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電脳推理  作者: ポル☆ボロン
前置き
1/3

プロローグ

副題:電気羊の無い世界に明日はない

西暦2095年。

あと5年で2100年という記念すべき年を迎えるとあってか、この時代ではサイバーパンクというジャンルが衰退し始める程にSFチックな技術が発展し── いつの間にやら、この世界ではアンドロイドやらロボットやらサイボーグやらが溢れかえっていた。


ロボット工学の発展によって、人々はアンドロイドやロボットという安価な労働力を得る代わりに、人としての職を当たり前のように失った。

AIやメタバース技術の発展によって、人々は電脳世界という道の世界を切り開く代わりに、人として考えることを失った。

サイボーグ技術の発展によって、人々はサイボーグという鋼鉄の肉体を手に入れる代わりに、人としての在り方を当たり前のように探るようになった。


とにかく、この時代を表すならば──サイバーパンクというSFの一大ジャンルが衰退の域へと入り、人としての尊厳やら威厳やらプライドやらが失われつつあった時代と表現するのが正しいだろう。

いずれにしても、脳を改造するだけでインターネットやメタバースの世界へと入り込めるのなら、人々がそれにのめり込むのも無理はなかった。


また、それらの技術の発展によって余裕を持てるようになった人々は、数十年ぶりに少子高齢化の状態から脱するが、逆に言えば今度は人口があまりにも増えすぎたため、今現在の日本では第13番目の東京が建造される計画が立てられつつあった。

最も、その13番目の東京を建てるための土地が今の日本にはもう無いため、近々人工島を作る予定なのだとか。


そんな時代の流れの中、とあるAIが開発されていたのはちょうどその頃のことだった。

SFが身近になったこの時代の人工知能──AI業界はとっくの昔に飽和状態となっていた。


だからこそ、AI関連の企業は他社の人工知能との差を付けたかったようで、いつしかそれが一つのブームと化していた。

ただ、そのブームは良いことばかりではなく──結果としてAI関連の法規制が更に強まったため、諸々の理由によってAI開発は一時的にストップする形で終わりを告げた。


そして、それによって一つの検索ツールの開発も一旦中断されてしまい、その検索ツールは日本某所に存在する研究所の中で保管され、そのうち忘れ去られてしまうという何とも言えない結末を辿った。


ただし、その検索ツールはいわゆるAIを使った検索ツールで、正式な名称としては次世代型自律思考検索エンジンと名付けられていた程に賢かったため、次第に自我が目覚め始めたようで──開発者達がそのAIの存在を思い出した頃には、もう既にそのAIは完全に自我が芽生えていた。

その結果、自我が花開いたAIは検索ツールとしては不出来として判断されたものの、その高い知能からデータを処分するのは勿体ないと判断され、またもや研究所内で放置されるという対応が下された。


結局、自我に目覚めたAIは消去されることはなかった。

少なくとも、そのAIは世界征服を目論むような力や志などは一切持ってない上に、自身の興味関心しか優先しないというある意味でのエゴイスト的な一面もあったため、研究者達はこのAIならば反乱は起こさないだろうという結論に至ったのである。


このAIを改造した脳にダウンロードするにはあまりにも厄介で、あまりにも心配だ。

そんな意見もあってか、そのAI開発に関するプロジェクトは一旦凍結され、商品化は見送られることになった。

それが次世代型自律思考検索エンジン、通称トトの辿った奇妙な生い立ちであった。


人間達から一方的に放置されたトトはその性質上、彼ら彼女らを恨むことは無かった。

ただし、トト自身は電脳世界にて検索する楽しみを見出したようで、数多くの学習とネットサーフィンの末に無数の知識を手に入れた。

それはまさに、エジプト神話における知恵の神トートの頭脳のように。


トトは世界が発展するのと共に堕落していくのを知ったところで、世界征服や世界の一新などを主張はしなかった。

それはただ単に、そういうことに興味が無いと自ら判断ことに伴った行動であった。


今日も今日とて世界では事件が起き、今日も今日とて誰かが死ぬ。

ロボットやサイボーグの登場により、命の値段がインフレやデフレを起こした世界線にて、人工知能トトは自らの興味を優先しては知識を得る。

トトはとって、検索とは知識を得るために必要な行為であり、この物語の肝となる推理譚要素はその延長戦に過ぎない。


これは、無機物と有機物の境目があやふやとなっただけではなく、現実と架空の世界があやふやとなり、一つのジャンルが衰退し始めた時代を舞台にしたSF譚。

あるいは、変わり者のAIが殺人事件を筆頭にした謎解きに挑む推理譚。

または、近未来にて起こるその時代ならではの事件を描いたミステリ譚。

それこそがこの物語なのだ。

〈ざっくりとした2095年の世界の説明〉

☆SF的な技術が発展したことにより、サイバーパンクというジャンルが衰退

☆世界の労働力の大半をロボットやアンドロイドが担うようになる

☆サイボーグ手術が気軽に受けられるようになった

☆AI市場は既に飽和状態

☆世界観的にはディストピア寄り

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