第3話 男子たちは……
一時間目の授業が終わって、今は休憩時間。次の授業までゆっくりしようと教科書を準備すると、そのまま机に伏せて目を閉じた。
「怜〜っ!」
その時、一番聞きたくない声が聞こえてきた気がしたが、無視して寝ることに集中した。
「無視しないでよ! 聞こえてるの分かってるから〜!」
そう言いながら氷翠が後ろから抱きついてきた。髪の毛が首のあたりに乗っていて、動くとくすぐったい。
「あぁ、くすぐったい!」
我慢できなくなった俺は、立ち上がって腕を振りほどくと、男子の集団の中に紛れ込んだ。
「ふぅ、寝たいけど仕方ないか……」
「仕方なくねぇよ。いいよな、美少女に好かれるとか……」
「だよな。俺だって……俺だって美少女に好かれたいのに……!」
「俺も。てか、俺は氷翠の事が好きだったんだけどさ。お前のせいで、無理そうだから仕方なく諦めたよ」
「なんで俺のせいなんだよ……」
入るグループを間違えたと思いながらも、氷翠から逃げられたので少しだけホッとしながら返事をした。
「俺たちはなぁ、コミュ力上げるとか、テストで良い点取るとか、いろいろと努力してきたんだ……! それなのに……モテるのはイケメンばかり。ちくしょうめ!」
「そこでだ。もう俺らは氷翠は狙わん」
「だから俺たちはお前と引っ付けることに全力を注ぐことにしたのだ!」
「そうだ。がんばれよ……」
誰にも好かれない可哀想な男子たちは、俺の事を睨みながら口々に言った。
「は?」
何を言っているのか理解する間もなく、男子たちが俺の腕を掴んで氷翠の近くへ引っ張った。
「怜〜、さっきの授業分からないところあったから教えてくれる?」
「……良いけど」
「怜。ちゃんと仲良くするんだぞ……!」
「え? ……おう」
男子たちは半泣きになりながら蜘蛛の子を散らすように、どこかへ行ってしまった。
「どうしたの? みんな泣きそうな顔になってたけど……」
氷翠はきょとんとした顔でこちらを見つめながら言ってきた。
「……さぁな。知らん」
「ふぅ~ん」
「で、どこが分からないんだ?」
俺は自分の席に戻って座ると、ノートを取り出しながら氷翠に聞いた。
「ねぇ、その前に一つ聞いていい?」
「ん、どうした?」
「今日も家に行って一緒に寝ていい?」
「……自分で考えろ」
そう言うと何か勘違いしたようで、表情をパァッと明るくして笑顔で話し始めた。
「行っていいんだね? ありがとう!」
「……そうだった。こういうヤツだったんだ……」
「ん? どうしたの?」
「氷翠、よく聞いてくれ」
「えっ⁉ 何、告白っ⁉」
「違う」
「なぁ〜んだ。期待したのにぃ」
氷翠はニヤニヤしながら俺のほっぺをつついてきた。コレぐらいならカワイイから許す。別に好きではないが。
「絶対に今日は家に来るな」
「ヤダ」
「…………」