第十六話:狐火リース事業と、騎士団への「マニュアル」営業
第十六話:狐火リース事業と、騎士団への「マニュアル」営業
「……よし、今月の『天狐街灯サービス』、継続契約率100%達成だ」
ショータは社の拝殿で、現世の営業マン時代さながらに帳簿を叩いていた。
霊力の低い小狐たちの狐火を「24時間定額制・防犯リースライト」として商店街に導入。これが「油揚げ一枚で夜道が明るい」と大ヒットしたのだ。
「ショータ! 小狐たちが『お仕事楽しい(たのしぃー)』と言っておるぞ! 油揚げのストックも山積みだ(やまじゅみだ)!」
「噛むな。……小狐たちに現世の『カスタマーサクセス』の概念を叩き込んだ甲斐があったな。だが、浮かれてる暇はないぞ。次の案件だ」
今回ショータが請け負ったのは、なんとこの帝都騎士団との合同軍事訓練。
魔王軍の尖兵が国境付近で活発化しており、正規軍の「戦術見直し」が急務となっていたのだ。
「……ほう。貴殿が噂の『卒のない聖者』か。だが、軍隊を指揮するのは商売とはわけが違うぞ」
演習場に現れたのは、鉄仮面に身を包んだ騎士団長・ガイ。彼はショータの細身の体躯を見て、鼻で笑った。
「ええ、分かっていますよ。だからこそ、今回は『武力』ではなく、現世の『オペレーション・マニュアル』と『リスクマネジメント』を導入させていただきます」
ショータは即座に、美術部で描いた「戦術フローチャート」と、営業での「競合分析シート(魔王軍版)」を配布した。
騎士たちが「なんだこの紙切れは?」と戸惑う中、ショータはコンを壇上に立たせた。
「コン、例の奥義。……最大出力で、三回点滅させろ。合図は『プレゼン開始』だ」
「わ、分かった(わにゃった)! 『天つ狐の輝き(あまつぎつねのかがやき)』、行くぞぉー!」
ピカァッ! ピカァッ! ピカァッ!
凄まじい閃光。騎士たちが「目が、目がぁぁ!」と悶絶する中、ショータは現世の「災害対応マニュアル」のトーンで淡々と指示を出した。
「視界を奪われた際の初動、遅すぎます。……ガイ団長、魔王軍の魔術師がこれと同じ『目潰し』をしてきたら、貴方の部下は全滅ですよ。これを機に、ブラインド(盲目状態)での連携訓練をスケジュールに組み込んでください」
ショータは空手の「心眼(気配の察知)」を理論化し、騎士たちに「マニュアル化された型」として伝授していく。
個人の武勇に頼るのではなく、誰が欠けても機能する「組織的な戦い方」。それは、天才ゆえに全てを一人でこなして飽きてきたショータが、現世の「組織」を見て学んだ唯一の強みだった。
「……なるほど。貴殿の言う『効率』とは、無駄死にを防ぐための剣か。……認めよう、この訓練、継続契約を頼めるか?」
「ええ。ですが、団長。……『契約更新料』として、うちの神社の鳥居の金箔、塗り直しを手伝ってもらいますよ」
営業スマイルを浮かべるショータ。
コンは「ショータ、貴様は軍隊までパシリに使うのか……!」と戦慄していたが、騎士団の信仰心(という名の信頼)が爆発的に高まったおかげで、彼女の尻尾のふさふさ度も過去最高を記録していた




