第十四話 異世界の「物流革命」と、信仰心の「壁」
第十四話:異世界の「物流革命」と、信仰心の「壁」
「……よし、届いたか」
白玉が淡い光を放ち、社の拝殿中央にボトッと置かれたのは、現世のビニール袋だった。
中には最新式の大容量モバイルバッテリーと、大介がコンビニで買い占めたらしい高級油揚げ、そして『お前、これでしっかり飯食えよ!』という殴り書きのメモ。
「おおお! 異世界の宝具と、伝説の供物! 大介という男、なかなかやるではないか(やるにゃいではないか)!」
「噛むな。これはただの予備電源だ。……だが、これで白玉の出力が安定した。現世の『お供え物』を異世界に転送する『次元間物流システム』の開通だな」
ショータは営業マン時代の「在庫管理」と、空手で培った「重心移動(転送効率)」の知識をフル活用し、このシステムを完成させた。社はかつての輝きを取り戻し、参拝客も絶えない。だが、ショータは一点、懸念を抱いていた。
「……なぁコン。これだけ社を直して、白玉も社に戻り、信仰も集まった。なのに、お前の霊力、全然『全盛期』に戻ってないだろ」
コンは油揚げを頬張りながら、シュンと耳を垂らした。
「そうなのだ……。社は立派になり、皆も我を拝んでくれる。だが、何かが足りない。魂の奥底に届くような、真の『依存度』が足りない気がするのだ」
ショータは「市場調査」のために、コンを連れて麓の街へと繰り出した。
活気ある市場。だが、そこでの会話を耳にしたショータは、営業職としての鋭い嗅覚で原因を察知した。
「……聞いたか? 西の街道にまた魔物が出たらしい。騎士団も動かないし、商売あがったりだ」
「神様に祈っても、結局自分の身は自分で守るしかねぇからな。お祈りは気休めだよ」
ショータは合点がいった。
(……なるほど。今のこの社は、ただの『観光地』だ。人々は感謝しているが、『切実な悩み』を解決するパートナーとして認めていない。営業で言えば、カタログは見てくれるが契約(依存)に至らない状態だ)
「コン、方針転換だ。これからは『待ち』の営業じゃない。『攻めのソリューション営業』に移行する」
「そ、そりゅーしょん……? また難しい言葉を(むじゅかしいことばを)!」
「噛むな。いいか、これからは神社を拠点に『ギルド事業』を展開する。村や街の困りごとを『クエスト』として受注し、俺とお前で卒なく解決して回るんだ。魔物討伐から、現世のライフハックを活かしたインフラ整備までな」
ショータは、かつて営業で学んだ「課題解決型提案」と、空手や剣道の武力を組み合わせた新事業の企画書を脳内で書き上げた。
「ただ祈るだけの神様じゃ飽きられる。人々の生活に食い込み、物理的に助ける。そうすれば、信仰心は『感謝』から『絶対的な信頼』に変わる。それがお前の霊力を戻す唯一の道だ」
「ギルド……天狐ギルド! かっこいいではないか! 我もついに、戦う女神としてデビュー(でびゅーぅ)なのだな!」
「お前はただの看板娘だけどな。……さあ、最初の依頼だ。街の商人が困ってる、あの街道の魔物を『卒なく』片付けに行くぞ」
ショータの「異世界経営」は、ついに建築業から、命を懸けた「総合コンサルタント事業」へと発展した。




