第7話 自由に行動する氷翠
「ぎゃぁぁぁ、冷たい! まだ水だったぁ!」
リビングでソファーに座りながらテレビをボーッと眺めていた時、お風呂場からそんな叫び声が聞こえてきた。
「マジでうるさいヤツだな……風呂ぐらい静かに入れよ……」
俺はそう呟きながら、大きなため息を付いた。
それから20分ほどすると、可愛らしい花柄のパジャマを着て、髪の毛を濡らした氷翠がリビングへ来た。
「覗いてくれた?」
「覗いてねぇよ。てか、なんでそんなに嬉しそうに聞くんだよ……」
そう尋ねると、少し不機嫌そうな顔ををして答えた。
「え、覗いて無いなら言わない」
「なんでだよ!」
「まぁまぁ。落ち着きたまえ」
「なんかめんどくさいから先に風呂行くわ」
「おっけぇ~。覗きに行くね!」
「来んな! 来たら家から追い出すからな!」
「え……? それはヤダな……」
俺は脱衣所で服を脱ぐと、すぐに風呂場へ向かった。そして温かいお湯を頭から流して体を洗うと、少しぬるくなった湯船に浸かった。
しばらくすると、風呂場の扉ガラスの部分に黒い影が見えた。
「……氷翠か?」
「えっ!? ち……違うよ……?」
「戻れ」
「ちょっと、覗きに来たんじゃないって……。勝手に勘違いしないでよ」
「それなら良かったよ。でも、本当にそうだとしても、扉の前で止まられると誰でも勘違いするだろ」
「そうですよねぇー。スミマセンデシタ~……」
氷翠は申し訳なさそうに謝ると、すぐに扉の前を離れた。お風呂場の隣にあるトイレに向かっていったので、本当に覗きに来たのではなかったのだろう。
変態な幼馴染みが風呂場の前を離れてから10分ほどすると、俺は湯船から出た。寝る時にいつも着ているお気に入りの服を着てリビングへ行くと、氷翠がソファー上で気持ち良さそうに眠っていた。
「はぁ、本当に自由に行動するよな……。寝室まで連れていくの、めんどくさいんだけど……」
だからといって放置しておくと邪魔なので、起こさないように抱き上げて寝室へ向かった。