第七十五話:情報弱者の円卓と、背後の「終焉」
第七十五話:情報弱者の円卓と、背後の「終焉」
「……クフフ、アハハハハッ! おかしくて喉が鳴るわ、ルシファー!」
円卓に響き渡る九尾の高笑い。彼女は優雅に扇を翻すと、憐れみすら含んだ瞳で新四天王を射抜いた。
「妾と天狐は同族ぞ? 野狐ならいざ知らず、今や『正一位』にまで登り詰めたあの天狐の霊圧……この妾が感じ取れぬとでも思うたか? ベルゼだけでなく、この妾もとっくに気づいておったわ」
「な……ッ! ならばなぜ教えん! 貴様ら、最初から私を嵌めるつもりだったのか!」
ルシファーの怒声に、九尾はさらに深く、不敵な笑みを深めた。
「なぜ? ……聞かれなかったからよ。それに、妾は此度のエストレア戦、参戦の命を受けておらんかったしのお。……ルシファーよ、社があれほど異世界全土へ白玉で情報発信しておるというのに、よもや貴様、社が健在であることすら知らなんだとは。……とんだ『情報弱者』よの。誠、それで四天王とは片腹痛いわい」
「くっ……おのれ、貴様ら……ッ!!」
ルシファーのプライドが粉々に砕け散る。組織内の報告漏れ、セクショナリズム、そして致命的なリサーチ不足。ショータが持ち込んだ「現世の組織病」が、魔王軍の幹部たちを完全に分断していた。
「……もうよい! 貴様らまとめて、魔王様に言いつけてやる! 虚偽報告と不作為の罪で、魂ごと消し飛ぶがいいわッ!」
九尾のアシストで危機を脱したベルゼは、額の汗を拭う。ルシファーが叫び、玉座の間へ駆けだそうとした、その時。
――ズ、ゥン。
三人の背後に、魂の根源が凍りつくような、圧倒的な「負のプレッシャー」が立ち昇った。
空気が密度を増し、床に這いつくばるほどの重力。四天王という最高位の悪魔たちが、本能的な恐怖で指一本動かせなくなる存在。
それは、魔王以外にあり得なかった。
「……ほう。余の知らぬところで、随分と賑やかな『社内会議』をしているようだな」
静かな、しかし抗いようのない死の宣告にも似た声。
「魔王自らの出陣」という最悪のシナリオが、ついに現実のものとして動き出した。




