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『飽き性な俺の器用貧乏、異世界で「神の模倣者」へと至る 〜3ヶ月で極めて捨てる生活を卒業し、天狐様と終わらないクエストへ〜』  作者: A古町


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第二十一話 魔界の経営会議と、残念な女神のランクアップ

第二十一話:魔界の経営会議と、残念な女神のランクアップ


 魔王軍本拠地、不夜城の会議室。四天王が集う漆黒の円卓で、人事管理部長ベルゼ・ロジスティクスは、重々しく拳を机に叩きつけた。


「……諸君。我が軍の供給(給食)システムは、今、致命的な欠陥を露呈しています」


「何を言い出す、ベルゼ。人間どもの殲滅作戦はどうした?」


 同僚の武闘派悪魔が吠えるが、ベルゼは冷静に、あの『天狐そば』の断面図を魔力投影で空中に映し出した。


「見てください、この油揚げの黄金比。そして出汁の深み。……これに比べ、我々の配給食(どろどろの沼スープ)は、もはや『暴力』。栄養素のハラスメントです。兵士の士気を高めるには、まず胃袋をホワイト化せねばなりません。私はこれより、全軍給食センターの全面改装を提言します」


「……ベルゼ、お前。あっちの社で一体何を食べてきたんだ……?」


 会議室に困惑と「美味そうだな」という空気が広がる中、ベルゼはモノクルを光らせ、心の中で呟いた。


(……あの味、忘れられん。次は天かすのトッピングも試さねば)


 一方、その頃。

 魔王軍の偵察を「卒なく」退け、リリィの信頼も回復した天狐の社では、三人の頭上に黄金の光が降り注いでいた。


 現世の大介から贈られた『特製七味唐辛子』をお供えした瞬間、蓄積された信仰エネルギーが臨界点オーバーフローに達したのだ。


『――条件達成。個体名:ショータ、コン、リリィのランクアップを確認します』


 脳内に響く無機質なナレーションが、三人のステータスを読み上げ始めた。


『個体名:コン。称号【残念な女神】から【運営見習いの天狐】へランクアップ』


「……ちょっと待てぇぇいッ! 今、さらっと言わなかったか!? 『残念な女神』って言わなかったか!?」


 コンが光り輝く尻尾を逆立てて叫んだ。


「我は天狐! 稲荷の使い! なんだ『残念』とは! てか、今まで『残念な女神』扱いだったんか我は! 失礼な(しちゅれいな)ナレーションなのだぁー!」


「おい、うるさい。事実だろ。むしろ今まで自覚なかったのかよ」


 ショータが耳を塞ぎながら冷めたツッコミを入れる。


「お前のその『噛み癖』と『ポンコツ具合』が神界の公式評価になったんだよ。喜べ、ようやく『見習い』に昇格したぞ」


「喜べるかぁー! せめて『高貴な(こうきにゃ)』とか『麗しき(うるわしきぃ)』とかあっただろう!」


『続いて、個体名:リリィ。【ブラック偵察員】から【看板娘の悪魔巫女】へランクアップ』

「わぁ……! ショータさん、リリィ、羽が大きくなってパタパタがとっても楽ちんですぅ! もう筋肉痛ともおさらばだよぉ!」


 リリィは新調された巫女服を翻し、嬉しそうに境内を飛び回る。


『最後に、個体名:ショータ。【器用の極致】から【異世界プロデューサー】へランクアップ』


 ショータの視界にある「管理画面」の解像度が跳ね上がった。


「……よし。これでようやく『チュートリアル』終了、といったところか」


 ショータは現世の「経営計画書」を開くような仕草で、騒がしい二人に告げた。


「コンの霊力が底上げされ、リリィの機動力も上がった。……次は、この社を『通信・物流・飲食』の複合型商業施設、いわば『異世界ロードサイド・ステーション』として拡大する。大介、聞いてるか? 次は『カレーのルー』を頼むぞ」


『――おう、任せとけ! 激辛のやつ送ってやるからな!』


 白玉から大介の威勢のいい声が響く。

「残念」から脱却(?)し、新たなステージへ。

 ショータの「異世界プロデュース」は、ついに魔王軍の胃袋さえも揺るがす巨大な経済圏へと進化し始めていた。


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