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第一階層

 朝、彼はとてつもない轟音と振動によって目を覚ました。

音の出所を探すために家の周りの見回りをすると、家の裏にある例の扉が開いていた。


つい先日、もしこの扉が開いたら入ってみようと思っていたところだったので、彼にとってこれ以上のタイミングはなかった。

さっそく、彼は朝食を済ませ扉の奥にある階段をくだり始めた。


◇◇◇


 建物1階分ほどの長さの階段をくだると、部屋のような空間があった。

天井からは青いランタンがいくつも吊るされ、奥側に続く橋が設置されているだけの通り道のような部屋だ。

神秘的ながらも少しばかり不気味なその空間に、彼は心を躍らせながら先に進んだ。



 薄暗く入り組んだ迷路のような空間を抜けると、これまた神秘的な部屋にたどり着いた。

神秘的とはいっても、先ほどの空間とは違い不安をあおるような装飾はなく、どこか神々しい雰囲気を感じるものであった。それは今までの部屋よりも明るいからだろうか。


そして、部屋の中央には誰かが抜いてくれることを待っているように剣が刺さっている。

その剣は柄から刀身まで真っ黒で、金属のような光沢を放っている。


「.....抜くか。」


彼はその剣を持ち、一思いに抜いた。特に抵抗もなくするりと抜けたその剣は、弓を引ける程度の筋力があれば軽々と持てる程度の重さで、持ち歩くには苦労しなさそうだ。


そうして抜いた剣を眺めていると、どこからか


『挑戦者を認識しました。剣を手に、先へ進んでください。』


と声が聞こえ、彼の正面の壁が轟音とともに開いた。


「これはまずいか。」


彼は急いで剣を戻し引き返したが、すでに入ってきた扉は閉まっており進むしかない状況だった。


「閉じ込められた....これダンジョンかよ....」


ダンジョンの中には、自由に出入りできるものと中の仕掛けを解き切るまで閉じ込められるものがあり、普通はクエスト受注や冒険者協会の掲示板などに共有されている。


しかし今回のダンジョンは未発見で、そもそも彼は冒険者協会に滅多によらないためいきなり閉じ込められたということだ。


「めんどくさい.....」


◇◇◇


 一度進んだ道だが、彼は見事なまでに迷っていた。

森でも迷いかける彼にとって、景色の変わらない無機質な迷路は天敵だった。


そうして迷い込んだ先は、工房と書室が混ざったような部屋だった。

四面ある壁のうち入り口と反対側の壁一面は本棚となっており、本がぎっしりと詰まっている。

机には本が一冊と、何かの設計図のようなものが置かれており、少しほこりをかぶっている。

彼は本棚の中の適当な本を読もうと手を伸ばしたが、本と手の間に透明な壁があるようで、触れない。


結局、読める本は机の上に置いてある一冊だけだった。


その本の内容には、"旅路のコンパス"や"自立型デコイ"など、彼の知らない物品に関するレポートや設計図がまとめられていた。


どうやら、今は作り方が失われている"ロストテクノロジー"の設計図や報告書らしい。

ロストテクノロジー自体はこの国にいくつかあるが、本に書かれている物品には名前すら聞いたことのないものについても記されていた。


「相当な宝物だ。」


しかし、この本はそう単純なものではなさそうだ。

レポートの中にある"備考"の欄には、「需要がない」「倫理観に欠けている」「作るのに必要な技術が高すぎる」などと書かれている。


そんな本の中で、彼の目を引いたのは「守護の装備」と「破壊の装備」だった。


守護の装備とは、この国にいる冒険者の憧れである最強装備かつロストテクノロジーの代表でもある。


"守護の遺跡"と呼ばれる最難関ダンジョンの奥に鎮座しており、国は三年に一度、守護の遺跡を開放するイベントを行っている。このイベントでダンジョンを完全攻略し装備を持ち帰ったものは「守護者」とになり、地位と栄誉を自分のものにできる。

守護者は三年で装備を国に返し、国はまたイベントを行う...といったような仕組みとなっている。


そして破壊の装備。その概要に描かれた剣は、先ほど彼が見つけた剣にそっくりだ。そして備考欄には

「倫理観に欠けている。作るのに必要な技術と素材が高すぎる。」と、ひどい評価だった。


しかし、どのようか機構が組み込まれているかは書かれておらず、評価以外は何もわからなかった。



一通り本を読み終えた彼は、迷路に戻り先へ進む道を探すことにした。

彼はこのダンジョンを攻略し、無事に帰ることはできるだろうか。

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