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第1話 不法侵入

「なんでお前がいるんだよ……」


 朝、ベッドの上で目が覚めたら、何故か俺の隣でスヤスヤと小さい寝息をたてながら寝ている氷翠ひすいがいた。

 氷翠はまぁ、かわいい。黒髪のロングでスタイルも良く、一応美少女という部類に入るのだろう。

 でも、俺は嫌いだ。いつも抱きついてきたり、どこかに行こうとするだけで付いて来る。最近はエスカレートしてきて、こうやって勝手に家に入ってくる。

 どうやって手に入れたのかは分からないが、合鍵も持っている。


「起きろ、氷翠! そして出ていけ!」

「んん〜……、もうちょっとだけ……」


 氷翠は寝言なのか、普通に返事をしたのか分からないぐらいの小声で呟いた。


「あのー、寝るなら自分家で寝てもらえます?」


 そう言いながら俺はベッドから無理やり氷翠を引きずり落とした。一応女の子なので優しく。


「いたっ! ちょっと、やめてよぉ〜……」

「こっちが言いたいわ! 勝手に人の家に入るな!」

「良いじゃん……。どうせ親は仕事で帰ってこないんでしょ?」

「なんで知ってるんだよ……」

「秘密〜。知らないほうが良い事もあるんだよ!」


 ベッドの上に座ると、ドヤ顔で俺が使っていた枕を抱きながら言われた。


「これは知ったほうが良いと思うのですが。違うのでしょうか?」

「気にしないで。それより早く準備しないと学校遅れちゃうよ?」

「お前のせいだからな! お前がいなければ、もう準備ぐらい終わってるわ!」


 俺は怒鳴ると、すぐに学校へ行く準備を始めた。


「もぅ……。すぐ怒鳴っちゃうんだから。もうちょい器が大きければ優しいんだし、モテてたかもしれないのにね」


 氷翠は黒い綺麗な髪の毛を揺らして、笑いながら言った。


「お前だってな。こんな変なことしてなかったらモテてたかもしれないのに。残念だったな」

「私には好きな人がいるのよ。その人に好かれれば他はどうでもいいのよ!」

「だから、その好きは人にさえも嫌われるぞって言ってるんだよ」

「え⁉ それはヤダな……」

「じゃあやめろ。それと、もしどうしてもしたいって言うなら、好きな人にしろ」


 そう言うと氷翠はムカつく顔をしながら、ニヤニヤして見つめてきた。


「ふっふっふ、れいくん。もうその好きな人にやっているのだよ」

「はぁ!? お前俺以外にもこんな事してるのかよ! そりゃモテねぇわ」

「え? やってないけど?」

「どっちなんだよ……まぁいいや。それより早く着替えろ。学校行くぞ」

「えぇ⁉ そんなに私の着替えシーン見たかったの? ……どうしてもって言うなら見せないこともないよ?」


 氷翠は何か勘違いしたようで、パジャマのボタンを胸のあたりから外し始めた。


「……やっぱり一人で学校行くわ」

「ちょっ! ちょっとだけ待って、すぐ準備するから!」

「じゃあな。遅刻するなよ」

「あ、朝ごはん食べてから行きなさいよ!」

「もう食べた」

「ウソつけ!」


 しっかりとツッコミを入れられたが、俺は無視してカバンを肩にかけると学校へ向かって歩き始めた。

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