
落ち着け。
ここで「行く!!!!」とか即答するとキモい。
自然に。
あくまで自然に。
八幡「……まあ、戸塚とならウェルカムオールウェイズだ」
戸塚「またそれ言ってる……」
戸塚が吹き出した。
よかった。
滑ってはいないらしい。
戸塚「じゃあ、土曜日空いてる?」
八幡「空ける」
戸塚「返事早っ」
だって戸塚だぞ?
戸塚から休日のお誘いだぞ?
断る選択肢ある?
◇
土曜日。
駅前。
待ち合わせ場所に着くと、戸塚はすでに来ていた。
戸塚「あ、ヒッキー!」
手を振る。
爽やかすぎる。
しかも私服だった。
白シャツに薄いカーディガン。
シンプルなのに妙に似合っている。
なんだこれ。
少女漫画か?
八幡「……早いな」
戸塚「ヒッキーこそ」
八幡「まあ遅れる理由ないし」
本当は三十分前に来てた。
言わないけど。
戸塚「じゃ、行こっか!」
そう言って自然に隣へ来る。
距離が近い。
いや戸塚が悪いわけじゃない。
普通の距離感だ。
だが俺の心臓に悪い。
◇
一軒目。
ハンバーガーショップ。
店内は休日の学生で賑わっていた。
戸塚「わぁ、いい匂い……!」
戸塚がメニューを見ながら目を輝かせる。
その姿だけでCMになるだろ。
八幡「お前ほんと楽しそうだな」
戸塚「だってこういうのワクワクしない?」
「…………」
する。
戸塚と来てるからな。
だが言うと終わるので黙る。
席に座る。
ハンバーガーが届く。
戸塚「いただきます!」
一口。
戸塚「ん〜っ! おいしい!」
幸せそうに頬を緩める。
やばい。
なんか見てるだけで満足感ある。
戸塚「ヒッキーも!」
八幡「おう」
食べる。
肉汁が広がる。
普通にうまい。
戸塚「どう?」
八幡「……肉って感じだな」
戸塚「感想ふわふわすぎない!?」
戸塚が笑う。
その拍子に、口元にソースがついた。
「あ」
反射だった。
八幡「動くな」
戸塚「え?」
紙ナプキンで拭く。
一瞬、戸塚が固まった。
近い。
やばい近い。
戸塚「……ありがと」
少し照れたように笑う。
俺は死んだ。
◇
二軒目。
パンケーキ屋。
入った瞬間、後悔した。
視界が甘い。
空気も甘い。
客がほぼ女子しかいない。
八幡「帰りたい……」
戸塚「えぇ!? なんで!?」
八幡「俺だけ場違い感すごいんだが」
戸塚「大丈夫だよ、ボクいるし」
それが一番危ないんだよ。
周囲からの視線が刺さる。
たぶん今、
“彼女と来てる男”
みたいに見えている。
違うからな?
こいつ男子だからな?
