プロローグ
「外したか。」
そう言って黒髪の少年は地面に刺さった矢を回収する。
魔法と機械の世界で、いまだに弓で狩りしているもの好きなど彼くらいだろう。
狩りですら普通はクロスボウで行うものだが、彼にはお金がない。たまに戦利品を売る程度の金では生活もままならないので、基本は自給自足だ。
今日を生きるのに必死な彼は、また獲物を探し出す。5分ほど歩いた末にとあるものを発見した。
「魂の砂...」
魂の砂。動物や魔物を狩った後にその場に放置すると湧いて出てくる、土よりも濃い茶色をした砂だ。
「命を狩ってるんだぞ?遊んで食べもせずに放置するとかどうなってるんだ。」
彼は、魂の砂の発生が多くなっていることについてかなり苛ついている。
現在、魂の砂の有益な利用方法は発見されておらず、対処法といえば選ばれた人のみが行える浄化しかない。
しかしこんな森の奥には浄化を使える人も来るわけがなく、そのくせ放置しているとほかの動物を飲み込み、殺し、また増える。人間も例外ではなく、彼も幾度となく狩りの途中に魂の砂を踏み、足をとられ引きずり込まれる恐怖を味わった。
「どうしようもないぞこれ。なんてことをしてくれるんだ。」
魂の砂が増殖すると、やがて砂漠となり生物が棲めない土地となってしまう。
そうなってしまうと、狩りで生活している彼にとっても致命的な状態となる。
◇◇◇
30分後、どうにか獲物を狩ってこれた彼は家へ戻った。
切り立った崖に囲まれた小さな家は、彼一人だけで暮らすにはちょうど良い。
夜は魔物の活動時間だ。暗くなる前にさっさと家に入り、食事をとりながら窓の外を眺めていた。
窓の奥に見えるのは、家の裏にある開かずの扉。石で作られており、ところどころに装飾が入っている。王都へのアクセスと並んでこの家が安かった理由でもあり、その奥に何があるかは一切わからない。
彼はいつか扉が開いたら探検したいと思っている。その好奇心は、彼の身に大きな変化をもたらすことになるが、彼はまだ知る由もなかった。
(料理の出来は上々。今日もいい一日だった。明日もいい一日になるといいな。)
私の一作品目です。
こんな駄文ですが、最後までお読みいただけると嬉しいです。