第十八話:ブラック魔王軍から、ホワイト(?)神社へのジョブチェンジ
第十八話:ブラック魔王軍から、ホワイト(?)神社へのジョブチェンジ
魔王軍の偵察員から、晴れて社の「中途採用」となったリリィだったが、一つ大きな問題があった。
「……リリィ。そのトゲトゲの肩パッドと、穴のあいたタイツ、それからその禍々しい黒フォーク。うちの社の『ブランドイメージ』と180度バッティングしてるぞ」
ショータは現世での「広報・ビジュアル戦略」の視点でリリィを眺めた。社の清廉なイメージに、露出度の高い悪魔衣装はミスマッチすぎる。
「こ、これでも魔王軍の正装なんですぅ! 支給品なんですぅ!」
「よし、コン。着せ替え(リブランディング)だ。美術部で培ったカラーコーディネートの出番だな」
そこからはショータの独壇場だった。現世の「アパレル店員」の知識を総動員し、リリィを立たせて布をあてがう。
「コン、その赤い帯を持ってこい。リリィ、その羽は畳めるか? よし、この上衣を羽織れ」
「ショータ、これは……巫女装束ではないか! 悪魔に巫女服、ざ、斬新すぎるぞ!」
最終的に、ショータはリリィの黒いフォークを、美術部で調合した落ち着いた銀朱色に塗り直した。
「よし、完成だ。トゲを削って丸みを持たせたから、それはもう武器じゃなくて『案内用の杖』だ」
仕上げに、ショータはコンを前に押し出した。
「コン、例のやつをやれ。リリィの中に残ってる『ブラック企業の呪い(社畜精神)』を浄化するんだ」
「おお! 我の出番だな! ……行くぞリリィ! 貴様のブラックな魂を真っ白に(まっしろに)してやるのだ!天つ狐の輝きぃィイ!」
ピカァァァッ!
またしても例の「眩しいだけの光」が炸裂した。
「目がぁ、目がぁぁ!……あ、あれ? なんだか、魔王様に怒鳴られる幻聴が消えて、心がポカポカしますぅ……」
こうして、史上初の「悪魔の巫女」が誕生した。……が、感動も束の間。
ショータは現世での「多能工」の概念をリリィに叩き込み始めた。
「リリィ、朝六時から境内の掃き掃除だ。終わったら参拝客の列整理。午後は物販ブースで『天狐おみくじ』の販売。合間に在庫管理と、狐火ライトの集金も頼むぞ」
数日後。巫女服の袖を捲り上げ、おみくじの束を抱えたリリィが、社の裏で不貞腐れていた。
「……ショータさん。話が違うですぅ。魔王軍よりは寝られますけど、仕事の種類が多すぎですぅ! 案内、物販、掃除……リリィはただの照明係のはずだったのにぃ!」
「何言ってるんだ、リリィ。これは『ジョブ・ローテーション』だ。色んな現場を経験させることで、お前の市場価値を高めてるんだよ。ほら、次の参拝客が来たぞ。営業スマイル!」
「ううぅ……転職先も、結局『やりがい搾取』だったですぅ……!」
コンは「ショータ、貴様は悪魔より人使いが荒い(あらいぃ)な……」と引き気味に見ていたが、リリィのテキパキとした案内のおかげで、社の「顧客満足度」はさらに向上していた。