だが説明して回るわけにもいかない。
席へ案内される。
窓際。
しかもソファ席。
逃げ場がない。
戸塚「わぁ……!」
運ばれてきたパンケーキを見て、戸塚が目を輝かせる。
ふわふわの生地。
大量のクリーム。
いちごソース。
女子力の塊みたいな食い物だった。
戸塚「写真撮っていい?」
八幡「好きにしろ」
戸塚はスマホを構えて色んな角度から撮り始めた。
八幡「……慣れてるな」
戸塚「えへへ、こういうの好きなんだ」
なんか普通にかわいい趣味だな。
しかも撮ってる時の顔が妙に真剣で、ちょっと面白い。
戸塚「よしっ」
撮影を終えた戸塚が、フォークを持つ。
一口食べた瞬間。
戸塚「……っ!」
顔がぱっと明るくなった。
戸塚「おいしい〜……!」
幸せそうすぎる。
そんなにか。
戸塚「ヒッキーも早く!」
八幡「はいはい」
食べる。
……甘い。
だが思ったより軽い。
戸塚「どう?」
八幡「……女子ってこういうの好きそうだな」
戸塚「レビュー下手だなぁ!」
戸塚が笑いながら、急にフォークをこっちへ向けてきた。
戸塚「はい、あーん」
「…………は?」
止まる。
世界が。
戸塚「あ、えっと、その……! 半分食べる?って意味で!」
戸塚も言ったあとで気づいたらしく、顔を赤くした。
かわいい。
いや待て落ち着け。
ここで動揺したら負けだ。
八幡「……じゃあもらう」
口を近づける。
近い。
戸塚の顔も近い。
甘い匂いする。
死ぬ。
戸塚「ど、どう……?」
八幡「……うまい」
戸塚「パンケーキの感想だよね!?」
戸塚が真っ赤になっていた。
なんだこれ。
なんなんだこの空間。
周囲の女子がチラチラこっち見てるんだが。
やめろ。
違うからな。
俺は人生勝ってないからな。
◇
三軒目。
商店街のコロッケ屋。
さすがに甘いもののあとで塩気が欲しくなったらしい。
戸塚「こういうお店いいよね」
八幡「わかる」
店先から揚げ物の匂いが漂ってくる。
学生、サラリーマン、主婦。
色んな人が並んでいた。
戸塚「なににする?」
八幡「無難に牛肉コロッケ」
戸塚「じゃあボクもそれ!」
店のおばちゃんが、揚げたてを紙に包んで渡してくれる。
おばちゃん「はいよ、カップルさん熱いから気をつけてね〜」
「…………」
「…………」
固まった。
戸塚「ち、違っ……!」
八幡「いやその」
おばちゃんはニコニコしたまま去っていく。
待て。
弁解の機会をくれ。
戸塚「……ご、ごめんね」
八幡「なんで戸塚が謝るんだよ」
戸塚「でもなんか……」
戸塚が照れたように視線を逸らす。
やめろ。
その反応は危険だ。
俺のHPが削れる。
戸塚「……あつっ」
八幡「おい大丈夫か」
慌てて見ると、戸塚が涙目になっていた。
どうやら中が熱かったらしい。
八幡「だから気をつけろって」
戸塚「だ、だってお腹空いてて……」
涙目で言うな。
かわいすぎるだろ。
八幡「ほら、水」
戸塚「ありがと……」
コロッケをふーふーしてから食べ始める。
なんだこの生き物。
保護欲を刺激する才能SSSか?
戸塚「……でも、こういうの楽しいね」
八幡「ん?」
戸塚「友達と食べ歩きするの、なんか青春って感じ」
そう言って笑う。
その笑顔を見て、少しだけ思う。
たぶん今の俺、かなり顔緩んでる。
◇
四軒目。
ラーメン屋。
八幡「……さすがに食いすぎじゃないか」
戸塚「最後! 最後だから!」
戸塚はそう言うが、若干歩き方がゆっくりになっていた。
そりゃそうだ。
三軒回ってるんだから。
八幡「無理すんなよ」
戸塚「してないよ?」
