第七十八話:ルシファーの「自省」と、神社の「中途採用戦略会議」
第七十八話:ルシファーの「自省」と、神社の「中途採用戦略会議」
「……世間は我のお母さんではない。……誠にその通りよな」
魔王城の自室で、ルシファーは深く沈思黙考していた。
先日の円卓での屈辱。魔王の「面白い」という一言や先輩たちの不誠実さに絶望もしたが、怒りが一周回った今、彼は冷静に自分の非を「逆算」していた。
(……今回のエストレア侵攻、軍団長は私だ。だが、私は九尾が数ヶ月前に出した古いデータ(前回の戦報)を鵜呑みにし、現場の最新情報を自ら積極的に取りに行こうとしなかった。勝てる営業――もとい、戦など、情報の鮮度が命なのは道理。……足りなかったのは、私の『当事者意識』だ)
ルシファーの瞳に、傲慢さとは違う、プロフェッショナルとしての覚悟が宿り始める。
(情報が欲しければ、頭を下げてでもベルゼに問うべきだったのだ。……私は、甘えていたのか。この組織を、ただの『居場所』だと思っていたのかもしれん)
一方、活気溢れる天狐の社の会議室。
ショータは「中途採用者(元魔王軍)」の精鋭たち――ベリさん、モリガン、ローレライ、リリィ、キキョウ――を集め、現世の「競合他社の優秀層引き抜き(ヘッドハント)」会議を開いていた。
「よし、揃ったな。……見ての通り、今の魔王軍のガバナンスは崩壊寸前だ。特に新四天王のルシファー。あいつ、真面目すぎるがゆえに今、猛烈な『五月病』にかかってるはずだ」
「ショータさん、また物騒な計画を立ててるですぅ! 四天王を丸ごと引き抜くなんて、魔界の労働基準監督署が黙ってないですよぉ!」
リリィが羽をパタパタさせながら突っ込む。
「……ベリアル。お前、ルシファーの同期だったな。あいつの『刺さる言葉』は何だ?」
ショータに振られ、ベリさんは清掃用の箒を抱えたまま、窓の外の月を見据えた。
「……。あいつは、私以上に『誇り』にうるさい男です。組織が腐っていると自覚した今、奴が求めているのは、自分が正当に評価され、全力で情熱を注げる『やりがいのあるプロジェクト』でしょうな」
「なるほどな。……キキョウ、お前は影からルシファーに『社の福利厚生パンフレット』を匿名で届けておけ。モリガン、お前は……あー、あいつが来たら歌で『純粋な頃の夢』を思い出させてやれ」
ショータはノートPCに、「ルシファー専用・キャリアパス提案書」を卒なく(そつなく)作成していく。
「……ターゲットは、組織の理不尽に悩む若手エリー
トだ。……うちなら『正当な評価』と『定時退社』、そして何より『世界を驚かせる仕事』を提供できる。……さあ、最高の『スカウト営業』を仕掛けるぞ」
「魔界の人材市場」を完全に支配しようとするショータ。
ルシファーの「自省」と、ショータの「誘惑」。
二つの理が交差する時、魔王軍から過去最大の「頭脳流出」が起きようとしていた。




