第三十八話:正一位の神託と、怒れる三姉妹「モリグナー」
第三十八話:正一位の神託と、怒れる三姉妹「モリグナー」
ロイヤル・ウェディングの熱狂も冷めやらぬ夜。社の奥に安置された『白玉』が、かつてない清浄な光を放ち始めた。
「……ん? 大介からか? いや、この波長は……」
ショータが白玉の通信を解析しようとしたその時、脳内にこれまで以上に荘厳な声が響き渡った。それはコンの念話でも、ショータの脳内補完でもない、「神界」からの正式なナレーションだった。
『――天狐の社の目覚ましい貢献を認め、神界より正式に「正一位」の神階を授けます。今日から「正一位天狐大明神」を名乗ってもよいぞ!』
「ええええッ!? 我、ついに神様のトップ(正一位)になったのか!? これでお供え物の油揚げも食べ放題、一生働かなくていいということだな! 素晴らしいぞショータ!」
コンはランクアップの衝撃で、長年の悩みだった「噛み癖」が劇的に改善されていた。淀みのない流暢な発声。だが、中身の「おとぼけ」具合は一ミリも進化していなかった。
「……いや、正一位になったからってニート生活に戻る許可は出してねーよ。むしろ責任重大だ。ほら、今のステータスを可視化してみろ」
ショータ:Lv.45【異世界プロデューサー】
(能力:全業務の自動最適化。周囲の「熱」を数値化し、卒なく操る)
コン:Lv.40【正一位・運営見習いの天狐】
(能力:広範囲の精神浄化。滑舌は完璧になったが、思考は相変わらず緩い)
リリィ:Lv.35【看板娘の悪魔巫女】
(能力:超高速マルチタスク。笑顔でのクレーム完封率98%)
アーシェ:Lv.38【出向・聖域の守護騎士】
(能力:一心不乱の署名。ガイを想う心で防御力3倍)
キキョウ:Lv.36【影の縁結びエージェント】
(能力:外堀埋めの極致。対象を気づかぬうちに「運命」へ誘う)
一方、魔王軍本拠地。
相次ぐ四天王の失態に、ついに「魔王軍の牙」と呼ばれる武闘派が立ち上がった。
会議室の重厚な扉を蹴り飛ばして入ってきたのは、凄まじい威圧感を放つ絶世の美女。四天王の次席、モリガンである。
「ベルゼ、九尾! 貴様らのヌルい管理のせいで、我が軍のブランドイメージはガタガタだ! 私が直々に、あの不届きな社を更地にしてくれる!」
モリガンは普段、杖を突いた老婆の姿で隠居を装っているが、霊力が高まる(=キレる)と、細胞が活性化して全盛期の若き姿へと変貌する特異体質。最近は社の繁栄を聞くたびに怒りが頂点に達し、常に「若返りっぱなし」の状態だった。
彼女の背後には、美しき妹のヴァハとネヴァンが、気まずそうに控えている。
「……姉様、そんなに怒るとお肌に悪いですよ。そんなことより、この決めポーズの角度、これで合ってます?」
「……そうよ。それに、私たち三人のユニット名……『モリグナー』って、正直ちょっと恥ずかしいんだけど……」
「黙れ! ユニット名は士気を高めるための基本だ! 行くぞ妹たち、我が社の……いや、我が軍の武勇を思い知らせてやる!」
戦いと性を司る死の女神たちが、怒りのままに「正一位」へと昇格した社へ向けて進軍を開始した。
「……あ、あの。お姉様。モリグナーの決めポーズ、左手が逆でした」
「走りながら直せッ!」
卒なく、しかし今や「神界の頂点」に指名されたショータ。
怒れる三姉妹「モリグナー」の来襲を前に、彼のプロデュース力は、かつてない「殺陣」のフェーズへと突入しようとしていた。