その直後。
戸塚「……ちょっとだけ苦しいけど」
八幡「してるじゃねえか」
思わず笑う。
すると戸塚もつられて笑った。
店に入る。
カウンター席。
昼時を少し外していたおかげで、そこまで混んではいなかった。
戸塚「なんか、ラーメン屋って落ち着くね」
八幡「わかる」
変に気取ってない感じがいい。
こういう空気は嫌いじゃない。
水を飲んでいると、戸塚がふとこっちを見た。
戸塚「ヒッキーってさ」
八幡「ん?」
戸塚「今日ずっと楽しそうだよね」
「…………」
図星だった。
八幡「そんなことない」
戸塚「あるよ。さっきから結構笑ってるし」
やめろ。
自覚させるな。
俺は普段そんなに笑ってないのかと逆にダメージ入るだろ。
戸塚「なんか、よかった」
八幡「なにがだよ」
戸塚「ヒッキー、学校だといつも疲れてそうだから」
戸塚が少しだけ困ったように笑う。
戸塚「でも今日、楽しそうだったから」
不意打ちだった。
こういうことを自然に言うんだよな、こいつ。
だから困る。
八幡「……まあ」
視線を逸らす。
八幡「一緒にいる相手がいいからじゃね」
「…………え?」
しまった。
口が滑った。
終わった。
人生が。
戸塚「そ、それって……」
八幡「いや違う。変な意味じゃなくてだな」
戸塚「う、うん!」
二人して妙に慌てる。
空気が変になる。
そのタイミングでラーメンが来た。
助かった。
店員ありがとう。
国家勲章ものだ。
戸塚「お、おいしそうだね!」
八幡「話逸らすの下手か」
でも少し安心したように戸塚が笑う。
ラーメンを食べ始める。
戸塚「ん〜……やっぱりラーメンって落ち着くなぁ」
八幡「締めにちょうどいいな」
戸塚「ね!」
その時だった。
由比ヶ浜「……あれ?」
「…………」
聞き覚えのある声。
嫌な予感しかしない。
ゆっくり振り向く。
そこには。
由比ヶ浜「ヒッキー!? えっ!? 戸塚といるの!?」
雪ノ下「…………」
買い物袋を持った由比ヶ浜と雪ノ下が立っていた。
しかも完全に、
“偶然デート現場を目撃した人”
みたいな顔してる。
やめろ。
違うからな。
八幡「いやこれは」
由比ヶ浜「ラーメン!? 二人で!?!?」
八幡「ラーメンくらい食うだろ」
戸塚「えっと、食べ歩きしてて……」
由比ヶ浜「食べ歩き!?」
由比ヶ浜のテンションが一段階上がる。
由比ヶ浜「なにそれ楽しそう!!」
雪ノ下「…………」
一方、雪ノ下は無言だった。
怖い。
なんで黙ってる時のほうが圧あるんだこいつ。
雪ノ下「比企谷くん」
八幡「はい」
雪ノ下「随分仲が良いのね」
八幡「語弊がある」
雪ノ下「四軒目まで来ておいて?」
「…………」
なぜ知ってる。
八幡「なんで四軒ってわかった」
雪ノ下「服にパンケーキのクリーム」
八幡「っ」
見る。
袖についてた。
終わった。
戸塚「あ、ご、ごめん! ボクさっきぶつかっちゃって!」
雪ノ下「へぇ」
なんだその「へぇ」は。
温度が低い。
由比ヶ浜「えっ、待って! パンケーキも行ったの!?」
八幡「騒ぐな」
由比ヶ浜「めっちゃデートじゃん!!」
八幡「違う!」
だがその瞬間。
戸塚「……でも、楽しかったよ?」
戸塚が笑った。
柔らかく。
少し照れたみたいに。
その空気があまりにも自然で。
一瞬、全員黙った。
由比ヶ浜「…………」
雪ノ下「…………」
やめろ。
その沈黙やめろ。
なんか俺が最低男みたいになるだろ。
気まずい沈黙。
ラーメン屋なのに空気が重い。
なんなんだこの卓。
合コン失敗直後みたいになってるぞ。
