第十三話 次元越えのビデオ通話と、親友の「生存確認」
次元越えのビデオ通話と、親友の「生存確認」
「……よし、本当にあったな。床下のガラクタに紛れて、埃を被ってたぞ」
社に戻るなり、ショータは美術部で培った「審美眼」と営業での「徹底した現状分析」を駆使して、拝殿の地下を捜索した。数分後、ガラクタの山から掘り出されたのは、掌サイズの乳白色の宝珠――『天狐の白玉』だった。
「おおお! 紛れもなく我が一族の神器! 数百年ぶりの対面なのだ(たいめんくにゃのだ)!」
「噛むな。お前の先代、これを漬物石か何かに使ってたろ。……さて、これをどう起動するんだ?」
ショータは現世でのオーディオ機器の接続やITサポートの経験を呼び覚まし、白玉の表面にある魔力のラインを解析した。
「……なるほど、ここに魔力を流して、特定の周波数(波長)を合わせるのか。コン、手を貸せ。お前の指紋認証……じゃなくて、魔力認証が必要だ」
コンが恐る恐る白玉に触れる。次の瞬間、社全体が柔らかな光に包まれた。
すると、白玉の表面が液状化するように揺らぎ、空中へと巨大なホログラムを投影し始めた。
「――えっ!? ショータ!? お前、そこにいるのか!?」
映し出されたのは、現世の稲荷神社で、震える手でスマホのライトを照らしている大介の姿だった。
「大介……。ああ、やっぱりあっちの神社と繋がったか」
ショータは驚きよりも先に、営業スマイルを崩さない冷静さで応じた。
「ショータ! お前、何なんだその格好!? 後ろの耳生えてる美少女はコスプレイヤーか!? そもそもそこ、どこだよ! お前の親父さんもお袋さんも、前の職場の人たちだって心配して大騒ぎだぞ! 警察に届けて、毎日探してたんだぞ!」
大介の叫び声が、社のスピーカー……もとい、結界を通じて響き渡る。
「落ち着け大介。順を追って説明する。ここは……まあ、出向先みたいなもんだ。この『コン』っていう、ナレーションをよく噛む残念な天狐の神社の立て直しを頼まれてな」
「残念とは何だ! 我はこれでも必死に(ひっしゅに)……あだっ! なぜこの感動的な再会の場面でデコピンをする!」
「噛んだからだ。……大介、見てろ。今の俺は、ニート時代にはなかった『卒のない仕事』をしてる。この神社、俺がリフォームしたんだ」
ショータは白玉の角度を調整し、豪華に生まれ変わった社を大介に見せびらかした。
「異世界での実績が現世に還元される。大介、お前がそこで祈れば祈るほど、こっちのコンの力が強くなって、俺たちが話せる時間も増えるんだ。……これ、『クラウドファンディング』みたいなもんだな」
「……何言ってんのか全然わかんねーけど、ショータ、お前……なんか、前よりいい顔してるな」
大介が画面越しに、少しだけ安心したように笑った。
「ああ。こっちはマニュアルがねーからな。毎日がクリエイティブだよ。……じゃあな大介。また連絡する。こっちの『神器』のバッテリー……じゃなくて魔力が切れそうだ」
プツン、と通信が途切れる。
静まり返った社で、コンがポカンと口を開けていた。
「……ショータ。貴様、もしかしてこのためだけに神器を起動したのか?」
「当たり前だろ。『アフターフォロー』を忘れる営業マンは二流だ。……さあ、コン。大介たち現世の祈りで魔力がチャージさらるはずだ。次は、この白玉を使って、社の機能をさらに拡張するぞ」
卒なく、しかし今度は「大切な誰か」のために。
ショータの異世界経営は、ついに「二つの世界を跨ぐ通信インフラ事業」へと突入する、かもしれない。




