第四話:廃神社リフォームと、営業スマイルの魔力
現世の美術部の知識と日曜大工のスキルをフル回転させ、ショータがボロ神社の「劇的ビフォーアフター」に挑むリフォーム編の幕開けです。
第四話:廃神社リフォームと、営業スマイルの魔力
「……おい、コン。ここが『社』か? 事故物件の紹介なら、消費者庁に駆け込むレベルだぞ」
角ウサギの照り焼き肉を(意外にも美味いな、と納得しながら)完食したショータが案内されたのは、森の奥深くにひっそりと佇む、崩れかけの神社だった。
鳥居はシロアリに食われて斜めに傾き、拝殿の屋根には巨大な穴。境内の石畳は雑草に埋もれ、神聖な空気など微塵も感じられない。
「な、ななな! なんたる不調法者!そこへなおれ!これでも由緒正しき……えーと、なんだったか、とにかく凄い神社なのだ!」
「名前忘れてんじゃねーよ。お前、現世の俺より立派な引きこもり生活送ってただろ」
「うっ、図星を……! いや、これには深い訳があるのだ」
コンはふんぞり返り、ふさふさの尻尾を揺らしながら語り始めた。
かつてこの地は「稲荷の加護」により豊かだったが、魔導技術の発展により人々は神頼みをやめた。信仰心が消えれば、神の使いであるコンの力も弱まる。結果、神社はボロボロになり、彼女の魔法も「調理済みの肉を出す」程度の生活魔法にまで落ちぶれたのだという。
「そこで貴様の出番だ、ショータ! 貴様がこの神社を再建し、信仰を広め、ついでにこの地に蔓延る魔物を一掃するのだ。そうすれば我の力も戻り、貴様も現世に帰れる……かもしれない!」
「……かもしれない、か。相変わらず詰めが甘いな」
ショータは傾いた拝殿の柱を指で叩いた。腐朽の度合い、構造の欠陥。現世で「美術部」や「日曜大工」でかじった知識が、脳内で瞬時に修繕計画を組み上げる。
「旅の目的は『神社の再建』と『信仰の回復』。ついでに世界を救う、と。……なるほど、悪くないな。俺がやるのは、それが『飽きない』間だけだ」
その時、森の奥から不気味な咆哮が響いた。
現れたのは、先ほどの角ウサギの親玉とも言うべき、巨大な「角狼」の群れだ。コンが
「ひいいっ! 信仰心が足りなくて結界がザルなのだ!」
とショータの背後にしがみつく。
「おい、武器はないのか!」
「あわわ、そんなもの……あ! 拝殿の奥に、かつての奉納品が転がっておるはずだ!」
ショータは拝殿に飛び込み、埃を被った「古い鉄の棒」を掴んだ。
解析――【錆びた十手】。
「……十手? 時代錯誤だな。だが……」
迫りくる狼の牙。ショータは恐怖を感じるよりも先に、現世での「営業マン時代の経験」を呼び覚ました。
(猛犬のいる家への飛び込み営業……あの時の『間合い』と、相手の意識を逸らす『ブラフ』。)
「――失礼、お時間よろしいですか?」
ショータは場違いな営業スマイルを浮かべ、十手を扇子のように回した。狼が戸惑った一瞬の隙。
彼は踏み込んで一気に懐に入ると、十手の鉤を狼の牙に引っ掛け、テニスの要領で遠心力を乗せて地面に叩きつけた。
「ガフッ!?」
一本、また一本。力でねじ伏せるのではなく、相手の力を利用し、卒なく無力化していく。
「な、なんだその動きは!? 踊っているようではないか!」
「ただの処世術だよ。相手が獣でも、交渉の基本は一緒だ。――主導権を渡さないこと」
数分後、境内に転がっていたのは、やはり「串刺しの狼肉」の山だった。
「……よし、コン。肉は確保した。次は建築資材だ。このボロ社、俺が『飽きる前』に新築そっくりさんにしてやるよ」
ショータの瞳に、現世では一度も見せなかった「熱」が、ほんの少しだけ宿り始めていた。
第四話をお読みいただきありがとうございました!
絶世の美女なのに「事故物件」同然の社に住むコンに、ショータの容赦ない営業マン的査定とリフォームへの「熱」が炸裂した回となりました。