由比ヶ浜「……へ、へぇ〜」
由比ヶ浜がニヤニヤしながら俺を見る。
やめろ。
その顔やめろ。
由比ヶ浜「ヒッキー、パンケーキとか行くんだ〜?」
八幡「行きたくて行ったわけじゃねえ」
戸塚「ボクが誘ったんだよ?」
由比ヶ浜「戸塚から!?」
由比ヶ浜がさらに騒ぐ。
対して雪ノ下は。
雪ノ下「…………」
まだ静かだった。
怖い。
絶対なんか考えてる。
八幡「なんだよ」
雪ノ下「別に」
八幡「その“別に”は絶対別にじゃない」
由比ヶ浜「ていうか何食べたの!?」
戸塚「えっとね、一軒目がハンバーガーで、二軒目がパンケーキで、三軒目がコロッケ!」
由比ヶ浜「めっちゃ満喫してるじゃん!!」
しまった。
ラインナップが完全にデートだった。
終わった。
雪ノ下「随分と充実した休日ね」
八幡「お前その言い方やめろ」
その時。
店員が追加の水を置いていく。
気まずさから逃げるように、俺はラーメンをすする。
戸塚「あ、そうだ!」
八幡「ん?」
戸塚が急にスマホを取り出した。
戸塚「ヒッキー、最後にちゃんと食レポしようよ!」
八幡「は?」
由比ヶ浜「食レポしてたの!?」
八幡「させられてた」
戸塚「絶対面白いから!」
面白さ求められてんのか俺。
芸人じゃないんだが。
だが戸塚は完全にやる気だった。
スマホを構える。
戸塚「はい、ヒッキーどうぞ!」
八幡「急すぎるだろ……」
視線が集まる。
戸塚。
由比ヶ浜。
雪ノ下。
なんだこの公開処刑。
八幡「……えー」
ラーメンを一口。
少し考える。
八幡「優しい味だな」
戸塚「おぉ〜!」
由比ヶ浜「出た!」
八幡「あと麺が、こう……ラーメンって感じで」
雪ノ下「当たり前ね」
八幡「うるせえ」
戸塚が笑いながらスマホを下ろす。
戸塚「やっぱりヒッキーの食レポ好きだなぁ」
八幡「どこがだよ」
戸塚「なんか、一周回って味あるもん」
褒められてる気がしない。
すると由比ヶ浜が身を乗り出してきた。
由比ヶ浜「じゃあ次ゆきのん!」
雪ノ下「……なぜ私が」
由比ヶ浜「絶対うまいじゃん!」
確かに。
雪ノ下って語彙力だけは異常に高いからな。
本人は少し嫌そうだったが、戸塚が期待した目で見つめる。
戸塚「雪ノ下さんのも聞いてみたい!」
「…………」
数秒後。
雪ノ下「……仕方ないわね」
やるんかい。
雪ノ下はラーメンを一口食べ、少し考える。
そして。
雪ノ下「魚介の風味が強すぎず、それでいて後味にしっかり残るわね。麺もスープに負けていないし、全体的に丁寧にまとまっていると思うわ」
「…………」
店の空気が変わった。
由比ヶ浜「うわぁ〜!」
戸塚「すごい……!」
八幡「急にグルメ番組始まったな」
すると雪ノ下はふっとこっちを見る。
雪ノ下「比企谷くん」
八幡「なんだ」
雪ノ下「これが食レポよ」
八幡「圧で殴るな」
戸塚が楽しそうに笑う。
戸塚「でもボク、ヒッキーのも好きだよ?」
八幡「……そうかよ」
その言葉だけでちょっと救われる俺、チョロすぎるな。
だが次の瞬間。
由比ヶ浜「ねぇ、じゃあさ!」
嫌な予感。
由比ヶ浜「次はみんなで食べ歩きしよーよ!」
「…………」
固まる。
八幡「いや人数増えると疲れる」
由比ヶ浜「えー!」
戸塚「楽しそう!」
雪ノ下「……悪くないわね」
おい。
なんで乗り気なんだ。
由比ヶ浜「決まりね!」
勝手に決まった。
俺の拒否権とは。
◇
店を出る。
外はもう夕方だった。
オレンジ色の光が商店街を照らしていて、妙に“青春の締め”みたいな空気になっている。
やめろ。
そういう雰囲気に弱いんだ俺は。
