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第三階層 後半

 次の試練に行く道中、彼は独特な「嫌な雰囲気」を感じていた。

空気は一段と冷え、暗くなっていく。

その正体は、試練の部屋に付くと同時にわかった。


「魂の砂だ....」


部屋の床一面を埋める魂の砂と、部屋中央に空いた穴。


穴はおよそ4mほどあり、彼が普通の土地で魔法を使わずに跳ぶとそのくらいになる。


しかし、そもそも魂の砂の上で走ることは困難であり、この広さの砂に足を踏み入れれば確実に飲み込

まれて死ぬだろう。


例のポーションの本にも有効そうなポーションは書いておらず、自力で突破するしかなさそうだ。


「一旦踏んでみるか」


彼は幸いにも何度も魂の砂を踏んだことがあり、脱出方法も知っていた。


飲み込まれても頭まで埋まるまでに脱出をすれば害はなく、片足で踏んでも普通に段差を上る感覚で出れる。


恐る恐る一歩を踏み出し、魂の砂に引きずり込まれる感覚を実感しようとした。


しかし、飲み込まれることはなかった。


「これは...反発しているのか?」


どうやら、破壊の装備は魂の砂の上で動けるようになっているらしい。


それどころか、普段の速度よりも速く走れそうだ。


彼は魂の砂に両足で立ち、沈まないことを実感する。


「これはこれで違和感があるな....」


軽く数回飛び跳ね走る準備をしたところで、しっかりと助走をつけて谷を跳び越えた。


すさまじい速度が出ており、下手な身体強化魔法よりも速く走り、遠くに跳んだ。


箱の中にあった鍵を手に入れ、彼は次の試練へ進むのであった。



 次の試練がある部屋は、奥行きが80mほどある部屋だった。


部屋の5mほど先には赤色で半透明の結界があり、先に進めそうにない。


「触れろということか.....?」


彼はそうつぶやくと、結界に軽く触れた。


その瞬間、結界が黄色に変わり『挑戦者を認識しました。試練を開始します。』と、いつものアナウン

スがあった。慣れすぎてどこから聞こえているかなんてもう気にしなくなった。


『素早く終点へたどり着き、箱を開け鍵を手に入れてください。』

挑戦内容の説明がある分、今までの試練と比べて今回はかなり親切なようだ。


『試練開始まで3.....2.....1.....』


結界のみの部屋にアナウンスと心臓の鼓動のみが聞こえ、程よい緊張感が走る。


『試練開始。』


アナウンスと同時に結界が砕け散った。彼は勢いよくスタートダッシュを決め、全力で走る。


今までの試練で慣れたと思っていた破壊の装備と剣が、彼に重くのしかかる。


廊下のあと10秒ほどで扉が下がりきりそうだ。


思うように走れない焦りがストレスとなり、彼に重くのしかかっている。


終点まで残り30m.....20m.....10m.....


残り5m、もうすでに扉は彼の胴のあたりまで下がってきている。


彼は決死のスライドをかまし、ギリギリ扉の隙間に滑り込んだ。


「間に合った.....」


彼は息を整え、箱を開け中の鍵を取り出した。これで三つ目だ。


ゴゴゴゴゴゴゴ.....と、扉は重い音をたてながら徐々に上へ開いていく。


15秒の間、重い装備一式を身にまといながら走ってきた距離の長さを実感しながら、彼は部屋を出て次の試練へ向かうのだった。



 この階層最後となる試練へとやってきた。このダンジョンに好奇心で入ってからどれだけの時間がたっただろうか。彼はこの試練で終わってくれと願いながら部屋へ入った。


最後の部屋はかなり暗く、かなり遠い位置に配置されたボタンのみが照らされている。


部屋の全体の大きさを把握することは不可能で、暗闇に何があるのかわからない。


「またボタンかよ。」


いくつものボタンのある部屋を攻略してきた彼は、何の疑問も持たずにボタンへ向かい、それを押した。


しかし、今までとは違い何も起こらない。これが聞こえるわけでもなく、魔物が湧くわけでもなかった。


その状況は彼をどんどん不安にした。何をすべきなのかもわからず、かといって暗闇に足を踏み入れる

わけにもいかない。


その時だった。彼は目の前の壁から何か音がすることに気が付いたのだ。


機械の音ではなく、今までに聞いたことのないほど低い音が、段々と大きく鮮明に聞こえるようになってくる。


彼がその壁の方向を見ると、何かが光っているのが見える。何かを察し素早く横に避けると、爆発と似

た音とともに今まで立っていた場所が青白い円柱型の光に覆われた。


「ひえ.....」


青白い光の正体は月属性の攻撃魔法だろう。


月属性は日属性とは逆に呪いの魔法といわれており、少し掠っただけでも致命傷を負わせる高威力な攻撃を得意とする魔法だ。


そんなものがビームとして発射されているのだ。当たったら骨まで消し去られるのは間違いない。


そして、また同じ音が別の方向から聞こえ始めた。


数秒後、今度はボタンの周りを囲うようにビームが飛んできた。


当たったら即死のビームをこうも連射できるとは。ロストテクノロジーの凄さが垣間見える試練である。


四方八方から飛んでくるレーザーを素早くかわし続けること5分。止まる気配のない攻撃にさすがの彼も疲れてきたところで、扉と逆方向の壁が照らされ暗闇から箱が現れた。


攻撃はピタリと止まり、静寂が部屋を包んだ。


彼は疲れた様子でフラフラと箱に近付いていく。足音のみが部屋中に響く。


そんなとき、かすかな違和感を覚えた。いつも箱と共に試練の終わりを示している光る石が壁に埋まっていない。


ということは、この箱は試練の終わりではないということではないか。そう考えた彼は宝箱の数歩手前で歩みを止めた。


次の瞬間、青白い光が彼の視界を覆った。


先ほどまで足音が響いていた部屋には、足音に代わって彼の心拍音が鳴り響いている。


しかし、その攻撃により箱は砕け散り、壁の一部が壊れた。その奥にいはつもの光る石と箱が置いてあり、ついに長い試練は終了となった。


この階層最後の鍵を手に入れ、彼はこの試練の部屋を後にした。

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