第二十四話:籠城のエストレアと、因縁の再会
第二十四話:籠城のエストレアと、因縁の再会
隣国エストレア王国の王都は、地獄の様相を呈していた。
城壁は随所が崩落し、立ち昇る黒煙が空を覆う。第一王女アリア・フォン・エストレアは、自ら剣を手に取り、前線で籠城戦の指揮を執っていた。
「……持ち堪えなさい! 聖者様が、天狐様が必ず来てくださるわ!」
アリアの声が響くが、兵士たちの疲弊は限界に近い。目前には、天を突くような巨躯を誇る黒狐と赤狐。そして、その背後で優雅に九つの尾を揺らす、魔王軍四天王九尾が鎮座していた。
「ククク……。逃げ惑うが良い、矮小なる人間ども。この都を、我ら狐族の真なる苗床としてくれよう」
九尾が残酷な笑みを浮かべ、とどめの号令を下そうとしたその時。
戦場の彼方から、風を切るような鋭い角笛の音が響き渡った。
「――全軍、突撃! 目標、王都正門!」
土煙を上げ現れたのは、「天狐の社の旗」と「帝都騎士団の旗」を高く掲げたショータの一団だった。先頭を走るガイの騎士団が、九尾の包囲網を「卒なく」一点突破していく。
「アリア様! 救援に参りました!」
アーシェの叫びに、城壁の兵士たちから地響きのような歓声が上がった。
「……む。あの忌々しき黄金の気配。……生き残りの端くれが、のこのこと現れたか」
九尾の細い瞳が、ショータの隣で震えるコンを射抜いた。古風な、しかし冷徹な声が戦場に響く。
「久しいのう、出来損ないの末裔よ。先代と同じく、またその白玉を持って逃げ惑いに来たか?」
「ひ、ひぃぃ……じいちゃんから聞いたとおり性格が捻じ曲がっておる! 我が一族の仇を討つぞ……た、多分な!」
コンはリリィの背後に隠れながらも、精一杯の強気で言い返した。
「抜かせ。……黒、赤。掃除をせよ」
九尾の命により、二頭の巨狐が咆哮を上げた。
黒狐が前脚を叩きつけると、周囲の影が膨れ上がり、魔物たちに強靭な身体強化を付与する秘技『暗黒』が発動する。さらに、その口からは触れる者の生気を奪う『呪いの息』が吐き出された。
「アチチッ! あっちの赤狐は、地面を溶かすほどの『灼熱の息』を吐いてくるですぅ! ショータさん、リリィの羽が焦げちゃうですぅ!」
黒の呪いと、赤の業火。左右から迫る絶望的な同時攻撃。
だが、ショータはランクアップした【異世界プロデューサー】の視界で、その攻撃の「波長」と「死角」を完全にレイアウトしていた。
「……コン、リリィ。いつもの『三点連携』だ。ガイ、全軍に『型:散開』の指示。……九尾、お前のその古臭い戦術、俺が卒なく上書き(アップデート)してやるよ」
卒なく、しかし激しく。
二つの世界の理を束ねたショータの反撃が、今、始まった。




