第10話 モブ
今日は走って学校へ向かったので、氷翠に追いつかれることも、遅刻することもなく無事に到着した。
教室に入ると、なぜか男子たちからの物凄い殺気を感じた。
「来たぞ、怜だ!」
「……え?」
「おい、氷翠はどうした⁉」
「置いて来たけど?」
俺がそう正直に答えると、周りに集まってきた男子たちは頭を抱えて倒れ込んだ。
「なにやってるんだよ、バカがぁぁ!」
「置いてくるとか……頭おかしいだろ!」
「そうだそうだ!」
「マジでお前ら大丈夫か? ヤバい薬とかやってないだろうな?」
「大丈夫だ。安心しろ」
「安心出来ないから言ってるんだよ。それよりそんなに氷翠と会いたいのか?」
「ちげぇよ。俺たちは完璧で素晴らしいモブを演じたいのだよ!」
顔を近づけながら、少し悲しそうに叫んできた。
「ちょっと何言ってるか分からないんだけど……」
俺はわざと迷惑そうな顔をしながら言って、自分の席に座った。それからしばらくするとチャイムが鳴った。それが鳴り終わった頃に、氷翠が教室入ってきた。
「先生は……まだ来てないね。セーフ……」
安心したように呟きながら氷翠は自分の席に座ると、ちょうど教室の後ろの扉から先生が入って来た。
「ガッツリアウトしてますからね。先生が来てるとか来てないとか関係無いから」
そう、先生は呆れたように言った。
「なっ……先生! ちょっとぐらい良いじゃないですか」
「許してほしいなら……」
「許してほしいなら……?」
「次のテストで全教科平均点以上取ってみてください」
先生は煽るように、笑顔でそう言った。
「げっ! 全教科!? 先生ヒドイ~……」
「はい、ホームルームするからそれ以上喋らないでくださいね。もし喋ったら無断欠席ってことにしとくから」
「マジ……ですか」
「マジですよ」
怒ったように低いトーンで、氷翠の事を睨みながら言った。




