第14話 晩ごはん……
「まぁ……本当に恥ずかしいなら無理に言わなくても良いけどさ。俺も言わないけどな」
「え、教えてくれないの? 一言言うだけじゃん」
氷翠はほっぺを少し膨らませて、不機嫌そうにしながらソファーに寝転んだ。
「どうでも良いだろ。それよりお前も早く晩ごはん食べろよ」
俺はそう言いながらキッチンの近くにある棚からカップ麺を取り出した。さすがにあのハンバーグだけだと足りないからだ。
お湯を注いでタイマーをセットしたのとほぼ同じタイミングで、リビングから叫び声が聞こえてきた。
「怜ぃ~っ! 私の分のカップ麺も作っといて~」
「はぁ!? なんでだよ!」
「いやぁ、実は……」
氷翠は何故か照れながら、ニコッと笑って言葉を続けた。
「私も食べないといけないのを忘れてて、怜の分のハンバーグしか作ってなかったの!」
「……バカすぎだろ」
「まぁまぁ。人間なんだし誰でもミスぐらいしますよぉ~」
ソファーに立って、そこからジャンプして綺麗に着地すると、テーブルの上に置いてある、まだお湯を入れて時間が立っていないカップ麺をじっと見つめはじめた。
犬みたいにカップ麺を興味深そうに見つめる氷翠は、思わず声に出してしまいそうなほど可愛いかった。
――氷翠視点――
私は今日も先にお風呂に行くために許可をもらった。
お風呂場に入ると、まずはしっかりと体を洗い流した。それからちょっと熱すぎる湯船にゆっくりと浸かった。
「はぁ……」
私は結衣がこの家に来てから、ずっと彼女の事を考えていた。
別に結衣の事が異性として好きだから、という訳ではない。
もしかしたら怜は結衣の事が好きなんじゃないか、結衣は怜の事が好きなんじゃないかと勝手に考えてしまうからである。
ただ借りていたノートを返しに来ただけ。だが、そう思い始めてからは何故か心が苦しいのだ。
「そりゃ、勝手に家に入ったりして迷惑かける子より、おとなしそうな可愛い子の方が好きになるよね……」
リビングにいる怜には聞こえない程度の小さな声で呟いた。
「アピールしまくった方が好かれるかなって思ってたのに。ちょっとやりすぎちゃったか……」
良く考えたら怜は地味に鈍感だった事を思い出した。
「……今日はもう自分家に帰ろうかな。迷惑かけるのもアレだし……」
そう決めると、私は勢い良く湯船から出た。




