第4話 来た。また来た。
「氷翠さん、来るなって言ったよな?」
俺はベッドに寝転んで足をバタバタさせている氷翠に、少し怒ったように言った。
「えぇ〜? 良いじゃん。怒らないでよぉ〜」
「迷惑なんだよ!」
「じゃあ洗濯もご飯も全部自分でやるから!」
「それなら……、いや、良くねぇよ! てか、家に帰って無くて大丈夫なのかよ!」
「うん。親には言ってある」
氷翠はそう言いながら起き上がって、本棚から一冊取り出してきた。俺の一番好きな漫画を。
「それを許してくれる親もどうかと思うが……」
「ねぇ〜、漫画買ってよ。ここにあるの全部読んだよ? あ、買うならラブコメが良いなぁ〜。ファンタジーも面白いけど」
「嫌だよ! なんでお前のために買うんだよ!」
俺はキレ気味に言うと、晩ごはんを作るためにキッチンへ向かった。その後ろを氷翠がてくてく歩きながらついてきた。
「ちゃんと自分で晩ごはん作れよ」
「えぇ〜? 怜の作った料理食べたい……」
「……じゃあ明日はお前が俺の分も作れよ?」
「え、作ってくれるの?」
「お前が明日作るならな。どうせ来んなって言っても来るだろ?」
「うん」
「はぁ……。じゃあ作るからどっかいけ。邪魔だ」
「はーい」
元気の良い返事をすると、大人しく俺の部屋に戻っていった。
……嫌な予感がするんだが。
「ちょっと待て氷翠!」
「ん?」
「ん? じゃねぇよ! なんで俺の部屋戻るんだよ。リビングでいろ」
「えぇ〜。変なことは多分しないから安心しな!」
そう言ってドヤ顔で親指を立てて俺に見せた。
「多分って言うな。それと、お前がいると安心できないから言ってるんだよ」
「え……? 私が変なことするとでも……?」
「いつもしてるだろ」
「するとしても、怜の部屋に良くないモノが無いか探すぐらいかな!」
「探すな!」
「え、あるの?」
「ねぇよ! あぁ、鬱陶しい! 俺の部屋行きたいなら勝手に行け」
面倒くさくなった俺は、諦めて氷翠に俺の部屋へ行くことを許可した。そして、すぐに晩ごはんの準備に入った。
「ありがと〜」
笑顔でそう言うと、スキップで部屋へ向かっていった。俺はその後ろ姿が見えなくなると、すぐに料理を作り始めた。