由比ヶ浜「いや〜楽しかったね!」
八幡「お前途中参加だろ」
由比ヶ浜「でも楽しかったし!」
由比ヶ浜は満足そうに伸びをする。
一方で雪ノ下は静かだった。
ただ、さっきほど空気は冷たくない。
たぶん。
たぶんだけど。
戸塚「あ、もうこんな時間なんだ」
戸塚がスマホを見る。
戸塚「ごめんねヒッキー、結構付き合わせちゃった」
八幡「いや別に」
本音だった。
むしろ、思ってたよりずっと楽しかった。
……認めたくないけど。
由比ヶ浜「ねえねえ、最後になんか食べない!?」
八幡「お前まだ入るのかよ」
由比ヶ浜「デザートは別腹!」
雪ノ下「その理論、医学的根拠はあるのかしら」
由比ヶ浜「え、ないの?」
あるわけねえだろ。
そんな話をしながら歩いていると。
戸塚「……あ」
戸塚が立ち止まった。
視線の先。
小さなクレープ屋。
商店街の角にある、昔ながらの店だった。
戸塚「クレープだ」
由比ヶ浜「食べる!?」
八幡「お前の胃どうなってんだ」
だが戸塚は少し迷うように店を見ていた。
雪ノ下「気になるの?」
戸塚「うん。でも……」
八幡「?」
戸塚「こういうの、一人だとちょっと入りづらくて」
昼休みと同じことを言う。
でも今は少し意味が違う気がした。
たぶん戸塚は、
“誰かと一緒に食べる時間”
が好きなんだ。
だから今日ずっと楽しそうだった。
なんとなく、それがわかった。
由比ヶ浜「じゃあ行こ行こ!」
由比ヶ浜が戸塚の腕を引っ張る。
戸塚「わっ」
その時。
ぐらっ、と。
八幡「おっと」
反射的に腕を掴む。
戸塚が少しよろけていた。
たぶん食べ歩きしすぎで疲れてたんだろう。
だが。
掴んだまま固まった。
近い。
めちゃくちゃ近い。
戸塚「…………」
八幡「…………」
目が合う。
やばい。
なんか急に静かになった。
周囲の音だけ遠く感じる。
戸塚の顔が、夕焼けで少し赤く見えた。
由比ヶ浜「…………」
雪ノ下「…………」
後ろが静かすぎる。
怖くて振り向けない。
戸塚「あ、ありがと……ヒッキー」
八幡「……気をつけろよ」
手を離す。
だが妙に心臓がうるさかった。
すると。
由比ヶ浜「……なんか今、少女漫画みたいじゃなかった?」
八幡「うるせえ」
雪ノ下「比企谷くん」
八幡「なんだ」
雪ノ下「顔が赤いわよ」
八幡「夕日だ」
雪ノ下「戸塚くんも赤いけれど」
戸塚「えっ!? ぼ、ボクは違っ……!」
戸塚が慌てる。
かわいい。
やめろ。
これ以上俺のHPを削るな。
そしてそのまま、四人でクレープ屋へ向かう。
たぶん今日一日だけで、俺は数ヶ月分くらい青春を摂取していた。
ここまで読んでくださってありがとうございました。
今回書いてて意識したのは、
「ちゃんと楽しい時間を積み重ねる」
ことでした。
俺ガイルって、
“空気”
で読む作品だと思うので、
「戸塚といると自然に笑ってる八幡」
とか、
「雪ノ下が静かに圧出してる感じ」
とか、
そういう空気感を大事にしました。
あと、戸塚って強い。
本人は何もしてないのに、
・距離近い
・褒める
・笑う
・照れる
を自然にやるから、八幡視点だとずっと致命傷なんですよね。
たぶんあの日の八幡、帰宅後ベッドで悶えてます。
「いや違う、戸塚は男だ」
↓
「でもあれはちょっと」
↓
「いやいやいや」
みたいな。
一方で雪ノ下は雪ノ下で、
“言葉にはしないけどなんか面白くない”
空気を出してると思います。
そして由比ヶ浜だけ全部楽しそう。
平和。
たぶん平和。
改めて、読んでいただきありがとうございました。




