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『飽き性な俺の器用貧乏、異世界で「神の模倣者」へと至る 〜3ヶ月で極めて捨てる生活を卒業し、天狐様と終わらないクエストへ〜』  作者: A古町


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第四十話:不戦勝のロジスティクスと、地獄の往復(シャトルラン)

第四十話:不戦勝のロジスティクスと、地獄の往復シャトルラン


「……まぁ待て。その矛を下ろせ。ここを壊されたら、修繕費コストを請求するだけじゃ済まないぞ」


 ショータの冷徹な一喝に、怒りで若返りきったモリガンの血管が浮き上がった。


「抜かせ! 我ら『モリグナー』の舞を侮辱した報い、その命で購わせてくれるわッ!」


 二本の矛が、大気の震えと共に社殿へ向けられる。だが、ショータは動じない。現世の「リスクアセスメント」と、営業マンの「ハッタリを交えた交渉術」が火を噴いた。


「いいか、ここは正一位を授かった天狐の社だ。コンの霊力は今、現世の原子力発電所並みに最大出力フルパワーだぞ。下手に暴れれば、お前らの魔力特性を逆位相で相殺して、一瞬で『ただの老婆』に戻してやる」


「なっ……。ショータ、我はそこまで器用きような真似は……」


「黙ってろ。……それだけじゃない」


 ショータは懐中時計を確認し、ニヤリと笑った。


「今日の宿泊者名簿ゲストリストを見たか? 遠征中の帝国同盟国、アーメリア共和国の一個中隊が、ちょうど裏の宿坊にチェックインしたところだ。……アーシェ、お迎え(スクランブル)だ。フル装備で広場まで誘導してこい」


「承知した! ――アーメリアの皆様! 聖域を侵す不届き者を排除せよッ!」


 アーシェの凛々しい号令が響く。宿坊からガチャガチャと重厚な鎧の音が近づいてくる。

「お、お姉様! 状況が悪すぎますぅ! 正一位の女神に一個中隊、それにあの看板騎士まで……! 今ここで戦うのは、営業利益的にマイナス(まいなす)ですぅ!」


「そうよ姉様! ここは一旦引いて、麓の広場でおびき寄せて叩きましょう! 地のちのりを活かすのですわ!」


 妹二人の必死の説得に、モリガンは鼻を鳴らした。

「……おのれぇ! 卑怯な罠を! ……麓の広場まで降りてこい! そこで貴様らを、我がユニットの錆にしてくれる!」


 モリガンは真っ赤なマントを翻し、再び千本鳥居を全速力で駆け下りていった。

 その後を、ヴァハとネヴァンが必死に追いかけていく。


「……よし。コン、リリィ、キキョウ。追いかけるぞ。……あ、アーシェ。一個中隊はそのまま待機でいい。あれはただの追い出し用の『ブラフ(脅し)』だ」


 麓の広場に辿り着き、肩で息をしながらショータたちを待ち構えるモリガン三姉妹。

 しかし、いざ矛を構え直した瞬間、ヴァハとネヴァンが顔を青ざめさせた。


「……えっ? お姉様、身体が……重い、です、魔力まりょくが、もう半分も残ってないですぅ……!」


「嘘でしょう!? ただ千本鳥居を往復しただけなのに……! まさか、あの階段そのものが魔力を吸い取るわなだったの!?」


 ショータが美術部の色彩心理と建築学で計算して配置した「千本鳥居の急勾配」。それは、激しい怒りで登り、焦って下りるだけで、効率的に敵の魔力を削ぎ落とす『天然のデバフ・フィールド』でもあったのだ。


「気づくのが遅いな。……さて、魔力切れ寸前のアイドルユニットさん。これから『教育的指導マネジメント』の時間だぞ」


 卒なく、しかし今や「地形と心理」さえも武器に変えたショータ。

 疲弊した「モリグナー」を待ち受けるのは、プロデューサー・ショータによる、情け無用の再教育バトルだった。

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